日本の対外構想: 冷戦後のビジョンを書く (岩波新書 新赤版 285)

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  • Amazon.co.jp ・本 (244ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004302858

作品紹介・あらすじ

国際環境が激変した今、経済大国・日本には、新しい能動的な対外構想が求められている。米国、ロシア、中国やアジア諸国とどうつき合っていくべきか。経済協力・援助や国際貢献、また国連に占める位置をどう考えるか。平和と共存をめざす「グローバル・シビリアン・パワー」の国家像を大胆に提起し、そのための条件を具体的に示す。石橋湛山賞受賞論文を含む鮮明な青写真。

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  • 1993年刊(初出90~93年)。バブル期、同崩壊直後の論考で、中国の①中華帝国への憧憬、②経済力強化・発展の見通し、③漢民族優越主義への甘さ、米国の①石油支配への強固な意思、②反面の環境問題の軽視、③国際政治の主導権維持・確保への固執を甘く見すぎているので、途中で止めようかとも思う内容。「同盟漂流」「ザ・ペニンシュラクェスチョン」の如き、取材の厚みへの期待は外れた。とはいえ①ASEAN参加を仏が希望(仏の海外県ニューカレドニアの存在)した点と、対日を意図し仏がベトナムへ旧宗主国としてコミットし始めた点。
    ②東南アジア諸国の日本政府への厳しい眼差しや、言動への信頼感の欠如は戦後も引き続いている事実、③湾岸戦争時の日本の対米印象として、中東不安定への懸念は石油を使い過ぎる米国固有の問題で、戦争をしてくれと日本が米に頼んだ覚えはなく、その国際行動の決定に日本を排除しながら、金だけタダ乗りするのかという不満があった点。と、それなりに面白い部分もあった。加え、日本に能動的外交が欠如している点は、先の「国際マグロ裁判」の内容と併せてみれば、さもありなんと思う指摘。

  • ▼日本外交史特殊問題の参考文献として通読。テーマは船橋氏提唱の「グローバル・シビリアン・パワー」をつかむこと。
    ▼面白いな、と思ったのは、戦後日本と(西)ドイツをシビリアン・パワーのアクターとして例示しながらも対比しているところ。地域主義に根差したシビリアン・パワーであるドイツに対して、日本は「グローバルな」シビリアン・パワーにならなければならない(なっていくべきだ)、とのことであった。ヘンにEUの制度を日本に移植すればいいとか、薄っぺらい「東アジアの一員」といった主張をするより、よっぽど説得力がある(気がする)。
    ▼結局、日米の関係は切れない(その利害調整をよりグルーバルな視点からすればいいだけの話だ)し、韓国や豪州といった米国のパートナーとも協調しつつ、多角的な安全保障体制を築いていく――それ自体、非常にスマートな指摘であったと思う。
    ▼もっとも、戦後の日本の成功を肯定すればするほど米国の存在が重いものとなり、その関係を重視しようとすれば、地域で(単独の)リーダーシップをとることは難しくなる、というジレンマは、日本にとって今後も最大の悩みであり続けるのかもしれない。

  • 2冊

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著者プロフィール

一般財団法人アジア・パシフィック・イニシアティブ理事長。1944年北京生まれ。法学博士。東京大学教養学部卒業後、朝日新聞社入社。同社北京特派員、ワシントン特派員、アメリカ総局長等を経て、2007年から2010年12月まで朝日新聞社主筆。2011年9月に独立系シンクタンク「日本再建イニシアティブ」(RJIF)設立。福島第一原発事故を独自に検証する「福島原発事故独立検証委員会(民間事故調)」を設立。『カウントダウン・メルトダウン』(文藝春秋)では大宅壮一ノンフィクション賞受賞。

「2021年 『こども地政学 なぜ地政学が必要なのかがわかる本』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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