都市計画: 利権の構図を超えて (岩波新書 新赤版 294)

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  • Amazon.co.jp ・本 (244ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004302940

感想・レビュー・書評

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  • 弁護士とジャーナリストによる共著。
    全国総合開発計画や用途地域に代表される日本の都市計画諸制度は、官政財の癒着構造の中、都市の成長管理のためではなく、大企業のための錬金術として生み出され、その結果、周辺環境をまったく無視した開発や地価高騰を招き、それまでに育まれてきた日本の歴史的街並み、豊かな自然やそこに暮らす市民の生活の破壊をもたらした。そんな中、真鶴市や白馬村のように、地方自治体や市民が自分たちの生活環境に対する誇りと強い危機感をもって、独自のまちづくり政策を打ち出し、国や外部資本に抵抗している事例にもスポットをあて、今後の全国での動きに発展することへの期待感を示している。
    1993年7月発行で、情報更新されていないのがおしまれる。

  • 研究の方向性が「まちづくり」方面で固まってきた一方、
    きちんと「都市計画」制度の課題みたいな話も勉強しておかなきゃということで購入したもの。

    都市計画の制度や考え方を教科書的に述べたものではないので、
    タイトルと少しズレを感じるかもしれません。

    実際の内容は、日本の都市計画制度がいかに緩く理不尽なものかということ、
    政官財の利権(鉄のトライアングル)のために利用されていたかということが解説されています。
    そして、都市計画を真に市民のものにするためには、というところで結ばれています。

    著者はこの「鉄のトライアングル」をかなり目の仇にしている感があり、本文を読み終える頃には政治不信の症状が出ることうけあいですが、
    (研究室のボス曰く)日本のセンスの悪い都市計画制度を思うと、なるほどなと言わざるをえないところもしばしば。

    基本的な日本の都市計画ツールは、
    「用途分けのための大まかな色塗り」と「必要以上かつフレキシブルな容積規制」で成り立っているので、
    住宅街にある日背の高い建物ができることもあり得るし、住んでいる地域の用途が変更されるということもありうる。

    決定手続きに関しても議会すら通さないきわめて不透明な「審議会」で行われるので、
    市民が都市計画に接する機会は奪われてきたのは事実。

    都市計画制度の課題に関してはその程度の基礎知識でしたが、
    本書を読むとその経緯や、政治上の綱引きについても知ることができました。



    少し強めの論調ですが、長く手元に置いておきたい本かなと思います。

  • 現在に問題を指摘し、その原因を説明したのち、どうすべきか主張している。都市計画の基本的なことがわかると思う。容積率、建ぺい率の話、都市計画行政の歴史、背景

  • 日本の政府が、特に自民党が、いかに腐っているかがひたすら書いてある。ただし1993年の本なので、もしかしたら今はそうでもないのかもしれない。都市計画の建築的な面で書かれた本だと勘違いしてたのでびっくりした。2000年以降にも同じ著者が本を出しているようなので、新たな情報が欲しい。

  • 弁護士と新聞社勤務の2人の記述。
    現象を追いかけている。
    法律について記述している。
    経済基盤にまで言及していない。

    どんな制度も政治的な取引だけから生じる訳ではない。
    経済的な要因が,民の側だけでなく、官の側にもあると仮定するとよい。

    ある事業を実施するのに、官にお金がなければ、民が実施するように誘導する。
    現象だけ捉えていると、本質的なところが抜けてしまうかもしれない。

    全体に貴重な情報を提供している。
    個人,官の経済的な要因を洗い出すといいかも。

    国の施策の多くは、土建業界と、シンクタンクの発案であるらしい。
    もっと、広く都市計画を募集すればよいのではないだろうか。

    実情紹介は有益だが、打開策はどうなのだろう。
    利権の構図を超えるのだから、新しい絵を提案するのではないのだろうか。

  • 日本がいかに「開発」で動かされてきたかということがわかる一冊でした。

  • 出版社/著者からの内容紹介
    住宅地に突然高いビルが建った.続いておこる日照の悪化,地価の高騰,住民の流出…….町の破壊は日々「合法的」に繰り返されている.都市計画のカラクリをときほぐすなかから見えてくる政官財癒着の構図,それに対する自治体の「反乱」を描き,町を市民の手に取り戻すための方策を示した本書は,日本社会の改造を迫る最も鋭い刃となろう.


    内容(「BOOK」データベースより)
    住宅地に突然高いビルが建った。続いておこる日照の悪化、地価の高騰、住民の流出…。町の破壊は日々「合法的」に繰り返されている。都市計画のカラクリをときほぐすなかから見えてくる政官財癒着の構図、それに対する自治体の「反乱」を描き、町を市民の手に取り戻すための方策を示した本書は、日本社会の改造を迫る最も鋭い刃となろう。

    目次
    序章 すすむ町や自然の破壊
    第1章 都市計画のしくみ
    第2章 アメリカの都市計画
    第3章 総合開発計画と都市
    第4章 都市、政治、そして法律
    第5章 都市と政官財複合体
    第6章 自治体の反乱
    第7章 都市計画を市民の手に

  • 都市計画シリーズ。

  • 分類=行政。93年8月。

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著者プロフィール

五十嵐敬喜:1944 年山形県生まれ。法政大学名誉教授、日本景観学会前会長、弁護士、元内閣官房参与。「美しい都市」をキーワードに、住民本位の都市計画のありかたを提唱。神奈川県真鶴町の「美の条例」制定など、全国の自治体や住民運動を支援する。著書に『世界遺産ユネスコ精神 平泉・鎌倉・四国遍路』(編著、公人の友社)など。

「2022年 『世界遺産の50年』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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