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本 ・本 (219ページ) / ISBN・EAN: 9784004203568
感想・レビュー・書評
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太平洋戦争期の子どもがどのような生活をしながら、何を考えて生きていたのか。
戦争の推移やそれによって変化する国民生活の交々を描く著作。
戦前、特に1930年代に入り軍部の動向が内外の政治に大きな影響を与えるようになった時期には、「総力戦体制の確立」が目指された。
戦場の兵隊のみならず、銃後の一般国民も戦争への協力を強要された。
子どものハレの場である学校では、「教室も戦場だ」の掛け声のもと、露骨な軍国主義的な教育が行われるようになった。
教師は国家=天皇のために生きて死ぬことのできる皇国民になることこそ子どもの役割だと教え、子どもは「外敵の侵入を受けたことのない神国日本のため、命を懸ける」と作文につづった。
その勇ましき大和魂とは裏腹に、経済力で米英に劣っていた日本では、次第に物資の不足に悩まされるようになる。
軍需生産優先のため、民需品である子どものための学用品や遊び道具などが手に入らなくなる。
配給制で得る食品だけではお腹いっぱい食べられず、ヤミ商品に手を出さざるを得ないような状況に陥る。
大本営発表にもとづく新聞報道では、皇軍の快進撃が伝えられるが、ミッドウェー海戦を転機として米国の反攻が本格化すると、威勢の良かった戦勝ニュースに疑いを持つ国民も出てくる。
厭戦気分の蔓延を防ぐべく、特高が国民の言論取り締まりにかかずるようになる。
極端な精神主義により合理的•科学的な思考を失った皇国日本の戦争は、原爆投下という最悪のシナリオにて終末を迎えることになる。
戦前から何を学ぶべきか、日本人はよくよく考えなければならない。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
1931年生まれの「戦争と同居していた」著者による、太平洋戦争中の子どもの在り様を描いた本。
単純な体験談ではなく、執筆当時からの振り返っての視点などもある。
軍部などの戦争指導者や「おとな(教師)」への皮肉を込めた記述など、読んでいて思わず笑えてしまう(こういうことが、まじめに行われていたと思うと、本当に無謀な戦争をしたものだと感じます)。
著者の代表作として「ボクラ少国民」のシリーズも是非読んでみたくなった。 -
★★★★ 子供の視点での'戦争”が語られている。
戦争そのものというより、戦争がもたらした生活や学校、遊びといった子供の世界を子供の目線で見せてくれる。
戦争というモノを身近なものとして、大人への批判、国家への盲信、士官への憧れ、という様々なレンズをつけながら覗かせてくれる。
そして、最後には、その視点を携えて大きくなった山中氏の、戦争に向き合う国家、社会に対しての批判が語られている。
戦争というものが、より立体的なものとして自分のなかに築かれた。そんな読後感のある作品。
2015/11/21 -
今の日本の教育は、戦前戦中の続きである。戦後、教育内容は変わっても、教師の考え方を変えるのは難しいかった。しかし、こどもを教育する者は教育者として、将来、この国を動かす大人になるこどもたちに何を伝えるべきなのか、正しく考え伝えることが必要であると思う。
自分の感覚や知識に頼らず、常に社会を見て、必要な刺激や情報をこどもたちに伝えることがよいのではないか。
戦争は絶対にいけないと思える大人に育てることが一番必要だと感じた。 -
4004203562 219p 1991・12・5 11刷
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この人は太平洋戦争について本当に詳しく調べていて、実体験とあわせてたくさんの本を書いているけれど、この本も日々の暮らしのことから国の動きまでしっかりと教えてくれる一冊です。時折、文章のなかに感情的なものが混じるところがまた、この人らしくてよい。
著者プロフィール
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