四谷怪談――悪意と笑い (岩波新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (198ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004202646

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  • 1997年 読了

  • 貸し出し状況等、詳細情報の確認は下記URLへ
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  • 四谷怪談解説書。

  • 四谷怪談・お岩さんといえば、怪談の代名詞といってもよいほどだろう。さまざまな脚色がされ、読み物や舞台・映画等になってきた。大筋としては、妻を疎ましく思うようになった美男の夫が、他の娘に惚れられたのを幸い、妻と離縁をしようとする。妻は毒を盛られ、怖ろしい容貌に変わり、強い恨みを抱いて命を落とす。死霊となった妻は、夫と、新妻となった娘、その係累をとり殺す、といったところだろう。

    歌舞伎の四谷怪談は、四世鶴屋南北(1755-1829)作の『東海道四谷怪談』(初演:文政8(1825)年)である。
    以前から見てみたいなぁと思っていたところ、この7月に歌舞伎座で上演されると聞いた。だが残念だが遠方のこともあって、行くのはちょっと難しそう。
    では原作でも読んでみようかと思ったのだが、いきなり原作もきつかろうというわけで、まずは予習を。

    猥雑で爛熟した化政期の文化の中で、南北が何を考え、どのような意図を持ってストーリーを練り、そしてなぜそれが人々に受けたのか。その構造を解き明かしていこうという1冊である。

    初演時、この作品は忠臣蔵と抱き合わせで上演された。ストーリー自体も、忠臣蔵外伝といった風で、主要登場人物も、塩冶判官か高師直か、いずれかに関わりがある。だが典型的な義士は登場しない。ご用金に手を付けた小悪党であったり、義士であっても色好みで俗っぽいところがあったり。清廉潔白なるもののいわば「ネガ」のような人物たちである。
    そして起こるのはといえば陰惨な事件だ。

    表の忠臣蔵が胸の空く義の世界だとすれば、こちらは陰惨な私欲の世界である。
    そのいずれもが強烈でくっきりした描写で提示される。清廉なるものの様式美と相対する汚辱にまみれた悪の様式美だ。

    忠臣蔵と切り離して考えた場合も、物語の中では陰と陽が交錯する。回り舞台の上で、片や、祝言の相談がまとまり、こなた、醜女が死にかけている。
    その激しい落差は見ているものに揺さぶりを掛け、目を惹きつけて離さない。からくり小屋を覗くような、目を覆いつつも隙間からつい薄目を開けて見てしまうような、危うい世界である。

    それは作中の戸板ががらりと回るように、聖と俗、本音と建て前、義と私欲、婚礼と葬礼を一瞬のうちに取り替えてみせるイリュージョンなのである。

  • 『ぼくらの頭脳の鍛え方』
    文庫&新書百冊(佐藤優選)176
    文学の力・物語の力

  • [ 内容 ]
    お岩の幽霊で知られる『東海道四谷怪談』が初演されたのは文政八年、幕藩制がその土台から腐りはじめ、あらゆる既成の秩序が崩れていく時代であった。
    鶴屋南北は、この崩壊期のエネルギーを、忠臣蔵のパロディの形をとって描き出した。
    悪意と哄笑、猥雑と醜悪の織りなす南北のドラマ世界から、崩壊期の精神とその可能性を読みとる。

    [ 目次 ]
    崩壊期の精神
    1 猥雑・滑稽・グロテスク(越境する空間;拡散的な序幕の構図;悪と色好み;地獄宿の喜劇と愁嘆;悪の絵模様)
    2 顔にかかれたドラマ(幽霊の不幸な物語;女形と悪の美;お岩の変身;被害者から加害者へ;悪の競演;恐怖と笑いの背中あわせ)
    伊右衛門は死んだか

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