子どもの宇宙 (岩波新書 黄版 386)

著者 :
  • 岩波書店
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感想 : 80
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004203865

作品紹介・あらすじ

ひとりひとりの子どもの内面に広大な宇宙が存在することを、大人はつい忘れがちである。臨床心理学者として長年心の問題に携わってきた著者が、登校拒否・家出など具体的な症例や児童文学を手がかりに、豊かな可能性にみちた子どもの心の世界を探究し、家出願望や秘密、老人や動物とのかかわりが心の成長に果す役割を明らかにする。

感想・レビュー・書評

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  • 河合先生の本を少々深堀りしてみようと思い読んだ。

    冒頭いきなり、著者は「この宇宙の中に子どもがいるということは誰でも知っていることだが、一人ひとりの子どもの中に宇宙があるということを知っているか?」と読者に呼びかける。

    また著者は、大人がそのことに無知であると、子どもの中の宇宙を歪曲してしまったり、破壊してしまうことさえあると警告する。それも教育とか、指導とか、善意とかの名のもとに!

    自身は失敗者の大人の一人であり反省とフォローアップを目的にいま読んでいるところだが、できれば多くの方には予防の位置づけで読んで頂きたい本であると思う。

    子どもの中の宇宙の存在について、実際の子どもの事例を通じ、あるいは児童書の中での登場人物を通じて、著者は示してくださる。

    従って、本書に紹介されている数々の児童文学は、読者が大人になって忘れかけている宇宙をも一度思い出すのに有効な書ばかりだと思われる。

    個人的には、カニグズバーグの「ジョコンダ夫人の肖像」という児童書に非常に興味がわいた(ダビンチのモナ・リザに関する話らしい)。その本質は、子どもが大人の導者となるという話であり、ダビンチの導者となった子どもの話のようである。児童書でなく一般書にしても面白そうである。

    章立ては次のようになっている。
    Ⅰ 子どもと家族
    Ⅱ 子どもと秘密
    Ⅲ 子どもと動物
    Ⅳ 子どもと時空
    Ⅴ 子どもと老人
    Ⅵ 子どもと死
    Ⅶ 子どもと異性

    子どもと老人、、、それぞれの共通点が述べられていたがその視点が面白い。子どもは死の世界から来たばかり、老人はもうすぐ死の世界へ向かう。従って、どちらも死の世界と隣接していると。これは、宇宙から生まれ、宇宙に帰っていくというイメージだろうか。

    そんなこともあって子どもと老人の関係性は強いというのが第Ⅴ章であり、その一例が上記のダビンチの話だ。

    機会をみつけて、カニグズバーグの「ジョコンダ夫人の肖像」他、紹介されているいつくかの書にも触れてみたいと思った。

  • (基本星をつけるのは、システム上評価によって新しい本と出会いたいがためにやってるんだけど、)著者の子どもへの強い思いに共感して☆5にしたい。
    子どもの内にある宇宙は途方もなくすばらしいのに、基本この世界でかれらの声はかき消されがちだから。
    著者の他の本での引用時以上に、ここで引用した児童文学を読んでくれ〜〜という推しを強く感じられたので、引用されているものはもちろん、紹介されているもの以外の本もぜひ読みたいと思う。いつもこの著者の紹介している本を読むのが楽しみ。

  • この本自体が宇宙ではないかと思われるくらい、広がりがある。子どもの宇宙を守れる大人になりたい。強くそう思う。大人が思っている以上に子どもはすごい。そう痛感した。
    この本には様々な児童文学が紹介されている。どれも面白そうで手に取ってみたいと思うものばかりだった。

    • hanchassoさん
      是非読みたいです!チャンスがあったら貸して~
      是非読みたいです!チャンスがあったら貸して~
      2013/02/04
  • ・この宇宙のなかに子どもたちがいる。これは誰でも知っている。しかし、ひとりひとりの子どものなかに宇宙があることを誰もが知っているだろうか。それは、無限の広がりと深さをもって存在している。大人たちは、子どもの姿の小ささに惑わされてついその広大な宇宙の存在を忘れてしまう。大人たちは小さい子どもを早く大きくしようと焦るあまり、子どもたちの中にある広大な宇宙を歪曲してしまったり、回復困難なほどに破壊したりする。このような恐ろしいことは、しばしば大人たちの自称する「教育」や「指導」や「善意」という名のもとになされるので余計にたまらない感じを与える。
    私はふと、大人になるということは、子どもたちの持つこのような素晴らしい宇宙の存在を少しずつ忘れ去ってゆく過程なのかとさえ思う。それでは、あまりにもつまらないのではなかろうか。

    (僕は覚えている。4歳の時の自意識と、今の自意識、自我というか、自分というものの観念が全く変わらないという事を。人を見る時、相手が大人とか考えず対等に思っていたなあ。)


    ・自分の子どもが自分が養子であることに気づいたのではないか。このような時、本人に打ち明けるべきか、何が正しいかという議論は何とでも言え無意味である。ともかく養子としてもらわれてきた本人にとって、その事実がどれほど簡単に受け入れ難く、大変なことか、ということである。それに大人がどれ程共感できるかが最も大切なことなのである。
    このような時に私が「専門家の意見」として秘密を保持し続けるべきだとか、打ち明けるべきだなどと答えると、この親たちは専門家に自分たちの責任を肩代わりさせて養子となった子どもと共に背負うべき苦しみを放棄してしまうであろう。
    だから、このようなとき私のするべき事は、期待されているような「答」を言うのではなく、この子どもの置かれている状態を、親たちに心から分かってもらうように努力する事なのである。

    ・心理療法をしていて、特にそれが死にまつわる事であるとき、このようなまったく不思議な現象に出会う事が多い(死の時刻に縁者に挨拶にくる、しかも同じ姿を複数の人が見る、など)。
    われわれはこれをどう説明するかなどというよりも、事実は事実として受け止め、そこに込められた意味について考えてみるべきだろう。

    ・心理療法というととかく来談者の秘密を暴き立てるものと思っている人もあるようだが、この例に示されるように、われわれはむしろ、その秘密をできるだけ大切に扱うのである。

  •  忘れていた子供のころの感覚をふと思い出して、いいなぁ、なつかしいなぁと思うことがある。多くの大人が、子ども時代に忘れてきてしまったものは、大人になって忘れてしまったものは何か。子供は「何となく感じて」いる。

  • 遊戯療法の事例や児童文学を例にあげながら、子どもの心がもつ深くて広い宇宙について解説する。子どもへの温かい敬愛の情が、全編に渡って文章を通して伝わってくる。子どもは単なる小さな半人前の存在ではなく、それぞれに確固たる心を持って成長してゆく存在であることを、自分もそうだったと重ね合わせて思い出した。もっと子どもの心に触れるために、紹介されている児童文学を読みたくなった。

  • 読みやすかったです。様々な本が引用されていて、そちらが読みたくなりました。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「そちらが読みたくなりました。」
      私もそうでした!
      「そちらが読みたくなりました。」
      私もそうでした!
      2013/09/05
  • 学生の頃読んだものを再読。

    子どもの心や頭にある(そして大人である我々が手放してしまった)広い宇宙に想いを馳せながら、その宇宙を汚すことなく子どもと向き合うための指南書。

    教育や福祉で子どもに関わる人にはぜひ読んでほしい。

  • かつて子どもだった時の、あの、言葉では言い表すことができなかった様々な思いとこの本の中で再会することができた。あの時はとてつもなく重要なことだったのに、いつの頃からか段々と考えることをやめてしまったなぁ…

    子どもには子どもなりの道理がある…そのことを忘れずに子どもの話に耳を傾けることができる大人でありたい。

  • 子を持つ親として大変勉強になった。
    約35年前に書かれた本だが、今の子供にも変わらず宇宙はあるはず。
    児童文学の深さにも驚き。大人こそ読むべきなのかもしれない。

    子供の秘密や自立などの「時」が来たときに、親の言動が子供の魂を殺していないか、また思い出して読みたい本。

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