フィルハーモニーの風景 (岩波新書 新赤版 135)

著者 :
  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (212ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004301356

感想・レビュー・書評

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  • 岩城さんの本は大好きで、でも、もうあまり書店で見かけることもなくて寂しい思いをしていましたが、この本はYAMAHAでゲット!これからは楽譜とCD以外のコーナーもきちんと覗くようにしよう。
    「ウィーン・フィルの秘密」、「ベルリン・フィルの表情」、「舞台裏の風景」、「ハープの運び屋さん」、「指揮棒のこと、ホールのこと」と、クラシックに興味を持ち始めたらきっと誰もがちょっと気になるに違いないことをうまーく教えてくれて楽しい。

  • 『森のうた』に続いて本書も再読し、改めて岩城宏之は手練れの書き手であると思った。もちろんベースには一流の本業があるのだが。巻末のプロフィールによると小説まで上梓しているらしい。

    前半はウィーンフィルやベルリンフィルなどの「超」が付く一流音楽家のお話で、驚くようなエピソードが記されている。例えば巨匠カール・ベームについて、あるウィーンフィルの団員は「あのジイさんの棒の通り弾いたらエライコトになるんだぜ。もうすっかりモウロクしているから(中略)おれたちがカバーしてやっているのさ。苦労するよ。ショウバイショウバイ」と語る。ベームの来日公演時の話だが、演目から(Wikipedia他によると)1975年のことと思われる。一方ベームと言えば思い出す名盤中の名盤、モーツァルトのレクイエムは(今調べると)1971年の録音だ。いずれもオケはウィーンフィルだが、このわずか4年ほどでベームは「すっかりモウロク」してしまったのだろうか。

    ベルリンフィルのコンサートマスターは「このオーケストラには三つの大きい欠点がある」と語り、「第一にこのオーケストラはリズムが悪い。第二に音程が悪い。第三にお互いが聞き合わない。これを解決しなければわれわれの先はない!」と絶叫する。岩城は「つまり『基本を忠実に守る』ことに尽きるのである。それだけのことなのだ。世界一とはこういうことなのか。感動した」と記す。

    いわゆる裏方の話もとても面白い。ベルリンフィルの「世界一の」ステージマネージャー。『森のうた』にも登場するN響事務局の延命氏。こちらも岩城の見立ては世界一だ。「田中陸送」というハープ運送専門の会社に岩城は一日同乗取材したという。こんな指揮者が他にいるだろうか。岩城がデビューしたころは、菜箸を削って指揮棒を自作したというのにも仰天する。

    本書は1990年刊行の岩波新書だが、本箱の奥には文春文庫の『棒ふりの休日』と『棒ふりのカフェテラス』もあった。いずれも数十年前の古い本だが、次はこれかな。幸か不幸か内容はすっかり忘れているし...

  • [private]<u><b>ウィーン・フィル=プライド高い奴の溜まり場</b></u>

    <span style="color:#cc9966;">ウィーン・フィルやベルリン・フィルの素晴らしい音色は、楽員たちのどんな苦心によって磨かれ、華やかなコンサートの舞台裏では、どんな人たちがそれを支えているのか。</span>

    久しぶりにのだめ読みたくなったw
    フィルの舞台裏がよくわかる。彼らのプライドの高さは格好良すぎる。

    特に格好良かったベルリンフィルのコンサートマスター、ミッシェル・シュヴァルベ
    <blockquote>このオーケストラには三つの大きい欠点がある。それを克服しない限り、ベルリン・フィルは先へ行かない。何だかわかるかい?」
    …「そういえば、ファゴットの2番がちょっと弱いし…」…と、言いかけたら大きな声で遮った。
    「そんな小さなことじゃない。第一に、このオーケストラはリズムが悪い。第二に、音程が悪い。第三に、お互いが聞き合わない。これを解決しなければ我々の先はない!」
    机を叩いて絶叫した。</blockquote>hoooo!!!!カッコイイね!!岩城さんが私の言葉を代弁してくれている。
    <blockquote>つまり、「基本を忠実に守る」ことに尽きるのである。それだけのことなのだ。世界一とはこういうことなのか。感動した。</blockquote>感動した![/private]

  • 一流指揮者による一流オーケストラの素顔と、その演奏を陰で支える人々(帯より)に関して。
    文章がとにかく読みやすくて、夢中で読了。バブル期の日本の頃の話なので、不況の中、お金のない楽団を支えた小さい企業さんたちの今もすごく気になります。
    現在の音楽業界の話も読んでみたくなりました。

  • ウィーンフィルやベルリンフィルという名だたるオーケストラを描いたエッセイで、演奏を聴くだけでは知り得ない裏側が指揮者の視点で面白おかしく描かれています。
    前半の内容はコンサートを聴いただけでは決して分からないようなことばかりで非常に面白いのですが、いかんせん文章が散漫で、特に後半のハープの運送屋さんと一日を共にした話はほとんど日記のような文章で読みづらかったです。

  • 岩城さんエッセイ好きなので購入。これから読みます。

  • 「図書」連載のエッセイをまとめたもの。気楽な語り口ながら、オーケストラを支える人々の話など、大変面白い。オーケストラとはかくも人間的な集団なのだ。

著者プロフィール

1932-2006。東京藝術大学在学中にN響副指揮者となり、56年デビュー。以後、世界のトップ・オーケストラを指揮。エッセイストとしても知られ、著書に『フィルハーモニーの風景』『音の影』など多数。

「2023年 『指揮のおけいこ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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