民族という名の宗教: 人をまとめる原理・排除する原理 (岩波新書 新赤版 204)

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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004302049

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  • 人間の歴史(猿人~古代国家~ローマ帝国~近代国家~明治維新、ユーゴスラビア、ユダヤ人)を振り返りながら、集団として人をまとめる原理について考察されている。対話形式のため読みやすい。国家、民族など普段は考えもしなかったことだったので、知的興奮もさることながら、知らず知らずの内に作られた「単一」「同じ」という意識が私の中にも浸透していたのだなとハッとさせられた。

    ・血の信仰→言葉の信仰
    ・宗教が部族を越えて広まり、人間を大集団にまとめた
    ・国家にふさわしいのは国民という呼び名、その国家と人間とをどろどろとした感情で結びつけようとして用いられるのが民族というフィクション
    ・民族=部族意識を越えさせる新しい宗教
    ・産業革命、大きな市場がほしい→国家(ネイション)統一運動
    ・近代化とは、民族の神話を創造するための、民俗的なものの容赦ない切り捨て
    ・民俗は現実だけど、民族はフィクション
    ・日本人の単一化が進んだのは、日清、日露の戦争をきっかけにしてであり、更にそれが進んだのは昭和の軍国主義の時代
    ・「日本人」は作られたもの
    ・単一民族だとフィクションになる→単一化された国民
    ・近代化は単一化

  • 本を読んで、こんなに思考回路が変わったことは、今まで無かった。読み終わって、ちょっと怖くなったくらいです。

  • 人類の発生から、なぜ人は集団になるのか、人間は一人じゃ何もできないから集団で狩りをするようになり、その統率のために言葉が生まれたということが、先生と生徒の対話形式で書かれています。

    【紙の本】金城学院大学図書館の検索はこちら↓
    https://opc.kinjo-u.ac.jp/

  • 会話形式で分かりやすい。社会主義が必ずしも悪いわけではないと気付かせてくれる本。

    学校で男子たちが群がる現象は人間だけのものらしい。日本は他の国に比べ男女不平等であり、男性優位な社会のため、人間らしいのか。人間自身は弱いので、集団を武器としたというが、現代社会は個人主義、個の時代になっているため、人間は自ら滅びようとしているのか。

    別の視点から見た歴史の教科書のような感じがする。

    大きな集団を作る民族と対極なのがユダヤ人らしい。調べたところ、現在ユダヤ人が多くいる国は、イスラエルとアメリカらしい。

    中国やインドは人口が多すぎると思うが、どうやって無理やり国にしたんだろう。

    制服の重要性を感じた。

    言語の大切さを感じた。
    中国もそうらしいが、日本の若者は昔の人よりだいぶ標準語を話す人が多いと思う。未来はどうなるのか。

    現代、教育のおかげで、日本人の統一化はだいぶはかられていると思うが、日本はまだまだ遅れているので、他の国の人との統一化などははかられていないため、外国人労働者への差別がある。少子化も進んでいるため、日本存続のため、差別がなくなっていくのではないかと思う。

    中国は社会主義の皮を被った資本主義国家だと、私は思う。経済の面では。コロナ対策では大いに社会主義の威力を発揮していたと思う。キャッシュレス化等のIT分野では社会主義は良い威力を発揮しているのではないか。中国は社会主義のいいところと資本主義のいいところをうまく取り入れていってほしいです。

    韓国は宗教がさかんらしいが、日本と中国はさかんではないと思う。世界的には3国とも似たような国だが、違いはなにか。

    著者は精神科医だが、この本に書かれていることはその分野とはまったく異なる。教養がありすぎる。

    日本人は気づいていないが、日本は社会主義国だよ(笑)。

  • 金大生のための読書案内で展示していた図書です。
    ▼先生の推薦文はこちら
    https://library.kanazawa-u.ac.jp/?page_id=18417

    ▼金沢大学附属図書館の所蔵情報
    http://www1.lib.kanazawa-u.ac.jp/recordID/catalog.bib/BN07097108

  • 2冊目の読書ノート 1993/9/5~2005/4/30に記載

  • 【由来】
    ・「民族とネイション」のamazon関連本。

    【期待したもの】
    ・ナショナリズムについてのシントピカルによさげ。

    【要約】


    【ノート】
    ・読みやすいんだけど、なかなか深い。

    ・人をまとめる原理/イデオロギーとしてのナショナリズムの発生・発達過程について議論されており、ちょうどマクニールの世界史を勉強し始めたというのもあって、そこそこイメージしながら読め進められたと思う。だからと言って、サラリと読んで、共通点を見いだせるほど「想像の共同体」は簡単ではなさそう...。

    ・終盤は社会主義についての話。既に没落しつつあった社会主義の美点として万国の労働者の連帯を掬い上げる。これは大衆を戦争へと向かわせるナショナリズムという、国家にとって都合のよいイデオロギーへのアンチテーゼとして有効であるという著者の信念をうかがわせる。

    ・出張時にどこかに置き忘れてて、bookoff onlineで198円で買ったら、あまり触りたくないような感じのボロボロのものをつかまされた。大学近くの古本屋で、程度のいいものが250円であったから、また買った。ちょっと自分にとってはいわくつきの本になった。

  • 資本主義者だと思っていた自分の思想の行く末がわからなくなってきた…
    ネイションの訳語、アメリカの構造的人種差別の存在について言及がなかったのは気になったが、大変示唆深く面白く読めた。

  • つむじまがりが考える民族、それから宗教。民族がどういうものかとか、宗教がとういうものか考えるには、今までにどういうものが民族あるいは宗教と呼ばれてきたか考える帰納的な方法に、民族あるいは宗教ではないものから民族や宗教を考えるという方法がある。
    さて、つむじまがりの彼はどう考えるか。彼は、宗教や民族を必要とした側から考える。つまり、なぜ、それがなくてはいけないのか。民族や宗教が必要とされているという前提のもと、演繹的に考えていく。
    内容紹介の見出しには粘り強い対話と銘打っているが、決して粘り強くはない。たくみに痛いところをかわして、対話という物語を形成している。ひとは集団をつくらずにはいられない、このことを認めたうえで考えれば、民族というのは必要とされた宗教だと論理的に言える。彼はこの限界点を自覚しておそらく書いている。だから、基本的にはおおざっぱでいいのだ。だってこれは物語だから。
    なぜひとは集団をつくらずにはいられないのか、どうして集団をつくれるのか、この点に関しては触れられない。そして、民族が宗教だと言い切るのなら、なぜ国家や国民という考えを宗教だと言い切らないのか。彼はひとは集団をつくるということや国家というものを信じているからだ。「信じる」というこの一点については次作まで待たねばならない。
    理由づけなどいくらでもできる。起きたことにはどうとでも言える。彼はよく知っていた。彼の見方に従えば、ユーゴスラビアの紛争はこのように見える。物語とは、ほんとうにあったかどうかなんて問題にしない。物語から得なければならないのは、批判精神だ。
    社会主義は過去の遺物だと言うひとがいるかもしれない。しかし、社会主義が現に存在したという事実は誰にも揺るがさられない。社会主義の物語がある以上、なにがしかの見方があるはずだ。その物語を必要とした精神があるはずだ。それが批判だ。それをしないで資本主義万歳と社会主義を捨て忘れるのは「もったいない」。そんなわけで彼は「リサイクル」という批判を行うのだ。これが「抵抗」としての社会主義だ。新しい社会主義などでは決してない。それに彼は主義というものがただの信仰だと言い切っている。
    決してこの対話は建設的なものではない。彼は決して革命家ではないからだ。いや、ひょっとすると、「書く」という行為でそれを成し遂げようと考えていたのかもしれない。もう彼の生きたことばを聞くことはできない。しかし、彼は、現実に社会主義がすたれて、資本主義といわれる世の中に生きているというその事実に決して耳を塞いでいない。その一点において常に彼はまっすぐなのである。要はそういう信仰との「おつきあい」としての対話なのである。

  • 主張が明快で読みやすい。
    知識を総動員して思考を重ねていく様が鮮やか。

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著者プロフィール

なだいなだ:1929-2013年。東京生まれ。精神科医、作家。フランス留学後、東京武蔵野病院などを経て、国立療養所久里浜病院のアルコール依存治療専門病棟に勤務。1965年、『パパのおくりもの』で作家デビュー。著書に『TN君の伝記』『くるいきちがい考』『心の底をのぞいたら』『こころの底に見えたもの』『ふり返る勇気』などがある。

「2023年 『娘の学校』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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