- Amazon.co.jp ・本 (227ページ)
- / ISBN・EAN: 9784004301547
感想・レビュー・書評
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イスラームについての考えが360度変わった。
勝手に怖いイメージがあったり極端なイメージがあったけれど
そうやって印象だけで決めつけたくないと改めて思った。 -
日本人にとって、イスラームというと礼拝、断食やブルカといった千年一日の変わらない習慣と男女差別いったイメージに加え、昨今はテロも交えた文脈で語られがち。しかし、そんな頑なな宗教が世界人口の1/4近く、15億人から信仰されるものなのか?という疑問から読んでみた。いろんなことが分かった。
厳しいといわれがちな戒律は「生弱説」を下敷きにしていて、厳格に行うべき事柄は契約で、それ以外は「イン・シャー・アッラー(神の意あらば)」という言葉で「やれたらやりますね、行けたら行きますね、未来のことですからまあ当てにしないでください」程度にゆるく捉えるという使い分けをしているものだったり、
女性たちはベールを被ることで外見の良し悪しを男性たちに言われることがなくなるためむしろ己の実力で勝負できると考えており、女性社長や政治家は珍しくなく、事実ムハンマドの最初の妻は15歳年上の女性実業家であったり、
一夫多妻はムハンマドの時代に戦争で男不足に陥った社会を立て直すための特例処置に過ぎず、しかも家は女性の持ち物で男性はいわゆる通い婚をしていたり、
親であろうが社長であろうが王であろうが神以外は全てが平等という思想から、神以外のものに頭を下げることを拒んだり、
一日5回の礼拝も1か月の断食も全ての人が平等に行うので裕福な人が貧しい人の気持ちを身を以て知る機会になっていたり、
それ故に裕福な人は施しをするのが当然と思っており、貧しい人は施しを受けることが当然と思っていたり。
この本で語られているのは比較的富裕層と言える人たちの身の回りであるため、貧困層に焦点を当てれば暗い話だって当然出てくるだろう。しかし、これらのような寛容で知性のある人々がいることもまた事実。初版が湾岸戦争の直前の1991年で、日本人女性によって書かれているということも特筆すべき。イスラームに対する新たな視点を持とうとしているなら、良い導入書の一つと言える。 -
私の周りにもムスリムの方がいる。朝会社で同じエレベータにのり、私とは違う階で降りていくから、同じビルに入居する別の会社である事は解るが、そこは最近伸びているIT企業である。その女性は頭をすっぽりとヒジャブで覆っており、一瞬でムスリムなんだと理解できる。世の中のニュースも最近は不穏な中東情勢からか、パレスチナの人々がテレビ映像に頻繁に登場してくる。彼らはイスラームであり、敵対するイスラエルは勿論ユダヤ教だ。日本人は何かと宗教に疎く、質問すれば神道でも仏教でもなく無宗教と答える方が多い。だから生活リズムや社会が教えによって動いているイスラームの世界観を斬新なものと感じる。当たり前だがムスリムの人々にとっては、それは宗教というよりも生き方、生活そのものとなっており、寧ろそれが当たり前の価値観である。海外旅行した際にタクシー運転手が目的地でもないところに途中で停車して、お祈りで20分ほど待たされたこともある。急か急かする日本人の私から見れば、客がいるのに、と理解に苦しむことも若い頃にはあった。だがそれも価値観の異なる国に居る事を忘れた、ただの日本人の感覚だったと今は思う。イスラーム人口は増えている。多産を善とする文化や教えもあるだろうが、それだけではなく、あらゆる人種民族を受け入れ、人が持つ生きる権利や平等を自然と実践するムスリムの生き方への憧れもあるのではないかと思う。
本書はそうしたイスラームの生活様式や考え方について書かれている。砂漠をゆったり流れる時間や、砂が風によって流され美しい紋様を描き、今にも白い建物からお香の香りが漂ってくるかの様な描写がされている。気がつくと私も部屋でウードを焚いて寝転びながら読んでいる。
全くの日本人の私には描かれる世界観への憧れはあるが、最近身近に増えてきたムスリムの人々の価値観を知っておきたい、という知的好奇心もある。彼らの世界を受け入れ互いに力を合わせてプロジェクトを進める。そんな日が近々来るに違いない。
テレビ映像で流れる悲惨な戦禍だけでない。本来は平和を愛し、隣人が互いに助け合って生活する社会が世界中に戻ってくる日を待ち望みながら、真っ青な空から突き刺さる様な陽射しが照りつける街並みを想像して本書を閉じた。 -
NDC(8版) 302.28
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思想が偏っててしんどい。
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イスラム圏の人々の日常生活や価値観を分かりやすく書いた本。民博で行われるセミナー「文化人類学者・片倉もとこの見たサウジアラビア」に参加する前の予習として読んだ。
イスラム世界における女性の生き方や、労働感、断食の様子などが、著者の体験を元に詳しく書かれている。医学部では約半が女性であり、看護師も男性が女性と同じくらい必要とされているのだそうだ。さらに女性専用の銀行まであり、店員も客も全員女性だそうな。本書の出版が1991年となっているが、今はどうなのだろうか。(というか元々本当か?)
欧米的な近代社会とは違った社会のあり方を示し、イスラムに対する偏見へのカウンター情報を発信するのが重要なテーマだと感じたが、少し肯定的に書きすぎているのではないかという印象はある。
登場する人々は善良で高学歴で煩悩の薄そうな人ばかりで顔が見えてこないし、どことなく一昔前に共産圏の国を好意的にレポートした知識人たち文章のようでもある。 -
ムスリム社会の人間観(人と神は区別。人は弱いもの)と 近代西欧社会、日本社会の人間観との比較は 興味深い。近代西欧社会の人間観(人は強いもの)、日本社会の人間観(人と神は区別しない。性善説にたつ)
この本を読む前と 後では ムスリム社会の人に対する印象が 全く異なる。ムスリム社会の人にとって、西欧社会より 日本社会の方が 生活しやすい気がする。時間をかけて、日本人の ムスリム社会の人に対する誤解、先入観を 取り払う策は必要だが。
男女隔離、男女平等(女性優遇)の社会とは知らなかった。「男女隔離社会だからこそ、女性の実力が発揮され、社会進出が促される」とは なるほどである。女性専用の銀行、女性専用の公園があるらしい -
男女観が想像と違っていた。