フォト・ジャーナリストの眼 (岩波新書)

著者 : 長倉洋海
  • 岩波書店 (1992年4月20日発売)
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  • 14レビュー
  • Amazon.co.jp ・本 (244ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004302230

フォト・ジャーナリストの眼 (岩波新書)の感想・レビュー・書評

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  • 勝手に「私の英雄」と読んでいる人たちが何人かいる。それはフィデル・
    カストロであり、チェ・ゲバラであり、チェーザレ・ボルジアであり、エンリ
    コ・ダンドロであり、ティベリウスである。

    その中でも強く惹きつけられるのがアフガニスタンの北部同盟司令官
    だったアフマド・シャー・マスードだ。実際、「アフガニスタン国家英雄」
    の称号を贈られている。亡くなった後だけれど。

    マスードを知るきっかけとなったが、本書の著者である長倉氏の写真
    だった。一目で惹きつけられた。アフガニスタンに侵攻して来たソ連
    軍を相手に一歩も引かず、ソ連軍を撤退に追い込んだ男。

    どんな強面かとおもうだろう。確かに厳しい表情を見せることもある。
    だが、どこか洗練されているのだ。知性を感じさせ、エレガントでさえ
    あるその佇まい。

    それから長倉氏の写真集や著作を集めるようになった。ただし、未だ
    全てを読み終わってない。それなのに、本書は再読である。発行当初
    に既に読んでいるので、あれから20年以上の歳月が経っている。

    1980年代から1990年代にかけて、長倉氏が取材に訪れた国や地域
    を振り返りながら、そこで生きる人々の日常を「フォト・ジャーナリストの
    眼」で浮き彫りにしている。

    内戦のエル・サルバドル、フィリピンのスラム、イスラエルに包囲され
    世界から見捨てられたパレスチナ、日本へ渡ったフィリピンからの
    出稼ぎ労働者、日本の高度経済成長を底辺で支えた山谷の人々、
    そしてアフガニスタンで戦士たちと過ごした250日。

    取り上げられている国や地域の現状は本書が書かれた時期とは
    異なっているのだろうが、日々のニュースが取り上げない現実は
    今も世界各地にある。

    内戦のエル・サルバドルに生きる人々にしろ、フィリピンのスラムに
    住む人々にしろ、山谷の日雇い労働者にしろ、皆、生活は楽では
    ない。それでも、他者を思いやる心を持っている。

    持たざる者は心まで貧しい訳ではない。却って、持っている者たちの
    方が心が貧しくなるのではないか。

    どの章も印象深いのだが、やはりアフガニスタンでマスードたちと一緒
    に過ごした日々を描いた章が一番心にしみる。それは9.11アメリカ同時
    多発テロの2日前に自爆テロによって暗殺されてしまったからだろう。

    「私は西でも東でもないイスラムの道を目指します。アフガン人による
    アフガニスタンを……」
    「われわれの考えるイスラム共和国。それは正当な選挙によって、
    国民の声を反映させるものでなくてはならない。それは非イスラム国
    と敵対するものではなく、他の国々と協調して、アフガニスタン再建
    を第一に考えるものです。われわれは不公平がない限り、あらゆる
    国と友好を結びます」
    「私は自由と言葉が好きです。しかし、その実現は苦難の連続です」

    アフガニスタンの状況が報道されるたびに、今でも思う。こんな考え
    を持っていたマスードが生きていたのなら…と。それは詮無いことな
    のだろうけれど。

    本書の内容はまったく古ぼけていない。紛争地で、難民キャンプで、
    貧困に苦しむ人々は、今でも世界各地にいる。そして、彼ら。彼女ら
    はそこでその日を精一杯生きている。

    そんな人々を世界中に伝えるのが、「フォト・ジャーナリストの眼」なの
    だろう。

  • 世界のどっかで(そこらじゅうで)
    人が生きてるんだなー、と
    テレビに映らない、歴史に登場しない人たち
    なんでもないことに心から喜んだり笑えるように
    ちゃんと生きなきゃ

    20年も前の本だけど、
    たぶん相変わらず

  • 彼に惚れた
    彼の現地人との付き合い方、その姿勢
    写真、文章からガンガン伝わってきて
    もうだめだ。
    久し振りにひっと

    2009/02/14

  • 右目でファインダーをのぞきながら、左目でファインダーに映らない世界を見続ける姿勢だけは失いたくない。

    常に自分の視点で何を撮りたいのかを考えてる。

  • フォトジャーナリストの視線はどうしても「撮影対象」を探してしまう。そしてそれは、他人にとっては不快だったり、羞恥だったりすることが多い。そんなフォトジャーナリストならではの苦悩を抱えながらも「伝えなきゃならない」という使命感を感じずにはいられない。エルサルバドル、アフガニスタン、フィリピン、パレスチナ、そして日本の山谷など、彼の眼は世界中を映す。
    彼が撮ったモノクロ写真と併せながら、まるで日記のように読みやすい文章で描かれた新書です。

  • 大学時代に本屋で何気なく手に取り、読み耽り、長倉さんの本を読み漁るきっかけになった本。人への物事を伝える力はもちろんのこと、物事を捉える力の見本になる。

  • [ 内容 ]
    「右眼でファインダーを、左眼でそこには映らない世界を」。
    戦乱のエル・サルバドルでは一人の少女を10年間撮り続け、またアフガンの戦士と250日間生活を共にするなど、世界を駆け巡るなかで、彼の「眼」はどう変化していったか。
    国内外で同時代の鼓動を撮り続ける気鋭のカメラマンが、情報過多社会における報道写真のあり方を熱っぽく語る。

    [ 目次 ]
    1 戦場から人間へ―エル・サルバドル
    2 一人ひとりの人間をみつめて―アフガニスタン・イスラム戦士との250日
    3 歴史を生きる人々 ―フィリピンで見えたこと
    4 マニラから日本へ―フィリピン出稼ぎ労働者を追って
    5 もうひとつの日本―山谷の男たち
    6 私のフォト・ジャーナリズム―パレスチナで考える

    [ POP ]


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    読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • この自分とかけ離れた(ような)世界の生活を想像する力、バランスを放棄せずに持っていたいなあと思う。
    あと、なんとなく手にとっただけなんだけど、予想外の収穫が3つあった。まず1つめは最近調べてた1982年のベイルートの事件が載っていたこと、2つめが寿町を含むドヤ街が載っていたこと、そして3つめが「コーヒーを飲むおじさん」の写真を見つけたことなのだ。

  • 素晴らしい写真家の素晴らしい視点。
    写真の向こう側が見えてきます。

  • 世界各地の紛争地帯を回る、フォトジャーナリスト。現地の人々と生活を共にして、悲惨な状況をただ伝えるだけではなく、一人一人にスポットライトを当てて、メディアの情報では見えない、戦争の本当の悲惨さ、そこに生きる人々の力強い姿を撮ろうとする姿に感動した。

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