ピープス氏の秘められた日記 十七世紀イギリス紳士の生活 (岩波新書)
- 岩波書店 (1982年10月20日発売)
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感想 : 16件
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Amazon.co.jp ・本 (198ページ) / ISBN・EAN: 9784004202066
みんなの感想まとめ
17世紀のイギリス紳士の日記は、当時の政財界の生々しい様子や人間の本質を描き出しており、現代の私たちにも共通する感情や行動が垣間見えます。特に、浮気や嫉妬といった男女の本能に関するエピソードは、今も変...
感想・レビュー・書評
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ネットで見かけておもろそうだったので借りてきました。
1660-1669年のイギリス官僚の日記。
本文中にも解説にも「当時の一般的な生活が」とありますが彼は大金持ちかつ後の海軍大臣なので私からすればどこが一般なの???という感じではありますが、貴族階級でもなくただのその辺の兄ちゃんが運と才能を襷掛けに人生を斜め斜めにと登っていった結果なのでまぁ一般の最上位、って感じなんですかね。
日記から想像する彼の性格は私にちょっと似てるものを感じるので読んでいてなんだか気恥ずかしいというか。いや、私は金もないし出世もしたことないです。なんていうんですかね、貞操観念がないこと、自身の性欲や加害欲に忠実なこと、自身の傲慢さに無関心でいられること、罪悪感を感じないための自己弁護が上手なこと、自身をいい人だと心底信じながらも他人を切り捨てる使い捨てること、金が大好きなこと、とはいえ金は道具であり主役は人生そして時間であることを常に忘れないこと、他人の痛みに鈍感でシンパシーやエンパシーの対象を好きに選べること、神を信じていないこと、それでも宗教を利用しようとすること、とかですかね。要は彼は私にもそっくりだし皆さんにもそっくりということですかね。えぇ。
いちいちおもろいんですが人生訓にもなりえるような楽しくタメになる本。
好きな箇所は
1660
親戚のコネで海軍省書記官という金回り(賄賂)のいいポジションをゲット。すぐさまその地位を買いたいとオファーを受ける。その金があればあとは利子でゆっくり暮らしていける。そこでサンドイッチ伯爵(サンドイッチの産みの親の祖先)曰く「人間、金持ちになるのは給料のおかげではない。その地位にいる間にやってくる金儲けのチャンスによる」ここで彼はその教訓に従い金を貯め、伯爵の言葉が真実であることを自ら証明するわけですが、まず冒頭ここで軽く唸ります。
私は自己啓発とか金持ちになるなら云々の本が苦手というか嫌いなんですが、あんなもん読まなくてもこれで十分じゃないですかね。350年前も今もたいして変わらない。金が欲しいなら高給だけじゃダメなんですよ。地位とセットじゃないと。
1664
「この世に廉直はない。必ず別の目論見がある。」
これもまぁなんとシンプルでかっこいいフレーズ。
1665
世はペストで地獄絵図。
彼は妻を疎開させ閑散となった街を憂い亡くなった人への軽い哀悼を示しつつも浮気も遊びも続行。そんな彼の死生観がはっきりと表れている箇所は「死は避け難く突然で高貴、富裕、善良といえど他人の心にほとんど影響なし。皆死ぬ。誰が死のうとあまり大した相違なし。良い死に方であってもその値打ちは大したことない。」
これもいいですねーーー。当時は子供はバタバタ死ぬし、大人も病気や怪我で死ぬ、親戚から財産贈与の話があるのは彼らに後継がいないからだし、彼自身腎臓や膀胱の結石を麻酔なしでやり遂げてるし更には子供がいない。で宗教についても全く信じてないとなるとまぁこんな感じになりますよね。ここで全てをいい加減にするんじゃなくてこの虚しい土台の上に経歴と金を積み上げるその姿勢が好き。規模は全然違うけどこういうところが強く共感。
1665
「ペストによる死亡者、ロンドン市長発表のそれは全く信用できるものではない」
彼は自分のことを信じてないからそりゃ他人も誰も信じないですよね。だから出世出来るんだな。
1665
猛威を奮ったペストも段々と下火に。大流行の際に街を捨てた人達が段々戻ってくる。医師に牧師。
彼らの言い訳を聞くことを楽しみにしているところ。好き。
私達も2011に我先と日本を離れた人達が戻ってきたら時に同じような感覚でしたよね(とはいえ私は当時の上司アメリカ人に「ご帰国されて当然です。ご家族がおありですから。私ならもっと早くの飛行機に乗ってました。」とおべんちゃらを言いましたけどね。その際そのアメリカ人は「そうだろ!?俺は正しいよな?」と嬉しそうにしてたのを覚えてます。あいつ今頃どっかで苦しんでるといいな。理由はなんでもいい。)
1665
ペスト大流行により刹那的性格がより強まった筆者。「将来の金を憂うだけでなく今を楽しまないと」と書いている。彼が優秀なのはこの心配性な性格と享楽主義がいい按配で混ざってるところ。
そしてそれは350年の時代の違いはあれども、たかだか80年で死ぬ人間である現代の我々も同じ。
1665
出自が卑しい自分がここまできた。勤勉と几帳面を欠くことがなければあとは世間体を損なわぬ限り刻一刻と過ぎゆく現代を楽しんでおればいい。
私自身が心掛けていることを端的に文章にしてくれて助かる、ていうか好き。
1667
人生訓ではなく記録として。
王政復興後のチャールズ2世の慢性的歳入欠陥。
用箋が無いと立腹の国王。責任者は今まで全て立て替えてきた、もう金がないと国王に直接答えたという。白人による王室感ならではの乱暴な感じ。
1667
無理矢理徴兵され金も払われず捕虜となる男たち。彼らの妻は泣いて怒って訴る。
著者は同情や理解を示しながら「でも力になれることはない」。これよ。出世する人は大体これ。
一般よりも深い愛情を示すのよね、他人に。
んで「でも力になれることはない」とバッサリ。
1667
金貨の隠し場所。妻と実父が揃ってパー。
これも分かる。奥歯割れるんじゃないかと思うよね。でも彼らには分からないんだよね。サルに算数が分からないように。
1667
引用
エピクロス「富は悩みの終結ではなく変化なのだ」
これも今日の私にチクチク刺さる。
1667
サイコパス味のある著者。でも父の体調を思いやり、長生きして自身の立身出世を見せてやりたいと願う。この辺りもね。。。シンパシー。
1668
収賄の疑いをかけられ召喚される。
「私の肝っ玉は実に小さく、ほとんど気もそぞろ、何も考えられず何もできずただ困り果て、いらいらし、もう俺はダメだと思うばかり。我と我が身が恥ずかしい。もし本当の災厄がふりかかったらどうなるかと心配」
ここも著者の性格がよーーーーく表れていて楽しい。自己肯定感の低さと才能と心配性が混ざるとこんな感じですよね。自分が乗り切れたということは災厄自体が大したことなかったんだっていう。
1668
日記には残っているが焼却されたため寄贈されたピープス文庫にはない「女学校」
どんな猥雑な本なのか読んでみたい。
燃やすことないじゃん。
でも日記も複数の外国語で書くくらい慎重なんだもんね。仕方ないか。
1668
解説「これだけ手放しに自慢しておけばかえって飽きが来てもう人前ではもののはずみだって口にしなくなるだろう。日記の効用だ。」
まぁピープスは賢いですからね。そりゃそう。
彼は「勝って兜の緒を締めよ」の人だし。
ただ普通の人は普段の対人生活でも日記でも溢れさせちゃうでしょうね。勿論私も。
彼のコネの使い方、金儲け、足がつくようなバカな賄賂は受け取らず、なんだかんだ妻をそこそこ大事にしながらも浮気を繰り返し、納得のいかないことにはわずかな金をも使わないが価値があると見れば高額でも構わない。。。そんな性格が愛らしく感じるのはやはり私自身が考える私と少し近いからなんですかね。
女性関係の独白や妻との夫婦喧嘩(100ピープスが悪いけど)とかはまぁこの本の「ひれ」の部分として十分に楽しく全体をライトにまとめてくれてますが、要所要所で語られる人生訓が2025年の日本でもそのまま通用するものばかりで素直に驚きです。
この本にはあまり関係ないのですが荷風の断腸亭に「一盗二婢三妓四妾五妻」ってのがあるんですね。知りませんでした。ここではピープスの浮気あれこれを語る前に引用され「このランク付の原理は複雑かつ多面的ではあるが、経済的安直性の考慮が大きく働いているようである」とある。
たーしーかーにーぃぃぃぃ。
スリルがーとか禁じられた関係がーとか他人のものはーとかいつでも手に入るとなるとーとかグダグダ言いますが、これって端的に「金がかからない順番」ですね。なるほど!
文句なく星5。
男はまず20歳までに一度読み、25で読み、また30-35で読むべきですかね。
どうせ誰も彼もすぐ死ぬんだし、我々資本主義の世界に生きてるし、本音と建前は必ず両建てだし、金はあっても困るもんじゃないから、他人が自分に頼ってくるように仕向けるシステム作りが肝要ですね。(とはいえピープスは晩年結構寂しかったのかもだけど)詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
17世紀のイギリス紳士の日記。よくこのようなものが残っていたなと感心する。
政財界の生々しい話は興味深く、人間の本質は21世紀とあまり変わらないなぁと。
特に美人?との浮気話、妻の嫉妬は、今も変わらない男女の本能が垣間みれて面白かった -
刊行時におもしろく読んだ。その時のピープスの印象は、17世紀の英国の成り上がり官僚で、お金に細かく、妻に隠れて浮気をするエロおやじというもの。ところが、ニコルソン『ピープスの日記と新科学』(白水社)を読んで彼を見る目が一変し、今回本書を再読。
サミュエル・ピープス(1633-1703)。彼が日記をつけていたのは、1660年から69年、27歳から36歳。年齢的にはまだおやじとは言えない。彼は科学マニアでもあった。設立まもない王立協会の活動に参加し、遂にはその会長にまでなる。王立協会といえば、イギリスの科学の殿堂。岩波新書では、こうした知的側面が抜け落ちていた。
日記の時期は、ニュートンの「奇蹟の年」(1665-66年、万有引力、微積分、光の原理を発見した時)とも重なる。同時期、海を隔てたオランダでは、フェルメールがカメラ・オブスクラを使って絵を描き、レーウェンフックが顕微鏡で微小の世界を覗いていた。好奇な者たちが科学に興じていた時代で、ピープスもそのひとりだった。
岩波新書には、観劇を頻繁にしたことは書いてある。そして知的側面として、愛書家でもあったことも。彼の母校、ケンブリッジ大学には、彼の蔵書3000冊が残る。
ピープスの『日記』は、よく「平凡な庶民の日常」が書いてあると言われる。しかし、彼は「平凡な庶民」などではない。官僚として「イギリス海軍の父」になり、王立協会の会長も務めた。女性や出世や富だけでなく、科学にも入れ込むという、好奇心旺盛な人間だったのだ。 -
拾い読み。当時の日常がわかる日記は面白い。
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イギリス史の中でもロンドン観光の中でも度々お目にかかるピープス氏の名前や日記の記述。いつかきちんと読まなくてはと思いつつ、でも全文を読む機会もなかなかなくて、その意味で、「日記」の大要を示してくれたこの本はありがたかった。
国王の処刑、内乱、王政復古、ペスト、ロンドン大火と、大事件が相次いだ近代社会揺籃期のロンドンでがんばっていたピープス氏の姿がずいぶん鮮明になった。 -
再読。
1600年代の英国、クロムウェル~名誉革命を生きた、
ピープスの日記の概要。
主は日記だけれど、当時の政治・社会情勢・経済を内包する。
幅広い分野を考察できるので、あえてカテゴリーは“その他”。
国王側のお役人で、かつ小市民的で、猥雑で、お金第一。
だけど、その持ち前の好奇心と記録能力により、
海軍大臣まで上り詰めていくピープス氏。
オランダとの戦争とか、ペスト大流行とか、
大変な時期に巡り合わせながらも、詳細に日記に綴る。(速記体で)
まさか自分の日記が未来に万人の目に留まるとは思わずに(^^;
この本、1982年発行で、当時新刊で読んでます。
改めて再読してみると、所々古い表現が目立ちますね。
でも、面白かった。
本当は全10巻の日記全貌が出版されているんだけど、
こちらはさすがに・・・近所の図書館にも無いし。 -
17世紀イギリスの海軍局に勤めたサミュエル・ピープスの日記は、他の人びとに秘密が知られることのないよう、多国語の混成で表記されています。本書は、この「奇書」と呼ぶべき日記の内容を、軽妙な文章で紹介しています。
日記と言っても、『アミエルの日記』の哲学的な内容とは程遠く、いわば俗事にまみれて生きたピープスという一介の官僚の生活が、ざっくばらんに書かれています。自身の出世と浮気に精を出しながらも、小市民的な用心深さを失うことなく、妻の悋気を恐れている彼の姿は、破滅型の文学者とはまったく異なっています。それでも、リアルな人間の姿が見られるという意味では、興味深いと感じました。 -
他人の日記が目の前にあったら・・・。
手を伸ばす衝動を抑えるのはきっと大変。
17世紀、出世街道をひた走った男の、どこまでも庶民的な毎日をこっそり覗いて見ませんか?
読み終わる頃にはきっとピープス氏に会いたくなるはず。(ドゥンヤザード・S) -
17世紀イギリスの市民ピープス氏の日記。
おもしろかった点は下記。
・17世紀イギリスの世俗を知ることができる
・自分に嘘偽りなく記載している(それこそ恥ずかしい箇所は隠語を使ったりしてでも)ため記録的な価値もある
・日記といっても普通の生活の中に、賄賂をもらったり不倫をしつつばれないように過ごしていく一人の市民が等身大に描かれていて読み物としておもしろい
・著者は一市民から海軍大臣まで出世する。日記はその途中までを描いておりどのようにのし上がっていくのかも垣間見れて興味深い -
平民出身でありながら、海軍省書記官にまで上り詰め、「イギリス海軍の父」と呼ばれた男の日記。
とはとても思えない内容!!!
その実態は、浮気の顛末、賄賂の内訳、どこそこの居酒屋が美味い、といった下世話なものばかり!!
しかし、17世紀イギリスの風俗を知る上では第一級資料!
中には、「今日は後宮でカースルメン伯夫人(チャールズ2世の愛人)が下着を干してるのに遭遇した!眼福!!」といった記述も。
著者の臼田氏による解説がまた含蓄があって良い。
近世ヨーロッパの生活に興味があるお方にはオススメです! -
17世紀の半ばのイギリスで、持病の結石手術成功を契機にしたため始めたというロジャー・ピープス氏の日記からトピックに即して抜粋し、突っ込みを入れながら解説している本。隣近所の悪口や浮気の詳細、賄賂の授受などを記した内容を読まれないためにわざわざ速記号と7ヶ国語のちゃんぽんで書いたにもかかわらず、後世の研究者により発見・解読・肖像画付きで公開されてしまうあたりからも想像できるように、一応インテリなのにトンマで愛嬌があり、それが日記に大いに発揮されていて楽しい。時代的には清教徒革命→王政復古→チャールズ2世と議会の対立という封建社会から近代市民社会への移行期を、「即物的な現実主義、厳格な事実密着の姿勢」で、しばしば冷や冷やな思いをしながらもサンドイッチ伯に取り立てられタンジールの糧食補給問題などにも機敏に対処したりして、役人の私設秘書から始まり海軍大臣にまで出世していくピープス氏。クロムウェルの時代の名残なのだろうか、観劇と飲酒を止める止めないの良心の葛藤が見られるが、結局は自分に都合の良いところで妥協してシラーッとしている。賄賂の正当化やお手柄の自画自賛なども同様。「神は褒むべきかな」というようなフレーズが随所にあらわれるが、別に信心深いというわけではなく、教会に行って望遠鏡で美人を眺めて妄想とかしている。こういう「内容形而下の事柄に終始した、俗人の日記」(詩人のコールリッジ曰く「頭がちょん切れて胴体だけの男」)を著者が終始ハイテンションで紹介している。メモ「神様もご存じだ。どんなに誓いを立てても、わたしの心はどうしてもそれを欲し続けるのだ」。
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しょぼいおじさんの、赤裸々な日記です。妻に倹約を命じて、自分は散財してみたり、ペストの恐怖を語ったり…こういう日記が貴重な資料になるんですね。300年経つと。
著者プロフィール
臼田昭の作品
