千利休―無言の前衛 (岩波新書)

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  • 岩波書店
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本棚登録 : 402
レビュー : 40
  • Amazon.co.jp ・本 (246ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004301042

感想・レビュー・書評

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  • 赤瀬川原平が野上弥生子原作の秀吉と利休を映画化する際に脚本を頼まれ日本史の基本のきの字も知らない著者が単なる歴史としてでは無く人間としての利休へと肉薄していく様を描いた作品である。
    芸術新潮で初めて拝見した日本を代表する前衛芸術家、赤瀬川原平。その特集を読むほどにどんどん興味が湧き早速その著書をと図書館で手に取ったのがこの千利休 無言の前衛
    赤瀬川が前衛芸術家ということは理解していたが果たして利休は?と言うのが読む前の正直な印象だった。利休と言えば安土桃山時代に秀吉の元に仕え、茶の湯と言う文化を作った何処と無くお堅い人という印象が強かったからだ。現代で言うとお茶は何処か畏まって決まりごとが多く肩が凝りそうなイメージもそれを助長しているかもしれない。しかし、元々あったお茶を飲むというただの行為を禅の思想に基づき、道へ、更には芸術へと昇華した点では当時最も前衛的であると言うのも頷ける。また、利休本人は常に新しい試みを模索しており自分の死後その思想或いは感覚的な部分がゴッソリと抜け落ち茶の湯が形骸化してしまうのでは無いかと考えていたほどである。そんな利休と赤瀬川原平が時を超え会合する様は実に興味深いものである。是非、原作と映画どちらも観てみたい。

  •  最近赤瀬川センセイづいちゃってるな。とうとう岩波新書まで。月に3冊ずつ発行される岩波新書、昔は今月はどれにしようかなと必ず1冊ずつは読んでいたものだ。1冊180円の頃か(いつの話だよ)。それが最近はしばらく読んでない。このブログを初めてからほぼ3年にして初めての登場では...、ということはさすがになくてちゃんとここにあった。
     それはともかく赤瀬川原平が岩波新書書いてるとはねぇというのは偏見だろうか、あるいは岩波も柔らかくなったということか。しかも千利休ときた。タイトルからしてまっとうな芸術評論かと思いきや、いやこの著者だからそうは思わないが、自由奔放な論旨展開に、おおそう来なくてはと膝をたたく。それでいて赤瀬川という人を知らずにまじめな千利休論を期待して読んだ人にも納得いくであろう評論に達しているところがなかなかすごい。まったくただものではない。
     なんといっても白眉はIII 利休の沈黙の章だろう。あまりに小市民的な新聞紙の畳み方、蛇口の洗い方、財布の紙幣の並べ方、それらがいちいちうんうんとよく理解できてめちゃおかしい。してそれだけなら読み捨てエッセイにしかならないのが、ちゃんと利休論につながっていくすごさ、いや凄さ。

  • トマソン・路上観察で有名な赤瀬川原平さんの茶の湯に関する解釈。
    利休の茶の湯が実は古典もモダンも超越した「前衛芸術」であったことがわかる。
    利休の「もてなし」へのこだわりが強く心に残っている。
    マンガ「へうげもの」と同時期に読んでいて、利休を色々な角度から見れてとても楽しめた。
    随分前に読んだので、わすれかけ。もう一度読み直したい。

  • 現代の前衛芸術を生きてきた赤瀬川原平氏が当時の前衛芸術家千利休を見つめ言語化していくエッセイ。
    千利休は茶の湯の完成者として描かれる事が多い。後世から振り返ってみればそうなのだが、当時としてみれば人の思いつかない事をやってのけ、新しい美を見出し追求した前衛芸術家であった。
    何時の間にか我々は茶道を定型的な、発展性のない、黴の生えた古臭いものとして考えるようになってしまっている。しかし原点に立ち返りじっくりと見つめてみれば、また違った物が見えてくるに違いない。

  • あぁこれ学生時代に出会いたかった。そうしたらその後の学究の方向性が全然ちがうものになっていたかもしれない。

    前衛芸術が「美の思想や観念といったものをダイレクトに日常感覚につなげようとする営みである」って。そうだったのか。

    本題の利休についての考察もおもしろいが、前衛芸術とはなにかという「寄り道」部分の深い洞察力に脱帽。

    次は「超芸術トマソン」読まないと。

  • 千利休の「茶の思想」を、「超芸術トマソン」の赤瀬川原平が、彼のいつもの言葉で平明に解き明かしていく過程には、しなやかで自由な精神のみがなしうるきもちよさがある。原平さんの思考回路が、ダイレクトに与えてくれる快感だ。

  • 千利休がこんなにも身近に感じられるのは、赤瀬川さんのキャラクターによるものかもしれない。利休の選択の基準がこの本を読んでやっとわかった。

  • Yotsuya

  • 秀吉と利休の間に生まれている感情の波を想像したり、
    当時の権力や美の価値観に想像を働かせる。
    日本の風土や、茶室の出で立ちに関する考察で、なるほどなと共感できるところも多くとても面白かった。

    たとえば、「儀式」にまつわること
    「お茶を入れる」という行為
    毎日行っていると、それが形式化されて道筋ができ、リズムが生まれてくる。この行い自体が目的を離れて少し浮き上がってくる。
    それがスムーズに執り行われることによって安心感がうまれるのだ。
    つまり、不安から抜け出す・安心感を得るための一種の儀式は生きている不安から遠ざかる運動になる。
    という。

    私自身、茶道をやっている。と、実際に浮世から離れられる安心感を感じる。現実から離れたいという気持ちは、少なからずある。
    それが「生きている不安から遠ざかる運動」と言われた時
    否定というか、なるほど と腑に落ちた気持ちにまでなった。

    ----

    千利休 というテーマではありつつも、自分の暮らしの周辺・出来事をほんとうにわかりやすく言葉にしてくれていて感動する。
    人に勧めたいけど、好きな人って限られるだろうか

  • 芸術としての茶道と芸術家としての千利休について、ウィットにとんだ文章でつづられた一冊。とくにわかりやすかったのは、茶道の一連の手順を野球のバッターや相撲の力士にたとえたもの。これまで茶道に関する本を読んできたが、茶道があそこまで一挙一動にこだわるのか、その理由が垣間見えた気がした。また、茶道が完成された事態における位置づけから、茶道がいかに「伝統」ではなく「前衛」であるかが説明されていて、茶道の本質的な部分もわかったような気になるが、ちょっと観念的な表現が多いので読みにくさは否めない。

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著者プロフィール

1937年横浜市生まれ。美術家、作家。千円札事件被告。1981年『父が消えた』(筆名・尾辻克彦)で第84回芥川賞を受賞。著書に『櫻画報大全』『東京ミキサー計画』『老人力』『日本美術応援団』など。

「2015年 『赤瀬川原平漫画大全』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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