生物進化を考える (岩波新書)

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  • 岩波書店
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レビュー : 14
  • Amazon.co.jp ・本 (290ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004300199

作品紹介・あらすじ

ダーウィンによって確立された進化論はどのように発展していったのか。分子生物学は進化論をいかに豊かにしたのか。進化の道筋は現在どのように考えられているのか。革命的な「分子進化の中立説」を提唱して世界の学界に大論争を巻き起した著者が、『種の起原』から中立説までの進化の考え方をやさしく説き、人類の未来にも想いを馳せる。

感想・レビュー・書評

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  • 生物学の権威である著者が、生物進化論について概要をまとめたもの。古い本なので、現在の考え方との相違はわからないが、ダーウィンの進化論をはじめとする、生物進化の歴史的研究の経緯を理解できた。興味深く、役に立った。
    「進化のもっとも直接的な証拠は過去の生物の遺体である化石の研究から得られる。異なった地層に含まれる化石を地層の年代に沿って並べてみると、生物が遠い過去から次第に変化し現在に至った道すじがよくわかる」p6
    「メンデルの研究は長い間世に認められず、やっと、1900年になって3人の学者により再発見され、初めて注目を浴びるようになった。メンデルの仕事は35年間完全に無視され、埋もれていたが、再発見とともに突如として日の目を見るようになった(後日、注目していた人も相当あったことがわかる(ブリタニカ百科事典(1881)にも掲載されていた))」p21
    「ヒトは、生き物として格別高いものでもなく、樹木の保護を離れた後は、ただ大脳の発達で可能となった抜け目なさだけで生き延びることができた」p85
    「過去55万年の間に主な氷河期のうちでもっとも寒かったのは今から約1万8000年前で、その後は温度が上昇し、約1万年前に氷河期は終わり、現在われわれは極めて温暖な時期にいる」p87
    「ネアンデルタール人の頭骨の研究から、最近言われていることは、彼らは現代人のように流暢に発音できず、特に「i」「u」「a」のような母音や「k」や「g」のような子音の発音ができなかったらしい。おそらく、話し言葉より、複雑な情報を短時間に伝達するための脳の部分の発達も、現代人に比べてずっと劣り、そのため彼らはクロマニョン人との闘争に敗れたのではないかと考えられる」p88
    「(DNA内の情報量(25億字の文章相当))大英百科事典を例にとると、この1956年版は全体で23巻あり、各巻はおよそ1000ページからなり、全体として2億字を含むと推定される。したがって、受精卵核中にヒトを作るための設計書が含まれているとすれば、それは英文に換算して大英百科事典を12セットも合わせたほどの膨大なものになる」p95
    「(ダーウィン)有利な変異が保存され、有害な変異が除去されることを私は自然淘汰と呼ぶ」p128
    「(遺伝子変異は常時生起している)今までに一度も出現したことがなく、しかも今まで現れたどの突然変異遺伝子よりも個体の生存や繁殖に有利となるようなものは次第に底をついていくはずである。われわれが野生型遺伝子と呼んでいるものは、すべての生物種において、過去、何百万年、何千万年またはそれ以上にわたって、このような淘汰の過程を経て確立されてきたものである」p141
    「(141個のアミノ酸)ヒトとゴリラを比較すると、アミノ酸配列は1か所を除いてすべて一致している。また、ヒトとアカゲザルとを比較すると4か所、さらに系統的に離れたウシ、ウマ、イヌ、ウサギなどと比較すると、20個前後のアミノ酸座位について異なっているが、他の部分ではいずれもアミノ酸配列は完全に同一である」p203
    「(分子進化の速度の一定性)何億年間もほとんど形態的に変わっていない生きた化石のような生物でも、分子レベルでは進化の速度はほとんど同じであるという驚くべき結論が得られる」p206

  • 「分子進化の中立説」を提唱した木村資生博士による著書。著者は、生物進化が『ダーウィンの自然淘汰によってのみ起こる』と考えられていた時代に、それとは別の原理も働いていることを示した。ある個体にとって生きるために有利にも不利にもならない『中立な』突然変異遺伝子が現れると、それは自然淘汰の影響を受けない。したがって、その遺伝子が次世代に伝えられるか否かは、親から配偶子(精子・卵子)が取り出される際の偶然によって決まる。幸運なものが生き残るのだ。
    本書はダーウィンの自然淘汰から中立説に至る進化論の流れと、集団遺伝学(集団内の対立遺伝子の割合(遺伝子頻度)が突然変異や自然淘汰などの進化要因の下でどのように変化していくかを研究する学問)、分子進化学(DNA塩基やアミノ酸配列の置換から進化過程を研究する学問)、そして中立説の詳細について分かりやすく解説している。

    第一章 生物の多様性と進化の考え
    第二章 遺伝学に基づく進化機構論の発達史
    第三章 進化の道すじをたどる
    第四章 進化要因としての突然変異
    第五章 自然淘汰と適応の考え
    第六章 集団遺伝学入門
    第七章 分子進化学序説
    第八章 中立説と分子進化
    第九章 進化遺伝学的世界観

  • 1930年代フィッシャー、ホールデン、ライトが古典理論を確立した集団遺伝学。直系の著者によるプチ成立史から始まる。ヒトに矛先を向けると、優生学の怨霊や交配実験できないやらでデリケートそうだけど、机上の学問としてだけじゃなく、農作物や家畜の育種学との繋がりが深いのね。

    ちょっと古い本(1988年)で、「ゲノム」って言葉が一回も出てこない!分子レベルでの解析が可能になる前の時代、アミノ酸置換速度や遺伝子多型による研究って、どれだけ計算能力が必要だったの!?
    ゲノム万歳!

    面白かったのは、遺伝と環境の影響力の切り分けが難しい、量的形質の話。まあ計算式の内容はサッパリ解りませんがw。

    目に見える「突然変異」は全くランダムに起こるもので、進化の方向性を持たせるのは「自然淘汰」であることは、日常生活の時間的・空間的尺度をはるかに超えてて実感しにくい。さりとて物理学の中の数学理論みたいなツールが確立したとしても、今度はこっちのオツムがついていかない可能性が…。おっと、それは当方の問題かw。

  • 1988年刊。著者は国立遺伝学研究所名誉教授。◆分子進化における中立説と表現型に関するダーウィン的進化論とを組み合わせつつ、現代生物進化学までの議論展開と現代の到達点を解説。◆中立説関連叙述はそれほど違和感なし。ただより詳しい書はあるかも。◆一方の表現型。ダーウィン擁護と今西進化論への批判(生理的嫌悪にも思える書きぶり)が喧しいが、本書の全体がダーウィン擁護になっているかはかなり疑問。優位個体が集団に拡散し、種全体の変容・進化を齎すというのが、ダーウィン進化の肝とするのに、①観察では劣位個体の除去のみ。
    ②蜜蜂など社会性昆虫の働き蜂の如く、群進化としか言えないものや、クジャクなど性淘汰進化の説明が上手くできていない。③ヒトの脳やキリンの首などの急激な表現型の変容の説明に窮する。④環境大激変(隕石落下・大火山活動等)で恐竜絶滅、鳥類残存なんてのは優勝劣敗と言える?。◇むしろこれらは、環境適応の程度の差、つまり環境には食性・競合種・環境の多様性と変異の大小・棲み分け可能な変異化など多様な要因が含まれる上、種の生存如何はその複合要因と見た方が納得しやすいのでは。少なくともダーウィン一元論的崇拝は疑問。

    ◇勿論ダーウィン進化論も、環境適応性の強弱で種絶滅が起きる場合もあるという意味に抽象化すればそれほど違和感はない。このように記述内容に違和感はないのに、その一方で著者が何故これほど自然淘汰仮説の正しさだけを強調・強弁するのか??。◆また、分子進化と表現型進化との接合を「隔離」だけしか出せないのはかなり乱暴?。◆なお、狼から犬への短期間での進化、犬の多様な表現型など、分子進化が小さくとも表現型の多様性が実現できる実例がある。ここから色々派生させて考えると面白いかもしれない。

  • 2013.5.6 読了

  • 中立説のことを知りたくて読んだ。
    統計の話しになると難しいのだがが、進化についての丁寧な記述は読んでいて気持ちが良かった。

  • (2015.10.12読了)(2008.06.22購入)
    生物進化についての本を読んでいると、参考文献としてこの本がわりと頻繁に出てくるので、読んでおこうと手に取りました。
    この本は、学問としての進化論は、どんなものかの紹介なのでしょう。数式のようなものが出てきて、ちっともわかりませんでした。まったくお手上げでした。
    ダーウィンは、メンデルの遺伝の法則もDNAのことも知らなかったので、進化について論じるのに苦労したわけですが、メンデルの法則やDNAによって、論じやすくなったし、実証実験的なものもやりやすくなったのだと思います。
    それにしても、突然変異と自然淘汰で、進化を説明しようという、ネオダーウィニズムには、納得しがたいものがあるのも事実で、趣味としての進化論の肩を持ちたくなります。
    いろんな種の生き方の仕組みを見ていると、その見事さを突然変異と自然淘汰によるものという説明で、なるほどそうですかとは、とても言えないわけです。
    どうしても、生き物の意思みたいなものを想定したくなります。意思が遺伝子に影響を与えることができるか、と言われると、答えに窮してしまうわけではありますが。

    【目次】
    はしがき
    第一章 生物の多様性と進化の考え
    第二章 遺伝学に基づく進化機構論の発達史
    第三章 進化の道すじをたどる
    第四章 進化要因としての突然変異
    第五章 自然淘汰と適応の考え
    第六章 集団遺伝学入門
    第七章 分子進化学序説
    第八章 中立説と分子進化
    第九章 進化遺伝学的世界観
    参考文献

    ●ダーウィン(13頁)
    彼(ダーウィン)はビーグル号による世界周航以後長年にわたって集めた膨大な資料を用いて生物進化が事実であることを世界の学者に納得させただけでなく、自然淘汰によって適応的進化が起こることを明らかにした。
    ●遺伝の仕組み(17頁)
    ダーウィンが自説を『種の起源』にまとめるにあたって、彼を悩ました最大の難点は、遺伝の仕組みが分からぬことであった。
    ●集団遺伝学(31頁)
    集団遺伝学の研究対象は生物の集団とくに有性繁殖によって結ばれた同種個体の集まり、言い換えると繁殖社会である。このうちには各種の対立遺伝子がいろいろな割合で含まれており、これらを「遺伝子頻度」と呼ぶ。集団遺伝学では、これらの頻度が突然変異、自然淘汰などの進化要因の下でどのように変化していくかを追求する。言うまでもなく、集団遺伝学の重要な目標の一つは進化機構の解明である。
    ●突然変異(114頁)
    「突然変異、すなわち著しい奇型」といった観念は間違っている

    ☆関連図書(既読)
    「ダーウィン先生地球航海記(1)」チャールズ・ダーウィン著・荒俣宏訳、平凡社、1995.06.23
    「ダーウィン先生地球航海記(2)」チャールズ・ダーウィン著・荒俣宏訳、平凡社、1995.10.02
    「ダーウィン先生地球航海記(3)」チャールズ・ダーウィン著・荒俣宏訳、平凡社、1995.11.20
    「ダーウィン先生地球航海記(4)」チャールズ・ダーウィン著・荒俣宏訳、平凡社、1996.01.20
    「ダーウィン先生地球航海記(5)」チャールズ・ダーウィン著・荒俣宏訳、平凡社、1996.02.23
    「ダーウィン」八杉龍一編、平凡社、1977.01.14
    「種の起原」チャールズ・ダーウィン著・堀伸夫・堀大才訳、朝倉書店、2009.05.10
    「ダーウィンの思想」内井惣七著、岩波新書、2009.08.20
    「ダーウィン『種の起源』」長谷川眞理子著、NHK出版、2015.08.01
    「生物の世界」今西錦司著、講談社文庫、1972.01.15
    「私の進化論」今西錦司著、思索社、1970.05.01
    「進化とはなにか」今西錦司著、講談社学術文庫、1976.06.30
    「ダーウィン論」今西錦司著、中公新書、1977.09.25
    「主体性の進化論」今西錦司著、中公新書、1980.07.25
    「さよならダーウィニズム」池田清彦著、講談社選書メチエ、1997.12.10
    「38億年生物進化の旅」池田清彦著、新潮社、2010.02.25
    「「進化論」を書き換える」池田清彦著、新潮社、2011.03.25
    「失われた化石記録」J.ウィリアム・ショップ著・阿部勝巳訳、講談社現代新書、1998.03.20
    「NHKスペシャル 生命大躍進」生命大躍進制作班著、NHK出版、2015.07.10
    (2015年10月13日・記)
    (「BOOK」データベースより)amazon
    ダーウィンによって確立された進化論はどのように発展していったのか。分子生物学は進化論をいかに豊かにしたのか。進化の道筋は現在どのように考えられているのか。革命的な「分子進化の中立説」を提唱して世界の学界に大論争を巻き起した著者が、『種の起原』から中立説までの進化の考え方をやさしく説き、人類の未来にも想いを馳せる。

  • 医薬翻訳の勉強に使用。

  • 現在の遺伝学の基礎となっている書籍である。
    これには、ダーウィンから今までの遺伝学の流れが網羅されており、どんな人でもスラスラ読むことができると思う。

  • 集団遺伝学という学問を初めて知った。確率統計学に基づいた非常に数学的な学問分野であり、説得力がある。

    それにしても、評価の困る本である。

    まず、難易度。言葉遣い、概念とも直感的に分かりにくい。これは現代生物学の基礎知識が社会常識の範疇にないことが大きいかもしれない。

    そして、優生学の考え方。これは私的にはにわかに受け入れがたいが、ある立場からは検討の余地のあるものなのかもしれない。

    しかし、出版後、24年もたっているにもかかわらず、いまだ色あせていない部分がある。

    ・P3 極限生物の記述
    ・P60 共生説:ミトコンドリア、葉緑体、鞭毛などの細胞小器官は太古に共生することでできた。
    ・実際の進化の歴史がよくわかるようになったのは、カンブリア紀になってから。今から6億年前。
    ・人間をつくる最低の情報量は大英百科事典1セット(23巻)分。
    ・SOS修復。死ぬより突然変異の方がマシ。
    ・突然変異=著しい奇形は誤り
    ・遺伝率。人の背丈は乳牛の乳料より高い。
    ・P155 人が偶然から生まれる可能性はないが、進化によって生まれる可能性は高い。
    ・いとこから劣性遺伝病が生まれるのは、そうでない場合に比べて、7倍になる。
    ・アミノ酸座位の増減による違いは、ヒトとコイ(約4億年前)の分岐で初めて見られる。
    ・分子レベルでは突然変異の蓄積速度は一定
    ・黒人 東洋人 白人 の順に発生
    ・全生物を横断的に調べるためにリボソーム5SーRNAが使われる。
    ・古細菌はむしろ新しく真核生物に近い。コケはシダの退化系。
    ・変化の保守性は分子進化の大きな特徴。
    ・人類が進化の過程で脳の容量が300万年で2倍になったのが表現型進化としては異例。

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