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- Amazon.co.jp ・本 (209ページ)
- / ISBN・EAN: 9784004201939
感想・レビュー・書評
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日本の近代小説のなかからいくつかの作品をとりあげ、物語論的な視点から作品の構造を分析するとともに、同時に近代小説における主体が日本文学のなかでどのように形成されてきたのかを明らかにしている本です。取り上げられている作品は、島崎藤村『破戒』、夏目漱石『明暗』、志賀直哉『暗夜行路』、有島武郎『或る女』、葉山嘉樹『海に生くる人々』、横光利一『上海』、野間宏『真空地帯』、埴谷雄高『死霊』の八作品です。
『暗夜行路』についての考察では、草稿と決定稿のちがいを文献学的に解明することで、「私」を消し去った中立的な文体がつくられていく過程が明らかにされており、興味深く読みました。
また、埴谷雄高がインタヴューのなかで『死霊』には四つの側面、すなわち「意識の側面、社会の側面、それから、それらを一切含んで「それらの側面を通じて人間がついに何になり得るか」、しかもそこからさらに以外へ飛躍する何かの秘法みたいな側面」が追及されたと述べていることに触れながら、黒川建吉という登場人物において「存在の革命」への可能性が示されているという主張も、個人的には非常に納得ができるもののように感じました。詳細をみるコメント0件をすべて表示
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