武家と天皇: 王権をめぐる相剋 (岩波新書 新赤版 286)

著者 :
  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (249ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004302865

作品紹介・あらすじ

最強の武権政府=江戸幕府はなぜ天皇制を廃止しなかったのか?秀吉から家康にいたる統一政権成立期の朝幕関係を克明にあとづけるなかに、ダイナミックな歴史像と様々な興味深い論点が浮かび上がる。足利義満の皇位簒奪計画の解明からはじまって、「天皇制はなぜ続いたのか」という課題に挑んできた著者の集大成がここに示される。

感想・レビュー・書評

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  • 要するに軍事政権である武士たちが天皇(朝廷)を撲滅しなかった理由を知りたくて入手。

    武士たちにとって、統治の正統性の”お墨付き”を得るために天皇(朝廷)の存在が何かと便利であったようだと私は解釈した。なんとなくわかった気分になれたので、第1章だけを読んで終了。

    機会があれば、高木昭作『将軍権力と天皇』も読んでみたい。

  • 天皇制はなぜ続いているのか? 一読した限りでは、国内の政治動向からはなくなる力はうまれない。世継ぎ問題が大きく関わるか。

  • 秀吉も家康も、賎ヶ岳や関ヶ原で勝利したら、天下が転がり込んできたのではなく、群雄割拠は続いており、一歩間違えれば、信長が死んだ時のように、戦国の世に戻ってしまうリスクが潜んでおり、天皇の権威や官位をうまく取り込んで、実に慎重に、将棋を指すように少しずつリスクを排除して安定政権を築いて行った事実が、自分には新鮮だった。

  • 1993年刊。やや古い書で止むを得ないかもしれないが、結局、中世の天皇論は政治史との関連(義満による簒奪?と戦国時代・織豊時代における抗争者の権威付け目的の天皇制度の利用)、近世は宗教(紫衣事件)との関連でしか論じない。一部、後水尾天皇の譲位問題を丁寧に検討するが、事件の社会的影響には疑問符がつき、極めて矮小な事案。本書は種々論じるが、結局足利義満だけが日本史上の例外であったことを明示するに過ぎない感。個人的には、中世、特に足利義満期から織豊政権までの、天皇と宗教との関係・影響力を論じたものを読みたい。
    なお、著者の秀吉論、つまり彼の天皇の利用目的(家康の武力での屈服に失敗(小牧長久手の戦の敗戦)により短期的には天皇・律令制度の支配構造を利用し東国支配を正当化せざるを得ず、家康・氏政・政宗らを屈服された後も支配の正当化原理を変更するわけにはいかなかった)、さらには天皇を正当性の淵源とする豊臣平和令の解釈は、藤木久志氏とは異質な、中世法制史との異同を踏まえたもので興味深い。著者は横浜市立大学文理学部教授。

  • 日本史の概略を知っている欧米人の中には日本の「皇帝」の特徴を詳しく知りたがる人がいる。

  • 書名の通り、武士と天皇の関係性についての考察です。

    武士という存在が歴史の表舞台に登場するようになって以降、影の薄くなってしまった天皇ですが、その存在は消滅することなく、現在も続いています。

    なぜ、天皇は存続できたのか?
    なぜ、誰も天皇になり替わろうとしなかった(できなかった)のか?

    それらの疑問に対する筆者なりの答えが本書になります。

    やや古めかつ固めではありますが、上記のような疑問を持つ方にはおすすめしたい本です。

  • 中世~近世における武家と天皇という、二大勢力の関係性についての論考。対立したり融和したり利用したり裏をかいたりと、双方微妙な関係が様々に解説されるが、文章がちと難解。

  • 著者は天皇権威のメカニズムを明らかにする過程で,秀吉が将軍になれなかったわけについても触れている。秀吉は源氏の流れを汲まないから,という俗説は否定され,真の理由が明らかにされる。歴史ファンは必読である。

  • 戦国の武家王者と天皇との関係について、記したもの。
    足利時代に武家が先導、戦国時代に天皇側にゆるやかに戻り、正親町〜後水尾での相克を丁寧に記す。

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著者プロフィール

今谷 明(いまたに・あきら)
1942年京都生まれ。京都大学大学院文学研究科博士課程単位取得。文学博士。日本中世史専攻。横浜市立大学教授、国際日本文化研究センター教授を経て都留文科大学学長、現在、国際日本文化研究センター名誉教授。主著『室町の王権』(中公新書)、『武家と天皇』(岩波新書)、『象徴天皇の源流』(新人物往来社)、『近江から日本史を読み直す』(講談社現代新書)、『戦国期の室町幕府』(講談社学術文庫)、『日本中世の謎に挑む』(NTT出版)、『象徴天皇の発見』(文春新書)ほか多数。

「2019年 『文庫 中世奇人列伝』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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