西郷隆盛―西南戦争への道 (岩波新書)

著者 : 猪飼隆明
  • 岩波書店 (1992年6月19日発売)
3.50
  • (2)
  • (7)
  • (10)
  • (1)
  • (0)
  • 本棚登録 :55
  • レビュー :6
  • Amazon.co.jp ・本 (234ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004302315

西郷隆盛―西南戦争への道 (岩波新書)の感想・レビュー・書評

並び替え:

表示形式:

表示件数:


  • 井上説(帝国主義を目指す西郷像)を 部分的に支持しながら、西郷隆盛の英雄性や愛国心を損なわず、著者なりの視点で、西郷隆盛が 目指した国家構想を推定している。面白かった

    井上説
    *征韓論に失敗して西南戦争を起こした
    *西郷隆盛の征韓論は、政府の専制政治(有司)に不満を持つ士族を集め、朝鮮に進出すること
    *西郷隆盛の西南戦争の意図は 士族による軍国主義国家を作ること

    著者の意見
    *西郷隆盛の朝鮮進出の狙いは ナショナリズムの高揚、天皇親政(専制政治の打破)
    *西郷隆盛の目指したのは 士族軍国主義ではなく、天皇専制に近い立憲主義

  • 西郷隆盛の評伝。とはいえ、けっこう明治新政府の「有司専制」成立過程にページが割かれていて、単なる西郷の一生について順を追って語るというスタイルではない。

    征韓論争のページの割合はやはり大きい。西郷の征韓論は「国内問題の処理を征韓に求めようとした」(p.158)としている。では「国内問題」とは何か。それは、西郷以外の征韓派がみな民権運動にかかわりを持っていたことから、「国家の意思決定過程から疎外されたことからくる不満」(p.171)つまり大久保・木戸らが主導する「有司専制」に対する不満であると推測する。裏返せば、これは天皇親政への期待ということになる。西郷の直接の動向と関係ない「有司専制」にページを割いているのは、そういう理由である。

    また、毛利敏彦の西郷=平和論者説に対しては否定的である。最終章では、西郷の国家構想に天皇親政と立憲制・議会政治への構想を読み取ろうとする。ただこれは西郷が多くを語っていないことから、なかなか確定が難しいように思う。

    体系的な文章を残していないのに、日本の政治の中心にあったという意味で、西郷隆盛は日本の幕末~近代政治史上における希有な存在である。そして史料がないのに、その構想を追わなければならない存在。その矛盾を抱えた西郷研究の困難を、改めて感じた。

  • 幕末動乱~明治6年政変を経て、西郷隆盛は皇国主義者となり、天皇の意見が反映されない有事専制を批判していたのではないだろうか。という結論に至る本だと思いました、面白かったです。

    ・西郷さんの藩政改革が凄い、下級武士は喜びそうですが、門閥からは恨まれそう。
    ・木戸・左内さんの征韓論はすでに満州のことまで言ってて預言者かと思った。

  • 西郷隆盛の評伝。有司専制への批判が西南戦争へとつながった。同じく有司専制を批判した自由民権運動は共和制を志向したが、士族の反乱は天皇専制を志向している。西郷は、軍事的圧倒や敵内部分裂から妥協的解決を見出す優れた軍略家である一方、政治家としては大久保利通とは対照的に薩摩藩(島津斉彬)への敬慕が行動を規定し続けた。藩主の臣であることと天皇の臣であることは矛盾せず、西郷は皇国主義者であるとする。大日本帝国憲法発布後に逆賊であった西郷が復権したのはその証左かと。

  • 西郷さんはデリケートな人。

  • 西郷隆盛の伝承記という意図ではなく、明治維新最大の功労者でありながら、西郷隆盛が最大の武力反乱(西南戦争)を起こしたのはなぜなのかという視点で、当時交わされた手紙や新聞なの資料に重点を置いて歴史的存在としての西郷を捉えることを意図したもの(序章より)。有司専制を推し進めようとした大久保利通と立場を対比させることで、西郷を歴史的人物としてどう評価すべきかを考察する。/なかなかおもしろかった。大きな歴史の流れの裏に見える政治家たちの思い思いの駆け引き、資料に見え隠れする本音、思想と信念。

全6件中 1 - 6件を表示

西郷隆盛―西南戦争への道 (岩波新書)のその他の作品

猪飼隆明の作品

西郷隆盛―西南戦争への道 (岩波新書)に関連するまとめ

ツイートする