子どもの宇宙 (岩波新書)

著者 :
  • 岩波書店
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本棚登録 : 825
レビュー : 65
  • Amazon.co.jp ・本 (215ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004203865

作品紹介・あらすじ

ひとりひとりの子どもの内面に広大な宇宙が存在することを、大人はつい忘れがちである。臨床心理学者として長年心の問題に携わってきた著者が、登校拒否・家出など具体的な症例や児童文学を手がかりに、豊かな可能性にみちた子どもの心の世界を探究し、家出願望や秘密、老人や動物とのかかわりが心の成長に果す役割を明らかにする。

感想・レビュー・書評

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  • 河合先生の本を少々深堀りしてみようと思い読んだ。

    冒頭いきなり、著者は「この宇宙の中に子どもがいるということは誰でも知っていることだが、一人ひとりの子どもの中に宇宙があるということを知っているか?」と読者に呼びかける。

    また著者は、大人がそのことに無知であると、子どもの中の宇宙を歪曲してしまったり、破壊してしまうことさえあると警告する。それも教育とか、指導とか、善意とかの名のもとに!

    自身は失敗者の大人の一人であり反省とフォローアップを目的にいま読んでいるところだが、できれば多くの方には予防の位置づけで読んで頂きたい本であると思う。

    子どもの中の宇宙の存在について、実際の子どもの事例を通じ、あるいは児童書の中での登場人物を通じて、著者は示してくださる。

    従って、本書に紹介されている数々の児童文学は、読者が大人になって忘れかけている宇宙をも一度思い出すのに有効な書ばかりだと思われる。

    個人的には、カニグズバーグの「ジョコンダ夫人の肖像」という児童書に非常に興味がわいた(ダビンチのモナ・リザに関する話らしい)。その本質は、子どもが大人の導者となるという話であり、ダビンチの導者となった子どもの話のようである。児童書でなく一般書にしても面白そうである。

    章立ては次のようになっている。
    Ⅰ 子どもと家族
    Ⅱ 子どもと秘密
    Ⅲ 子どもと動物
    Ⅳ 子どもと時空
    Ⅴ 子どもと老人
    Ⅵ 子どもと死
    Ⅶ 子どもと異性

    子どもと老人、、、それぞれの共通点が述べられていたがその視点が面白い。子どもは死の世界から来たばかり、老人はもうすぐ死の世界へ向かう。従って、どちらも死の世界と隣接していると。これは、宇宙から生まれ、宇宙に帰っていくというイメージだろうか。

    そんなこともあって子どもと老人の関係性は強いというのが第Ⅴ章であり、その一例が上記のダビンチの話だ。

    機会をみつけて、カニグズバーグの「ジョコンダ夫人の肖像」他、紹介されているいつくかの書にも触れてみたいと思った。

  • この本自体が宇宙ではないかと思われるくらい、広がりがある。子どもの宇宙を守れる大人になりたい。強くそう思う。大人が思っている以上に子どもはすごい。そう痛感した。
    この本には様々な児童文学が紹介されている。どれも面白そうで手に取ってみたいと思うものばかりだった。

    • hanchassoさん
      是非読みたいです!チャンスがあったら貸して~
      是非読みたいです!チャンスがあったら貸して~
      2013/02/04
  • ・この宇宙のなかに子どもたちがいる。これは誰でも知っている。しかし、ひとりひとりの子どものなかに宇宙があることを誰もが知っているだろうか。それは、無限の広がりと深さをもって存在している。大人たちは、子どもの姿の小ささに惑わされてついその広大な宇宙の存在を忘れてしまう。大人たちは小さい子どもを早く大きくしようと焦るあまり、子どもたちの中にある広大な宇宙を歪曲してしまったり、回復困難なほどに破壊したりする。このような恐ろしいことは、しばしば大人たちの自称する「教育」や「指導」や「善意」という名のもとになされるので余計にたまらない感じを与える。
    私はふと、大人になるということは、子どもたちの持つこのような素晴らしい宇宙の存在を少しずつ忘れ去ってゆく過程なのかとさえ思う。それでは、あまりにもつまらないのではなかろうか。

    (僕は覚えている。4歳の時の自意識と、今の自意識、自我というか、自分というものの観念が全く変わらないという事を。人を見る時、相手が大人とか考えず対等に思っていたなあ。)


    ・自分の子どもが自分が養子であることに気づいたのではないか。このような時、本人に打ち明けるべきか、何が正しいかという議論は何とでも言え無意味である。ともかく養子としてもらわれてきた本人にとって、その事実がどれほど簡単に受け入れ難く、大変なことか、ということである。それに大人がどれ程共感できるかが最も大切なことなのである。
    このような時に私が「専門家の意見」として秘密を保持し続けるべきだとか、打ち明けるべきだなどと答えると、この親たちは専門家に自分たちの責任を肩代わりさせて養子となった子どもと共に背負うべき苦しみを放棄してしまうであろう。
    だから、このようなとき私のするべき事は、期待されているような「答」を言うのではなく、この子どもの置かれている状態を、親たちに心から分かってもらうように努力する事なのである。

    ・心理療法をしていて、特にそれが死にまつわる事であるとき、このようなまったく不思議な現象に出会う事が多い(死の時刻に縁者に挨拶にくる、しかも同じ姿を複数の人が見る、など)。
    われわれはこれをどう説明するかなどというよりも、事実は事実として受け止め、そこに込められた意味について考えてみるべきだろう。

    ・心理療法というととかく来談者の秘密を暴き立てるものと思っている人もあるようだが、この例に示されるように、われわれはむしろ、その秘密をできるだけ大切に扱うのである。

  •  忘れていた子供のころの感覚をふと思い出して、いいなぁ、なつかしいなぁと思うことがある。多くの大人が、子ども時代に忘れてきてしまったものは、大人になって忘れてしまったものは何か。子供は「何となく感じて」いる。

  • 遊戯療法の事例や児童文学を例にあげながら、子どもの心がもつ深くて広い宇宙について解説する。子どもへの温かい敬愛の情が、全編に渡って文章を通して伝わってくる。子どもは単なる小さな半人前の存在ではなく、それぞれに確固たる心を持って成長してゆく存在であることを、自分もそうだったと重ね合わせて思い出した。もっと子どもの心に触れるために、紹介されている児童文学を読みたくなった。

  • 読みやすかったです。様々な本が引用されていて、そちらが読みたくなりました。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「そちらが読みたくなりました。」
      私もそうでした!
      「そちらが読みたくなりました。」
      私もそうでした!
      2013/09/05
  • 子供の心に広がる宇宙を学術的に読み解こうとする著書という意味では、この手の教育論として存在する他の図書のような経験則的なアプローチとも異なり、これはこれで必要な一冊。臨床的な側面と心理学から体系的な整理の両方に意味があるのだと考える。そのためか、本著では、書物からの引用が多い。

    子供が秘密を持つことの大切さ。ペットが代理母の一部機能を果たすこと。考えてみる。核家族化から共働きへと社会が更に変わり、ペットも中々飼えなくなり、老人は老人ホーム、近所付き合いは疎遠。彼が彼でいるだけで温かく見守る代理機能を果たす関わりが減る事で、子供に齎す影響とは。この事が中々社会に飛び出せない引きこもりを増やす一側面ではないだろうか。

    日本とは世界一、隣近所に無関心な国なのだという。一方で、新型ウイルスのように、それを発症させた人が悪かのように吊るし上げる陰湿さをもち、芸能人を社会的に抹殺する執拗さをもつ国だ。社会制度は変わっても組織への忠誠心は、そうした恐怖心からも変わらない。社会は常に私を抹殺しかねない。我々はどこから間違え始めたのか。

    言いたい事を言える人たちがYouTubeで流行っている。我々は、勇気さえあれば、いつでも変わりたいのだろう。この本で、置き忘れた子供の純粋さを思い出すのも良いかもしれない。

  • ♠子どもと、秘密、家出、死、老人、動物などとの深い関係を様々な事例・児童文学の例を挙げて論じていた。読んでみたい本もあった。
    ♠「秘密をもつということは、『これは私だけが知っている』ということなのでそれは”私”という存在の独自性を証明することになる。アイデンティティは他者の存在に支えられた不安定なものだが秘密はその確立に大いに関係している。」
    ♠「秘密の種類、その持ち方によって他人との距離が決まる。」

  • p.47
    子どもが成長し、傷ついた心が癒されてゆく過程において、秘密をもつことがどれほど大切であるかがよく示されている。しかしその秘密は、育てられ、親しい人と共有され、最後にはすべての人の前に開示されるものへと変化し、発展してゆくものなのである。
    → 読書会入門で紹介される猫町UGの魅力とは 「仲間との秘密の共有」なのだろう。閉鎖された安全な空間で極上の秘密を感情とともに共有・遵守することで、アイデンティティが確立される。それは、さなぎが蝶に変化を遂げるほどの激変を起こすこともある。のでは、なかろうか。

    p.38
    子どものことを述べているつもりが、知らぬ間に大人の深刻な問題に変わってきてしまった。これは最初にも述べたとおり、子どもの宇宙について知ろうとするのは、大人の宇宙について知ることになる事実を示している。変革者としての子どもは、大人の中に住んでいる、とも言えるのである。
    → 子どもが大人を見て学ぶように、大人も子どもをよく見て学ぶ必要がある。魅力的な人物ほど、子供っぽさを大切にしているものだ。

    p.59
    秘密を打ち明け、それを共有してゆこうとするとき、それに伴う苦しみや悲しみの感情も共にしてゆく覚悟がないと、なかなかうまくはゆかないものである。
    → 人が大きく成長するとき、感情が如何に重要な要素であるかを理解しておく必要がある。

    p.68
    この例を見てもわかるとおり、治療者にまず要求されることは、子どもの心に探りを入れたり、測定したり分析したりすることではなく、子どもの心の細やかな動きに敏感に反応し、そこに示された世界のなかで、できるかぎり共に生きようとする、感受性とコミットする姿勢なのである。
    → エスノグラフィー、行動観察の基本がこんなところでも語られています。今、自分の中で行動観察が熱いということか。

    p.134
    導者としての老人像を見事に描ききった作品、今江祥智の『ぼんぼん』を取りあげる。
    → 児童文学作品がどれも魅力的に語られますが、特にこの作品を読みたいと思いました。

    本書で紹介されている文学作品で読みたいと思ったもの
    ・クローディアの秘密 カニグズバーグ著 p.24
    ・秘密の花園 バーネット著 p.42
    ・トムは真夜中の庭で フィリパ・ピアス著 p.105
    ・ぼんぼん 今江祥智著 p.134
    ・ジョコンダ夫人の肖像 カニグズバーグ著 p.140

  • ?章まで読み終わったところです。すばらしい本です。

    子どもを通して、大人(自分)が理解できます。

    目次
    ? 子どもと家族
     1 憎まれっ子/2 家出願望/3 変革者としての子ども
    ? 子どもと秘密
     1 秘密の花園/2 秘密の意義/3 秘密の保持と解禁/4 秘密の宝捜し
    ? 子どもと動物
     1 動物の知恵/2 登校拒否症と犬/3 ファンタジー
    ? 子どもと時空
     1 時とは何か/2 通路/3 雲の上から/4 日本と西洋
    ? 子どもと老人
     1 導者としての老人/2 導者としての子ども/3 トリックスター
    ? 子どもと死
     1 子どもは死を考える/2 死者を弔う/3 死の意味
    ? 子どもと異性
     1 異性のきょうだい/2 星の王子様/3 異性への接近

    ポイント抽出
    ・家出の背後に、子どもの自立への意志、個としての主張が存在している(p24)
    ・秘密の存在がアイデンティティを支えてくれる(p28)
    ・「現在の家出」は、「家を求めての家出」である。家族内の関係の希薄さを保障するものとして何らかの擬似家族(p29)
    ・子どもの宇宙について知ろうとすることは、大人の宇宙について知ること(p38)
    ・「子どもの目」によって見た宇宙は、大人たちに思いがけない真実を開示する(p38)

    ・秘密をもつということは、「私」という存在の独自性を証明すること(p48)
    ・「私しか知らぬ秘密」は、他人に依存していないので、アイデンティティを支えるものとしては真にすばらしい(p49)
    ・「秘密」は大切なものであるが、簡単に言語で表現できない(p69)

    ・時が熟する:動物にしろ、「とき」にしろ、やってくるのであって、人間が与えたり、しつらえたりできるものではない(p86)

    ・時空を超えた世界:大人はこの世のことにあまりにも縛られすぎている。忙しさの中に逃げ込んでしまっている(p104)
    ・子どもとの通路:われわれが愛情を流し込む「通路」を持っているか(p116)

    ・父と息子:おれの才能は、はたして自分の家族を飢えにさらす価値があるのか(p201)
    ・「今日の若者は根本から退廃しきっている」−バビロンから出た粘土書版に書かれてあった。約3000年前だ(p201)
    ・父と息子との火花の散る対話を抜きに、真の異性への接近などできるはずがない(p202)

    参考書籍
    ・ラモーナとおかあさん
    ・クローディアの秘密
    ・誰が君を殺したのか

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著者プロフィール

河合 隼雄(かわい はやお)
1928年6月23日 - 2007年7月19日
兵庫県多紀郡篠山町(現・篠山市)出身。京都大学名誉教授、国際日本文化研究センター名誉教授。文化功労者。元文化庁長官。1952年京都大学理学部数学科卒業後、京都大学大学院で心理学を学びつつ、数学の高校教諭を兼業した。
天理大学で助教授時代にユング研究所に滞在し、ユング派分析家の資格を取得。日本における分析心理学の普及と実践に邁進。箱庭療法導入者としても知られる。欧米の心理療法を日本文化に根ざす仕方で導入を試みており、日本論・日本文化論の著作も多い。
主な受賞歴に、1982年『昔話と日本人の心』で大佛次郎賞、1988年『明恵 夢を生きる』で新潮学芸賞、1992年日本心理臨床学会賞受賞、1996年NHK放送文化賞をそれぞれ受賞。1995年紫綬褒章、1998年朝日賞、2000年文化功労者顕彰。
なお2012年に一般財団法人河合隼雄財団が設立されており、そこで本人の名を冠した「河合隼雄物語賞・学芸賞」が設けられている。

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