密教 (岩波新書 新赤版 179)

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  • Amazon.co.jp ・本 (244ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004301790

感想・レビュー・書評

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  • 実家が真言宗なので少しは理解したいと思い手に取った。総論は理解できたし共感こそするが、詳細はあまりに難解だった。

  • 同じ仏教でも、一般的に知れ渡っている顕教に対してちょっとマイナーで怪しげな感じのする密教。その密教の発生論、日本密教とチベット密教の異同、曼荼羅や密教の世界観などについて解説しており、最後の方では、欧米の近代合理主義が依って立ってきた二元論だけでは対応し切れていない昨今の様々な問題に、密教的な一元論がそれを補完できるような思考形態を提示できるか可能性について触れて締めています。
    大乗仏教をベースとしながらも、チベット密教はヒンドゥ教を、真言や天台の日本密教は中国で律令制度の影響を受けながら現在の姿を形成してきたかがよく分かりますし、密教だけに限りませんが、布教浸透段階での土着信仰との融合による変形も納得できました。色々なインチキ宗教の教義や儀礼に利用されやすい密教ですが、中途半端な知識に騙されない為にも読んでおきたい一冊ですね。

  • 密教に馴染みがない初心者でもなんとか読める本だと思います。一番面白かったのは密教にも時代やどの国に伝わったかで異なる特色がある、という記述でした。インドにおける密教の発展を初期、中期、後期とわけ、中国および日本に伝わったのはインドの中期密教であること、他方チベットに伝わったのはインドの後期密教であり、共通点も多くありながら相違点も多い、という点が興味深かったです。また日本の場合はインドの中期密教を引き継いでいるとはいえ、やはり本書を読むにつれて空海の存在感というか、空海独自の解釈が色濃く反映されている気がして、日本の密教は日本特有と言っても良いのではないか、という気もしました。密教用語に多少慣れるのにも良い本だと思います。

  • 密教の概要をわかりやすく説明している入門書です。

    著者は本書に先だって『密教・コスモスとマンダラ』(1985年、NHKブックス)という密教の解説書を刊行しており、本書の内容はそれとかさなるところも多いですが、いっそうコンパクトな入門書となっています。

    本書は概説書ではあるものの、歴史的な経緯を追って密教の形成と変遷をたどり、そのうえで密教の思想と儀礼について解説するという構成をとっていません。日本人の読者にも比較的よく知られている空海の思想を中心にして、マンダラの解説などをおこない、他方で日本に影響をあたえることのなかったインドの後期密教を継承したチベット仏教の特徴についても解説をおこない、全体として密教の発想を学ぶことのできるような叙述がなされています。

  • 「仏教」というモノはインドで起こり、様々な経過が在って色々なモノが形成され、それらが主にアジアの国々へ伝わった。伝わったモノは、伝わった先で様々な要素を取り込みながら各々の経過を辿った。「密教」もまた、その「仏教」の一部、または「仏教」に根を有する体系ということになる。
    空海がもたらした真言宗系の密教は、唐の長安で空海が恵果から学んだモノが出発点となっている。
    「密教」を突き詰めると、一人の人間が無限の空間的、時間的拡がりを有している世界、自然、宇宙と向き合うような所から始まっている哲学なのかもしれない。その他方、人とは社会の中で社会生活を営む存在でもある。中国へ伝わった「密教」は、強力な王朝が統治した帝国に在って、皇帝に近い王侯から街角の庶民に至るまで、各々に社会生活を営む人々の間での「在り方」も備えるようになって行った。唐の長安で恵果が空海に伝えたのは、「一人のため」の「密教」でもあり、「社会のため」の「密教」でもあるという二面性を備えたモノだった。
    「一人のため」、「社会のため」という二面性を備えた「密教」を修めた空海であったからこそ、貴人を含む多くの人達と交わりながら街の寺で活動し、建設や教育というような社会的活動にも関与し、文化的な事績も残し、その他方で高野山に籠って自身の求道に勤しみながら弟子達を育てたという生き様を示したのかもしれない。
    高僧が他界してしまうことを「入滅」と言うそうだが、空海に関しては、主に没後に時を経て弘法大師の諡が登場して以降は「入定」と言われるようになった。「入定」とは「禅定(ぜんじょう)に入る」という意味、思考や妄想から離れて精神を集中させて静かに瞑想している状況に在ることを指す。要は「弘法大師は滅せず…」ということなのだ。弘法大師は「衆生救済を目的として永遠の瞑想に…」と言われている訳だ。
    そういう具合に「言われるようになった」というのが「如何いうことか?」を考えるような材料を、本書は供しているかもしれない。
    そして「チベットと日本にだけ現存しているインドで起こった“密教”」というような経過は、「人と宗教と?」というようなことを考える材料ともなり得る。更に、比較的近年の「新しい宗教」と「密教」とを比べて考えようとしているような論も少し面白かった。
    本当に「研究者がその研究活動で得た知識を一般向けに説く」という「新書らしい!」という感の好著であると思った。入手した本は「32刷」ということだったが、版を重ねているのも納得だ!

  • 密教についての入門書。にしてはやや難解。ただ、初学でも密教の奥深さは理解できた。現在に残る密教は日本とチベットだけで、それぞれはいとこのはずなんだけど様相が全く違うというということから始まり、日本における伝えられ方などが語られる。顕教は塵を払い、密教は鍵をあける?がとてもわかりやすいが、説明するとなると難しい。大日如来は太陽さえも凌駕する宇宙そのものである。最後の方の筆者の主張はある程度耳を傾けるべきものと思う。密教と新興宗教は違う!

  • 2019年9月25日購入。
    2020年7月20日読了。

  • 『文献渉猟2007』より。

  • 仏教に精通していなくても、分かりやすく解説をしているので、とても読みやすく興味深い一冊でした。

    具体的にどんな事を口伝するのか、気になってしょうがない。
    読んだ後に知的好奇心を刺激されました。

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著者プロフィール

1929年 和歌山県高野山に生まれる。1951年 高野山大学文学部密教学科卒業。1959年 東北大学大学院文学研究科印度学仏教史学科博士課程修了、文学博士。現 在 高野山大学教授、高野山専修学院長。著 書 『密教の歴史』(平楽寺書店)、『密教―インドから日本への伝承―』(中公文庫)、『理趣経』(同)、『密教』(岩波新書)、『密教・コスモスとマンダラ』(NHKブックス)、『松長有慶著作集』全5巻(法藏館)他多数。訳 書アジット・ムケルジー『タントラ 東洋の知恵』(新潮社)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

「1994年 『密教大系』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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