歴史としての社会主義 (岩波新書)

著者 :
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レビュー : 8
  • Amazon.co.jp ・本 (221ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004302391

作品紹介・あらすじ

東欧革命とソ連邦解体によって、ロシア革命が切り拓いた国家社会主義のシステムはついに終焉の時を迎えた。この歴史的な大転換はいったい何を意味するのか。ペレストロイカの展開を見守ってきた歴史家が、マルクス主義の成立にまで遡りながら、社会主義の思想・運動・体制の歴史を批判的に見直し、世界史における社会主義の運命を問う。

感想・レビュー・書評

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  • ユートピアの追求。図書館本。 207

  • 人間の本能を考えると、平等を根本原理としたユートピアが成立しがたいこと。一方で、国が危機にさらされた時に、人々が等しく犠牲を強いられる生活を受け入れる可能性があること。考えさせられる材料は豊富にありました。一方で、歴史の事実に立脚することを旨とし、簡潔な記載を意図しているので、心が動かされる様な記述が少なかったのが残念。

  • 世界中の左派の中で何やら社会主義が復権している。
    冷戦終結以降、多くの左派政党は中道路線を取り、そうした元左派政党は「改革政党」と称して政権を獲得するに至った。アメリカ、日本、イギリスあたりがそうである。
    しかし、ここに来てそれがまた変わってきている。アメリカ大統領選予備選では民主党サンダースが民主社会主義者を唱え本命クリントンに並び、イギリス労働党党首には強硬な社会主義者であるコービンが就任した。無論、資本主義という大きな枠組みの中での、現状へのアンチテーゼという側面は大きい。サンダースが大統領になりコービンが首相になる時代が近いかといえばそうでもない。
    と前置きしたところでこの一冊である。この本は1992年出版だから4半世紀も前のものである。当時はもうソ連が崩壊し、資本主義の勝利が決まったかのように見えた時期であった。その中でかつて社会主義、ひいてはソ連に心酔した著者によって著されたこの本はある種「ソ連のことは嫌いになっても社会主義のことは嫌いにならないでください」的な雰囲気を醸し出している。タイトル通り、資本主義のアンチテーゼとして生まれた社会主義がいずれ全体主義を超える全体主義になって自壊した過程をざっくりと描く。スターリンであれ毛沢東であれ、全体主義を超える全体主義と化した社会主義国家の内実は凄惨である。
    この本を踏まえて考えると、今の状況は社会主義がユートピアとして脅威の盛り上がりを見せた戦前に似ている。そこで面白いのは「彼らのユートピアはむしろ現実には実現されえないものであるが故に、つよい迫力を持って近代社会批判の力を発揮した」という著者の指摘である。少なくとも当時の著者は社会主義による統治は懐疑的であった。果たして、今の社会主義ブームは社会主義への渇望なのか資本主義へのアンチテーゼに過ぎないのか。ブームに便乗する側はそのあたり履き違えていないか。この本を読んで考えると面白い。

  • マルクス以前のいわゆる「空想的社会主義」から説き起こし、ソヴィエト連邦を中心に、20世紀を席巻した社会主義国家の歴史を簡潔にたどっています。レーニン、カウツキー、ブハーリンらの対立についてもある程度言及されており、ボリシェヴィキズムの「運動体」としての姿が描かれているように感じました。

    太平洋戦争におけるソ連の振る舞いについては、著者と異なる意見を持つ読者も少なくないのではないかと思われますが、それはさておき、社会主義の歴史的推移を概観できるという点では有益な本ではないかと思います。

  • [ 内容 ]
    東欧革命とソ連邦解体によって、ロシア革命が切り拓いた国家社会主義のシステムはついに終焉の時を迎えた。
    この歴史的な大転換はいったい何を意味するのか。
    ペレストロイカの展開を見守ってきた歴史家が、マルクス主義の成立にまで遡りながら、社会主義の思想・運動・体制の歴史を批判的に見直し、世界史における社会主義の運命を問う。

    [ 目次 ]
    1 モスクワ1992年
    2 近代西欧のユートピア
    3 マルクス主義の強さと弱さ
    4 世界戦争の時代とロシア革命
    5 新しい文明か―スターリンの帝国
    6 第2次大戦から冷たい戦争へ
    7 抵抗の社会主義―バルカンとアジア
    8 世界戦争の時代の終り
    9 国家社会主義の終り
    10 新しいユートピアはあるか

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    [ 参考となる書評 ]

  •  所謂「進歩的知識人」とされる和田春樹氏が社会主義思想からソ連崩壊までの大きな流れを非常に大きなスケールでまとめた新書。細かいことは色々とあるが、読み終わってそれほど大きく記憶には残らなかった新書という印象。

  • 社会主義理論がどのように発展してきたか、および社会主義国家がどのような政策を行ってきたかを時系列的に分析した本。
    父親の本棚に入ってたので何気なく手にとって読んでみた。

    出版は1992年8月だから社会主義が文字通り「歴史」となってから大体半年後。


    前者については、主にユートピア論についての分析。

    マルクスはルイ・ブランやサン・シモン、ロバート・オーウェンらのユートピアモデルを「空想的」と批判して、唯物史観に基づく自らのユートピアモデルを提示したわけだけど、そのモデルを国家という形で可視化する試みはソ連という壮大な実験を経て失敗に終わった。

    ただ、これをもって、マルクスのモデルが資本主義のモデルより劣っていたとは言えないとは思う。
    一時的ではあれ、資本主義より好パフォーマンスを挙げていた時期はあったわけだし、昨今の金融危機においても経済を「計画的に」運営すべきという意見は強まっているといえる。

    とすると、結局、短期的な評価ではあるが、アメリカモデルが成功し、ソ連モデルが失敗したのは、資本主義と社会主義の差というよりも、民主主義と社会主義の差なのかなと思う。要するに経済モデルの差ではなく政治モデルの差ということ。

    実際、経済モデルとしての社会主義は戦後においてもドイツやフランスのなどで、民主主義と共存しながら(社会民主主義)一定の成果をあげてきた。
    リセッションのたびに経済の「計画性」の重要性は唱えられているし、社会福祉の充実も声高に唱えられている。

    逆に政治モデルとしての社会主義は、今では中国やベトナムで不完全な形で残存しているにすぎない。
    もちろん民主主義がベストなモデルとは思わない。(てか「ベストな政治モデルは何か?」という問いは古今以来ずっと発せられてきていまだ答えはでていないし、これからも出ることはないだろう。)
    結局、現在我々が当然の前提として受け入れてる民主主義という政治モデルも、よりベターな選択肢を追い求める中で得た一つの答えに過ぎない。
    ま、民主主義はよりベターなモデルを追及する契機を国民に与えるという点で、モデルとしての流動性の面で優れているのかな、とは思うが。(ただし、あくまでも他の政治モデルと比べた場合。民主主義の中にも成熟や硬直化の問題はある。)

    結局ソ連は「モデル・メーカー」としての責任上、政治モデルとしての社会主義から脱却できなかったがゆえに、弱体化し、崩壊した。

    が、マルクスの描いたユートピアが現代において価値を失ったとは思わない。
    むしろ、それを無価値とみることは、民主主義を基盤としたよりベターなモデルの可能性を失わせることになるのではないだろうか。






    といあえず、一度マルクスをしっかり読まねば。

  • 期待していたものに比べてはるかにおもしろかったです。一応スターリン下のロシアは勉強したからという面が大きいかもですが。
    完全にロシアにスポットを当てた一冊です。

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著者プロフィール

東京大学名誉教授。1938年生まれ。東京大学文学部卒業。歴史家。日朝国交促進国民協会事務局長。
著書『金日成と満州抗日戦争』(平凡社、1992年)、『朝鮮戦争全史』(岩波書店、2002年)、
『朝鮮有事を望むのか』(彩流社、2002年)、『北朝鮮本をどう読むのか』(共編著)(明石書店、2003年)、
『検証日朝関係60年史』(共著)(明石書店、2005年)、『日露戦争 起源と開戦』(上下)(岩波書店、2009-10年)、
『拉致問題を考えなおす』(共編著)(青灯社、2010年)、『北朝鮮現代史』(岩波書店、2012年)、
『平和国家の誕生』(岩波書店、2015年)、『スターリン批判1953~56年』(作品社、2016年)、『アジア女性基金と慰安婦問題』(明石書店、2016年)

「2017年 『米朝戦争をふせぐ 平和国家日本の責任』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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