サッチャー時代のイギリス: その政治、経済、教育 (岩波新書 新赤版 49)
- 岩波書店 (1988年12月20日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
- / ISBN・EAN: 9784004300496
作品紹介・あらすじ
1979年にマーガレット・サッチャーが首相の座について以来、イギリスはどのように変わりつつあるか。経済・防衛から教育・福祉まで、「利潤」と「効率」の旗をかかげる"鉄の宰相"は、この国に何をもたらしたのか。激しい変化をロンドン大学教授として現地で見すえてきた著者が『イギリスと日本』(正・続)以来久々に問う、鮮やかな分析。
感想・レビュー・書評
-
パレードへようこそ [DVD]の関連本
https://bit.ly/3KupO3i詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/703529 -
サッチャリズムを「シュンペーター反革命」と規定し、その政治的・経済的意味を考察している本です。
シュンペーターは、労働者の窮乏化理論に基づく純経済学的なマルクスの革命論をしりぞけ、社会学的な観点から資本主義体制の崩壊を考察しました。彼は、経済発展が進み文化が変質するところに、社会の変質の原因を求めようとします。
資本主義が高度に発展すると、小規模企業が崩壊してその社長たちは保守党支持層から脱落していきます。他方で、大企業では企業家個人のイノベーションによって企業者活動がおこなわれるのではなく、単なる会社運営の要員としての重役や、いつでも所有権を放棄できる株主による官僚的な運営が進められます。こうして、資本主義の精気はしだいに失われていきます。さらに、資本主義によって生み出された大量の知識人は、農民や労働者と異なり、各地にバラバラに育った人びとの寄せ集めにすぎないため、つねに内部分裂をくり返すことになります。そのため、彼らによって生み出される「世論」はつねに流動的であるほかありません。こうして資本主義は中枢部の麻痺状態に陥り、没落してゆくとシュンペーターは考えます。
このような議論を前提にして、サッチャーは「歴史の車輪を逆転させる女」だと著者は指摘しています。サッチャーは、ビクトリア時代の上層および中上層階級の禁欲的な家庭を基礎として構築される自由私企業経済の再生をめざしたのだと著者はいいます。しかし、彼女が構築しようとする「完全競争の社会」も、富者と貧者が生じることでシュンペーターの変換過程に入ってしまうと著者は主張します。その一方で、シュンペーターの変換過程は一直線に進むと考えられており、サッチャーのような反革命者が現われることを考慮していないと述べられており、サッチャリズムはこうした問題を浮き彫りにしたと著者はいいます。
『イギリスと日本』正続(岩波新書)の内容を受け継ぎながらも、もうすこし客観的な観点からサッチャリズムの意味とその問題が解き明かされていて、おもしろく読みました。 -
歴史
政治
ノンフィクション -
<目次>
はしがき
Ⅰ 党首、マニフェスト、選挙ー英首相の強大な力の背景ー
Ⅱ 歴史の車輪を逆転させる女ーサッチャーの「信仰復興」-
Ⅲ 荒れ狂う「反福祉主義」の嵐ー悔しかったら頑張りなさいー
Ⅳ 歴史の大河の中でー戦勝、挫折、ヨーロッパ化ー
*** -
ここでもオバカな会田雄次・渡部昇一が批判されていて、ワロタw
-
教師の解雇、競争原理の強化による格差、反福祉。国民に嫌われる事を沢山やっておきながら、英国を蘇らせた秘密はなんだろうか、と読んでみた。
嫌われようがやり遂げる力、嫌われても別の視点で点を稼いで世論を味方につける。対立軸の作り方が巧みなのだと思った。
蓮舫のやり方は中途半端で生ぬるく、パフォーマンス重視だったという事も分かった。全ては覚悟だ。小泉元首相にはそれが感じられた。中身はともかくね。だからみんな痛がりながらも付いて行った。
この作者は結論にたどり着くまでの説明が長く、別のサッチャーに関する著書の作者を痛烈に批判しており、その姿勢がなんか遠吠えみたいでいい感じがしなかった。 -
4004300495 232p 1988・12・20 1刷
-
サッチャーは労働者階級から這い上がってきたから、自分と同じ境遇の人を優遇したのだろう。
そして徹底的な赤嫌いだからモスクワオリンピックも徹底的にボイコットした。