警察の社会史 (岩波新書)

著者 :
  • 岩波書店
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レビュー : 10
  • Amazon.co.jp ・本 (230ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004302711

作品紹介・あらすじ

日露戦争直後、東京市の警察署の八割が襲撃される日比谷焼打事件がおきた。だがわずか十数年後、関東大震災では「自警団」が登場し、民衆はすすんで「治安」に協力する。この変化は何を意味するのか。「民衆の警察化」が典型的に押し進められた大正デモクラシー時期を中心に、社会生活のすみずみにまで及んだ「行政警察」の全体像を解明する。

感想・レビュー・書評

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  • 1993年刊行。著者は東京都立商科短期大学教授。日比谷焼打ち事件においては民衆の怨嗟の対象となり、派出所などが焼打ちにあった警察。本書は、その警察の民衆への浸食を、建前とその存立基盤との乖離を描写しつつ、関東大震災後までの経緯を論じていく。本書の意味は、警察が発行している文書(例えば、「警察叢書」(埼玉県警察署の銘)、「警視庁令・各種規則」「警視庁編大正大震火災志」外)に基づいて叙述する点。また、司法警察面ではなく、行政・衛生・民事司法に警察が関わるという、現在とは少々乖離した実態が開陳される点だ。
    後者は身体拘束に影響力を行使できる官憲に情報集約される実相が垣間見れ、建前で標榜される「警察の民衆化」とのスローガンが、末端警察官の反体制派化の抑止の方法論と完全に乖離している状況も明快に。なお、本書の感想とは離れるが、本書のような戦前の文献を丹念に渉猟・集積し、裏面を解読していく作業は、立花隆著「日本共産党の研究」など、ジャーナリストにかつて広く見られた手法。本書のテーマこそジャーナリストが良くなしうるところだが、昨今の現状では見受けられず。気骨と力量を備えたジャーナリストはいないのかな…。
    本書で残念なのは、戦後直後や現代(刊行当時でいいが)と彼の時代との制度上の比較が余りない点。一覧表にでもしてくれたら実に意義深いのだが

  • 【つぶやきブックレビュー】懲りもせず駄洒落で何の日。110。・・・

  • 新書文庫

  • なるほど日本の法体系も大陸型であるのに欧米系に
    するのは無理があるのでは?

    警察→民衆の警察化
    →天皇の警察

  • 日本の警察の2つの大きな事件として
    1905年、日比谷焼き討ち事件
    1926年,長野県警廃事件
    を紹介している。

    行政警察の今の制度になるまでの紆余曲折の説明がある。

  • 近代警察のお仕事入門書。引用にもあるように、元々警察行政は風俗を幅広くかつ細部まで取り締まるものだったということを具体的に説明。その後時代の変化に対応しどのように民衆に接近していったのかを追う。
    原敬内務時代の警視庁大改革が気になるぞ。

  • [ 内容 ]
    日露戦争直後、東京市の警察署の八割が襲撃される日比谷焼打事件がおきた。
    だがわずか十数年後、関東大震災では「自警団」が登場し、民衆はすすんで「治安」に協力する。
    この変化は何を意味するのか。
    「民衆の警察化」が典型的に押し進められた大正デモクラシー時期を中心に、社会生活のすみずみにまで及んだ「行政警察」の全体像を解明する。

    [ 目次 ]
    序章 警察廃止をめぐる2つの事件
    1 行政警察の論理と領域
    2 変動する警察
    3 「警察の民衆化」と「民衆の警察化」
    4 「国民警察」のゆくえ
    終章 戦後警察への軌跡

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    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • p.21

    明治19年7月 地方官官制における警察の所管事項

    1.諸営業、市場、会社、製造所、度量衡、教会、講社、説教、拝礼に関する事項
    2.演芸、遊覧場、遊技場、有憩場、徽章、祭典、葬儀、賭博、富籤、その他風俗に関する事項
    3.船舶、堤防、河岸地、道路、橋梁、渡船場、鉄道、電信、公園、車馬、諸建築、田野、漁猟、採藻に関する事項
    4.人命痍傷、群衆喧騒、鉄砲、火薬、爆発物、発火物、刀剣、水災、火災、難破船、遺流失物、埋蔵物に関する事項
    5.伝染病予防、消毒、検疫、種痘・・・

    ・・・(続く)

  • 大正期の警察のあり方の変遷をたどる一冊。日露戦争期までは対政党の色合いの濃かった警察が、社会運動の高まり(と政党の国家への接近)とともに、社会運動対策としての色合いを強めていく、と分析する。同時にデモクラシー状況のなかで、「警察の民衆化」的方向と、「民衆の警察化」的方向(=自警団)が登場するが、社会運動の高揚は警察の国民抑圧的な方向を強め、さらに戦時体制のなかで「天皇の警察」としてアイデンティファイされながら「その権限を極限にまで膨張させ、自立した社会空間を呑み込んでい」(p218)ったそうだ(同時に、国民も警察の警備体制のなかに組み込まれる=相互監視体制)。

    1923年の関東大震災のときに自警団が生まれたという話は興味深い。国家による暴力の独占が、この段階ではまだ完全に確立していなかったのだろうか。さらに、この話を読むと、終戦直後にできた自警団のことを想起してしまう。「自警団」が発生する状況としては似てるのだろうか。ただそうだとすると、終戦直後の自警団が侠客やらのアウトローな人々に担われていたことを考えると(『兵庫県警察史』にたしかそういうことが書いてあった)、関東大震災後の「自警団」も、そういうアウトローな連中が実際に担っていた、とうことはないかなあ、と思った。ただ、この本では関東大震災後の「自警団」の結成主体については、関東大震災以前の警察によって推進された地域での自警的なコミュニティである、という程度にしか触れられていない。実際にどんな人が担っていたか、という点は(史料的に非常に難しいのだろうけど)課題として残っているのだろう、と思う。

    阪神大震災のときは、こういう「自警団」の登場はほとんどなかったように思う(僕が知る限りだけど)。地域コミュニティによる助け合いはあったかもしれないが、自分の生命財産を守るために武装する、という話は聞いたことがない。この点から、戦後から60年で、暴力の国家による独占はより進んだ、という風に考えられるのかもしれない。その暴力の独占が、どのように進んだのか、という点はすごく興味がある。

  • 大正デモクラシー期を中心に警察と民衆との関係がどう推移していったのかを辿っていった本。

    この本では主に「行政警察」が扱われ、特高はメインではないが、当時の警察の業務の概観が分かる上、それが民衆や政治にどう影響を及ぼしていったのかが分かる。特にイメージ向上のための宣伝方法などは現代に通じるものがあり、今日の警察を考える上ででも良い参考になる。

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著者プロフィール

1950年、長野県に生まれる 1973年、早稲田大学第一文学部卒業 1978年 早稲田大学大学院文学研究科博士課程修了 現在、早稲田大学文学学術院教授、博士(文学) ※2016年10月現在【主要編著書】『自由民権運動と立憲改進党』(早稲田大学出版部、1991年) 『近代日本の警察と地域社会』(筑摩書房、2000年)『自由民権期の社会』(敬文舎、2012年)、『維新政府の密偵たち』(吉川弘文館、2013年)

「2016年 『「主権国家」成立の内と外』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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