昭和天皇の終戦史 (岩波新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (252ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004302575

感想・レビュー・書評

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  • 独白録成立の政治的背景が明らかになる。GHQ提出文書の下本として、未だ国体護持や退位の回避が確定せざるときに著された。戦犯容疑者や宮中グループやGHQの一部などが行った、天皇の責任回避を目指すあらゆる行為のひとつが独白録の作成だった。

    記憶に強く残った指摘。
    ニュルンベルク裁判と違い、東京裁判は文書による証拠が少ないため、日本側の恣意的な証言が判決に有利に働くことがあった。
    敗戦直後の日本は対米開戦責任をフォーカスしすぎて、近衛文麿はまさか大陸政策で己が戦犯容疑者になるとは思っていなかった。天皇も同じく独白録のなかでの大陸政策に対する責任回避の供述は甘い。41年の開戦決断は多分に政治的な要因があったのに対して、満州事変や盧溝橋事件等の大陸政策は陸軍に圧倒的な責任があることを確信していたのかもしれない。

  • 1990年に発見された「昭和天皇独白録」の成立過程・記述内容を元に、戦後の天皇制の存続の意味合い、いわゆる「穏健派」「宮中グループ」「昭和天皇自身」が、①GHQや東京裁判に対して果たした役割や、②戦争に至る過程において果たした役割等を明らかにしようとするもの。東京裁判の当不当というやや不毛な議論に入り込むことがなく、資料を駆使して説明しようとする点は好ましい。本書からは、①上記グループの日中戦争の過小評価、②宮中の右翼人脈によるGHQ関係者らへ接待攻勢、③天皇の戦争開始拒否権行使の容易性等がよくわかる。
    また、④天皇への情報伝達(内奏・御下問等)の程度・実態や十五年戦争期の内大臣の機能強化の実情などは興味深い。

  • -2014/09/09

  • 昭和天皇の終戦史は、これまで色々読んできた戦中~戦後の記録本のひとつの総括を与えてくれる。単に昭和天皇の、ということだけではなく、ひろく戦争に対する責任とはどういうものなのか、ということについて深く考えさせてくれるという意味でも稀有な本だろう。それも具体的な人物の言動を通してさまざまな感慨をかみしめることがでいる構成がすばらしい。ただ、平成も20年余りを数えたが、「あとがき」にある「国民の多数が天皇像の落差を落差として認識できる」という状況は到来していない。昭和を歴史にするためにも、本書は広く読み継がれるべきだろう。

  • 宮中グループによる昭和天皇免罪工作。
    いやはや終戦工作って大変だね。

  • 終戦時における天皇・軍部・宮中等それぞれの思惑とその結果が、解禁された資料に基づき、客観的かつ多面的に分析されている。

    日本側として終戦時に最優先されたのが「国体護持」。
    アメリカ世論は、天皇制に対して厳しい見た方をしていたものの、アメリカ政府は以下の理由により天皇制の継続を指示した。

    ・日本の降伏がアメリカ側の予想より数ヶ月早まったために、十分な軍政要因が確保できなかったこと
    ・天皇の命令によって日本軍の武装解除が迅速に行われたのをみたアメリカ側が天皇の権威を再認識しこと
    ・アメリカ国内の世論に配慮して、占領コストの節約を意図したこと

    アメリカ政府は「天皇制を支持しないが、利用する」政策を採用した。
    ただ、これにより天皇の戦争責任を不問にするという結論には達してはいなかった。

    日本側は、戦争責任を被る人間を最小限に留めるために、一部の人間にそれを丸抱えさせようとした。
    その矛先が、東条英機をはじめとした陸軍幹部である。
    これは、先のアメリカ側の思惑と一致する部分であり、この方向性が戦後処理のコンセンサスになった。
    もちろん、天皇の了解なしに陸軍が全てを掌握していたことは考えにくい。
    当然天皇個人に責任を追求する動きもあったが、「天皇はあくまで政府の決定を承認する立場で、力をもった軍部へ異を唱えればクーデターが起こりうりさらに深刻な危機を招く危険性があった」といったような理屈がそれを制した。
    また、日本は本土決戦前に降伏をしたことで、軍政要員が送り込まれるまでの間に機密文書を処分することができた。
    それにより、決定的な証拠を隠滅することができ、GHQ側は証言に頼らざる得なかった。
    さらに、そのことで終戦処理に時間がかかり、この間に進行していた新たなパワーバランスである米ソの「冷戦」がアメリカ政府の日本に対する宥和政策に有利に働いた。

    こうした内的・外的要因により、東京裁判では28人がA級戦犯として起訴され、内15人が陸軍、2人が海軍、8人が文官だったが、死刑となったのは7人中6人が陸軍軍人であった。

  • 日中戦争から太平洋戦争における昭和天皇(と宮中Gr)の戦争責任を具体的に指摘(日中戦争への責任の無自覚・無関心?、昭和天皇が口実とする立憲君主の前提となる議会制度の機能不全や、御前会議以前の下問時の意見など)することで批判する一方、近衛文麿を高く評価している書物には初めて出会った。
    著者が研究者としてどういった立ち位置にいるかは知らないが、昭和天皇の死後3年程度でこれほど天皇の戦争責任に突っ込んだ書物が発行されていたとは驚きである。現在、これよりかなりトーンダウンして戦争責任について書く書物にすら時代は変わったなと最近感じていただけに。

  • [ 内容 ]
    戦争責任ははたして軍部だけにあったのか?
    天皇と側近たちの「国体護持」のシナリオとは何であったか?
    近年、社会的反響を呼んだ「昭和天皇独白録」を徹底的に検証し、また東京裁判・国際検察局の尋問調書など膨大な史料を調査・検討した著者は、水面下で錯綜しつつ展開された、終戦工作の全容を初めて浮き彫りにする。

    [ 目次 ]
    序 「天皇独白録」とは何か
    1 太平洋戦争時の宮中グループ
    2 近衛の戦後構想
    3 宮中の対GHQ工作
    4 「天皇独白録」の成立事情
    5 天皇は何を語ったか
    6 東京裁判尋問調書を読む
    7 行動原理としての「国体護持」
    結 再び戦争責任を考える

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    [ 参考となる書評 ]

  • 4004302579 246p 1992・12・21 1刷

  • 昭和天皇は立憲君主だったのか、政治的指導者であったのか。多くの史料を積み重ねてあり歴史認識を問い直す。

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著者プロフィール

*同名著者あり
1.吉田裕(よしだ ゆたか)
1954年生まれのの研究者。専攻は日本近代軍事史、日本近現代政治史。一橋大学名誉教授。同時代史学会代表。
2018年、『日本軍兵士-アジア・太平洋戦争の現実』でアジア・太平洋賞特別賞、2019年同作で新書大賞2019大賞をそれぞれ受賞。

2. 吉田裕(よしだ ひろし)
1949年生まれの研究者。専攻はフランス文学、日本文学。早稲田大学法学学術院教授。1972年早稲田大学第一文学部仏文科卒、同大学院博士課程中退、早大文学部助手、同法学部助教授、教授。

3. 吉田裕(よしだ ゆたか)
2018年1月現在西日本旅客鉄道株式会社安全研究所 主席研究員(主席)

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