まちづくりの発想 (岩波新書 黄版 393)

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  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004203933

作品紹介・あらすじ

都市の商店街・住宅街から地方の町や村に至るまで、さまざまな「まち」で、いま生き生きとした個性的な地域社会をめざすうねりが起きている。かつて横浜の先駆的なまちづくりを推進し、その後、全国各地や世界の実情を見てきた著者が、住みよい「まち」とは何か、それを行政と市民の手によってどう実現するかを具体例にもとづいて語る。

感想・レビュー・書評

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  •  都市と農村という2極的発想では処理できない新しい「まち」が求められている。従来からの都市計画、農村計画、地域計画、国土計画などから、もっと身近な生き生きした新しい発想として、「まちづくりの思想」が生まれている。
     まちづくりは、今日の立場に立ちながらも未来に向かい、未来へかける行為である。望ましいと思う未来を描くことは自由である。まちづくりには未来を見るロマンがある。まちづくりは地味な仕事である。息永く継続的に行ってやっと実ることも多い。地道な努力の積み上げと継続なしには、まちづくりはできない。
    地域づくりプランナーとして。
    地域づくりの欠点は、①研究者や建築家の提案する計画は、内容は示唆に富んでいても、現実を動かしていく具体的な実践に結びつかない。②現実面では土木・建設事業だけが先行して、各専門分野相互の総合性にかけている。③縦割り行政。④地域づくりには、ハード麺だけでなく、これを運営していくソフトの面が重要だし、技術だけでなく、デザインなどの造形的な創造力も必要だが、これらを横に繋ぐシステムがいる。⑤計画を一貫して運営する。⑥地域住民によって考えられ実行されるべき計画であること。
    自治体や市民の役割を明確にして、地域的な個性や魅力を高め、土地利用や開発についてもっと合理的なルールが存在すべきこと、都市づくりには戦略性と総合的実践力が必要。そのシステムを作り人を育てる。
    横浜で。六つの戦略的な骨格的プロジェクト。「横浜の都市づくり」市民が作る横浜の未来。新しいまちづくり。町、街ではなく、ひらがなのまち。都市づくり、地域づくり、村づくり、地域おこし、村おこし、邑おこし、島おこしがあるが、まちづくりなのだ。
    まちは、誰か他人がつくって行くもので、住民が受動的に住まわせてもらっているというニュアンスが強かった。住民は、自分自身の問題として関わりを持ち、まちをつくる責任がある。
    まちづくりは、変化の流れが生まれ、行政は都市デザインをとなえ、市民参加を求める。市民と共に考える。市民は、まちづくりは切実な自分達の問題としてとらえる。
    20世紀は、科学技術の時代、国際化の時代、情報化の時代、世界大戦の時代、核の時代と言われるが、20世紀は都市化の時代から、都市の時代の入り口に立っている。
    都市化の時代は、人間を便利さを与えたが、また人間に強度のストレスを加え、人間関係を解体させた。農村に都市生活を持ち込み、生活様式も都市化した。
    人間が人間らしく生き生きと暮らしていける街づくりが求められている。
    都市現象とは、①食糧、エネルギーなどの生活を支える必需物資を自給自足できない。農村も同じ問題を抱えている。②都市は、多様な人が集まり、物や情報が交流する場である。都市は解放性を持っている。③都市は、資質の人々による共同生活集団である。異質性や多様性を許容しながら、まとまりを保つ道を見出すのが都市の宿命。④さまざまな共同生活手段がいる。⑤都市は、全体の共同性の仕組みや共同体が見えなくなっている。農村は自然サイクルの中で動いている見えやすい。
    見えなくなっていることで、煩わしさがなくなるのが都市である。
    この五つの都市現象は、文明史的な必然の流れ。
    都市の巨大化、非人格化、機械化が、人間性を失わせ、自然とのエコシステムを破壊している。
    まちは、人々が自分で把握できる範囲である。まちという単位は、人間の側から見た単位。便宜的、機械的に分けた単位ではなく、身近な血の通った心情的単位。身近な街を認識することによって初めて自分としての取り組む糸口が見えてくる。
    まちという共同の場。つくる対象として、モノづくり、シゴトづくり、クラシづくり、シクミづくり、ルールづくり、ヒトづくり、コトおこしとなり、別の切り口で言うと、機能づくり、個性づくり、魅力づくり、活力づくり、意識づくり、イメージづくりとなる。まちづくりの目標として、安全性、保健性、利便性、アニメティとなる。部分のまちを積み重ねて、全体的なまちを作る。
    行政の仕事は、企画を作ることよりも、企画を調整することによってなりたっていく。縦割りを、どう横につなげるかによって、全体が作れるようになる。
    まちづくりの基本理念は、トータルの理念、システムの理念、共有環境の理念、市民共用・共益の理念、市民共存・共生の理念、市民協働・共責の李燃、市民共感・共愛の理念、相互交流の理念、内発性の理念。ふーむ。すごい。
    そのことによって、総合性主体性、地域の個性確立、継続的創造性を育む。一番重要なのは、実践するということだ。思想から現場へ。現場から実践へ。そのことがまちを愛するということになる。
    横浜のプランを作った田村明である。そのまちづくりに関する言葉の整理はミゴトだ。

  • まちづくりとは、未来へのロマンと地道な努力。
    良い本だったな。
    何度も同じようなことがかいてあったりするきらいはあって、少々くどかったけど、それだけ重要なこと(主張)なのだろう。

  • 古いけれど新しい。
    理想を示しつつ現実の困難さも的確に指摘している点は、実務家であってこそ。
    地域「経営」への言及についても同様。

  • タイトルがいい。自分たちがまちを作っていくことは多様な人が集まって住むことの良さそのものであり、「まち」は旧来の村や計画都市とは性質の異なる共同体であると言っている。何よりもまちづくりを続けると楽しいことがある、そんな期待が持てる本だと思う。

  • まだまだ知らない地域の活動がたくさんあると思った。
    昭和30年代からのエピソードも実に興味深い!
    あと、意外に読みやすく、挙げられていた地域に興味を持った。

  • 今日の横浜市のまちづくりの中心となって活動した都市プランナーの田村明氏が“まちづくり”についての基礎的な発想をまとめた一冊。

    そもそもまちづくりとは何なのか?
    まちづくりのためには産官民がどのように取り組めばいいのか?
    まちづくりのプロセスにはどのような角度からアプローチしていけばいいのか?

    日本国内のまちづくり事例を挙げつつ、段階的にまちづくりの流れをわかりやすく説明している。

    観光・地域開発・建築などまちづくりに特に関連した分野に興味がある人は読むべき(らしい)。

    初版が自分の生まれる前と古い本なのだが、その内容は現代のまちづくりにま当てはまるし、その当時進行中だった田園都市計画など個人的には身近な内容で面白かった。

    地域開発を考えるベースになりそう。

  • まちづくり、地方自治、都市計画、地域振興…などなど、自分の原点になった一冊。

    田村先生の素晴らしいところは、「前向き」なところであると思う。横浜市役所におられた時も、苦労はしても常により良い横浜市をつくろう、という思いで仕事をされていたことが伝わってくる。

    田村先生は2010年に旅立たれてしまったが、この『まちづくりの発想』がある限り、先生の想いは残り続けると思う。

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