軍国美談と教科書 (岩波新書)

著者 :
  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (228ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004300359

作品紹介・あらすじ

とどろく砲音…で名高い軍神広瀬中佐。死んでもラッパを放さなかった木口小平。爆弾三勇士。軍国の母の鑑とうたわれた「一太郎やあい」の老母…。戦前国定教科書の花形だった軍国美談、その教材としての改廃の裏には、驚くべき事実が隠されていた。軍事教材の歴史をたどりつつ、民衆と戦争、軍部と教育のかかわりについて説き明す。

感想・レビュー・書評

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    ●このような文字通りの「今は廃兵の勇士」の「悲惨な生活」は、「うちのことはしんぱいするな。天子様によく御ほうこうするだよ」と国定教材の母である岡田かめに叫ばしめた天皇の軍隊の約束ごとにまっこうから背反する。(略)ことは、国定教科書の失墜云々の問題にとどまらず、軍国日本の屋台骨をゆるがしかねない性格の事件である。国定教科書はすでに発行され、あまねく国民の目にさらされていて、いまさら粉飾しがたい。である以上、つぎの手は、眼前の事実の方を加工し、「悲惨な生活」をあたうるかぎり早く、当然の報いとしての「幸福な生活」を送っている軍国の母一家につくりかえることである。こうして以後、政府筋、軍関係団体、教育団体、地方名望家層などきもいりで、岡田母子激励の運動や行事が、さまざまなかたちで試みられることになった。
    →美談として成立しなくなったために、救済運動が行われたとは驚きである。
    ●教材に現実味をおびさせ、その陶磁治力を高めようとして、国民の日常生活に素材をとるとそこにキズが出てくる。(中略)キズが出るのを避け、かつ近代マス社会の要請に対応すべく、一般匿名を素材にすると、その陶磁治力は拡散してしまうか、無に近く落ちてしまって教材のていをなさない。

  •  大学1年の頃だったか、三浦綾子『塩狩峠』を読んで、これに感銘を受けたと友人に話したら、「木口小平とどう違うのか」とやり返された記憶がある。その当時、すでにこの本を読んでいたのだから、もう少しきちんと考えればよかったのだが、どうかしてやや感情的だったのだろう、ついぞそうした努力をせぬままにしていた。彼とは今でも親しく、先日も結婚式にはるばる来てくれた。
     この本の結論には、やや時代がかったものがあり、鼻白むところもある。しかし、木口小平がラッパを離さず息絶えたさまを「ユーキ」から「チューギ」へと書き換えていく流れをはじめ、明治から昭和に至り、国定教科書がどのような意図を持って変遷してきたかを追う意味では興味深い。

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