- Amazon.co.jp ・本 (200ページ)
- / ISBN・EAN: 9784004203186
感想・レビュー・書評
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大渕朗先生(理工学部応用理数コース)ご推薦
女性美術史家として大変有名な若桑みどり(1935-2007)の書いた歴史的な女性画家の列伝です。本を読みますと、どの登場人物も大変個性的で、たまたま女性だった素晴らしい画家の紹介本と言う感じです。
中には女性と言う扱いが大きなウエイトを占めていそうなマリー・ローランサンやレオノール・フィニの様な画家とか、ヴィジェ・ルブランの様に女性としてちょっと手厳しい評価を下している画家(ヴィジェ・ルブランは私の好きな画家ですけど)もいますが、その様な部分があったとしても、やはり私としては、この本からは、女性だから、男性だからと言う事ではなく、画家としての個性的な人物像が浮き彫りにされていると感じています。
この中で私が特に印象的だったのはケーテ・コルヴィッツとラグーザ・玉です。ケーテ・コルヴィッツはイデオロギー的な扱われ方の多い画家ですが、この画家はそんな扱われ方ではない、本当にこの作者の絵の本質を見て欲しいと主張する紹介文と、晩年の「カールとともにいる自画像」(1942)へのコメントには心を打たれます。心の健康な画家だから、辛い境遇の中で暗い陰惨な絵を描いたのだと私は思いました。またラグーザ・玉はご年配の方なら「ラグーザお玉」として有名な日本初の女流画家です。いかにもイタリアの伝統的な絵画を描いたラグーザ・玉への日本の本当に冷たい仕打ち(岡倉天心やフェノロサの民族主義的な芸術政策と日露戦争の影響なのですが)は酷いものだと思いました。このラグーザ・玉への仕打ちは、(この本には書かれてないのですが)藤田嗣治への日本の仕打ちを思い出させる物があって、芸術的評価も残念ながら政治的な評価と無関係ではいられないと言う例なのだろうと思います。
何にしても、この本は素晴らしい画家の紹介本だと思います。是非とも読んで頂きたいと思います。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
美術史からは外されてきた、知られざる女性画家たちの肖像。