短歌をよむ (岩波新書 新赤版 304)

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  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004303046

感想・レビュー・書評

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  • 以下引用。

     短歌にするということは、非常に主観的な感情を、一度客観の網にくぐらせるということである。(p.9)

     長編小説にはならなくても、確かに私たちの心を揺さぶってくれる小さな感動が、日常の中にはある。そういったミニサイズの感動にまで、伸縮自在に対応できるのが、短歌なのだ。(p.10)

     以前、詩人の谷川俊太郎さんにお目にかかったとき、こんなことを言われた。
     「あなたは、現代詩の敵です」
     やさしい表情からこぼれた厳しい言葉に、私は一瞬、きょとん。
     「いかにして定形から自由になるか、新しい表現の形をつくりあげるか、ということを、現代詩は試みてきました。伝統的な定形を否定するところから、ぼくらは出発しているのです。だから、あなたは敵です」(p.14~15)

     「この時代、歌は耳から入ってくるものでした。枕詞が生まれた背景には、そのことが深く関わっています。つまり『たらーちねーのォ』ときたら、聞いているほうは『おっ、次には母がくるな』と心を構える。『あしーびきーのォ』と読まれるあいだに、頭のなかで山を思い描く。歌を受けとる側に、そんな時間を与える働きが、枕詞にはあったのです」(p.56)

     「比喩が安易でないか」「言い古された表現ではないか」「背伸びして難しい言葉をつかっていないか」「感動のモトがちゃんと伝わっているか(嬉しい、を百回くりかえしても、なぜ嬉しいのかは伝わらない)」「リズムがぎくしゃくしていないか」「もっとクローズアップできないか、あるいは、もう少し距離をおいたほうがよくないか」「自分らしくない言葉遣いをしていないか」「隠していることはないか」「カッコつけていないか」……などなど、次第に自分なりの基準ができてくる。そうすると、推敲の余地はいくらでも生まれてくる。(p.102~103)

     「心か言葉か」このキーワードを持って『歌よみに与ふる書』を読んでいくと、時には小言めき、時にはヒステリックな文章が、実にスッキリ見えてくる。なんだか難しいことが書いてあるなあと思ったら、すぐにこのキーワードを出すとよい。(p.228)

  • インターネットでは古文要る要らない論争が繰り広げられているなか実際に古文を勉強していたことによるメリットが第一章を読んでいる時に初めて発揮されたなと思った、という蛇足はさておき、アッと思ったことをメモするだとか、それをできれば57577の型にそって書いておくだとか、短歌読むのは楽しいけど、詠むのはな、難しいだろうと思っている自分にはとてもハードルの低いところからの提案がされてて、さらにその後の推敲の作業においての詳しいやり方も興味深く、二章が特に面白かった。

    (あとそれと、万智さんは20歳の時に短歌を読み始めたと言うことだが、他の歌人でも20歳からですという話をたまに目をするし実際私も20歳であり、別に年齢関係ないしどうでもいいんだけど、なんか うれしかった)

  • 短歌入門編として良い本だと思ったけど、紹介されている短歌が自分的には割と難しくて、俵万智先生の解説を読んで「ほ〜そういう歌なのか」と思うものが大半だった。ひとつひとつイマジネーションをもっと働かせて読まないといけないんだろうな。なんか小説読む感じでさーっと読むからダメなんだろうなと思った。もっといろんな短歌を読んでみたい。
    あと短歌を読めば読むほど新鮮な感覚が失われていくという話がなかなかしんどかった。職としてやるには辛いものがある。短歌に限らず、何かに一生懸命取り組むことがしっかり生きることと言えるだろうなあと身が引き締まる思いだった。


  • 「短歌をよむ」俵万智著、岩波新書、1993.10.20
    244p ¥580 C0292 (2023.08.05読了)(2003.09.06購入)

    【目次】
    はじめに
    1 短歌を読む
    大きな感動から小さな感動まで
    リズムに首ったけ
    響きを味わう
    恋の歌いろいろ
    枕詞の謎
    序詞はおもしろい
    お得な本歌取り
    題詠はツマラナイか
    2 短歌を詠む
    心の「揺れ」をつかまえて
    次のステップ
    「選」で勉強
    推敲は「でこぼこ」との戦い
    俳句の世界をかいまみる
    連作マジック
    さまざまな試み
    3 短歌を考える
    歌の別れ―青春のあとにくるもの
    現代短歌の五人
    「素人の時代」再考
    あとがき

    ☆関連図書(既読)
    「サラダ記念日」俵万智著、河出書房新社、1987.05.08
    「ふるさとの風の中には」俵万智著・内山英明写真、河出書房新社、1992.11.30
    「恋する伊勢物語」俵万智著、ちくま文庫、1995.09.21
    「三十一文字のパレット」俵万智著、中公文庫、1998.04.18
    「記憶の色 三十一文字のパレット2」俵万智著、中公文庫、2003.04.25
    「花咲くうた 三十一文字のパレット3」俵万智著、中公文庫、2009.03.25
    「ある日、カルカッタ」俵万智著、新潮文庫、2004.03.01
    「トリアングル」俵万智著、中央公論新社、2004.05.25
    「かーかん、はあい」俵万智著、朝日文庫、2012.05.30
    「みだれ髪 チョコレート語訳」与謝野晶子著・俵万智訳、河出書房新社、1998.07.06
    「みだれ髪Ⅱ チョコレート語訳」与謝野晶子著・俵万智訳、河出書房新社、1998.10.09
    「家族の歌」河野裕子・永田和宏・その家族著、産経新聞出版、2011.02.13
    「歌に私は泣くだらう」永田和宏著、新潮文庫、2015.01.01
    (「BOOK」データベースより)amazon
    多くの人の心にさわやかな風を送りつづける俵万智が贈る清新な短歌論。古典和歌から現代短歌まで、千年を越える伝統をもつ豊かな世界を「読む」愉しさとは?心のゆらぎを感じてから短歌に「詠む」までのプロセスは?二つの「よむ」行為を通じて、自分自身を見つめ直し、現代短歌の課題をさぐり、第三歌集に向けての新たな飛躍を試みる。

  • 2023.6.30-8.18.

    自分の中でたまーに短歌を詠みたいという周期がやってくることがある。言葉遊びも好きだ。だから、とても興味深く読み進めることが出来たし、たかが31文字、されど31文字なのだなぁと。自分のなかに湧き出る目に見えない感情を、31文字前後という制限の中でどうやって表現するのか。試行錯誤。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/705209

  • 著者の推敲過程が書かれてあって、実際にどうやって短歌が出来上がるのかが実感出来た。
    デビューしながら、短歌をやめた歌人の背景も興味深い。人生にとって短歌がどのような意味を持つのか、歌人であり続けることの難しさが分かるような気がした。

  • わかりやすいし、面白い。
    「懸命に歌いつづけようとすることは、懸命に生きようということだ。」

  • 短歌についてよく分かっていなかった私にぴったりの本でした。
    (それこそ「サラダ記念日」くらいしか知らない状態です。)

    内容は、短歌の概観と作者自身の経験をまとめたものになっています。
    「この短歌はこうやって生まれた」という具体例もいっぱいあって、驚くことが多いです。

    短歌を詠んでみようかなと思っている人にとって、背中を押してくれる一冊になるでしょうし、そうでない私のような人にとっては、ちょっとだけ短歌の見え方を変えてくれる一冊になります。

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著者プロフィール

1987年の第1歌集《サラダ記念日》はベストセラー。歌集に《かぜのてのひら》《チョコレート革命》《プーさんの鼻》《オレがマリオ》《未来のサイズ》《アボカドの種》、評伝《牧水の恋》、エッセイ《青の国、うたの国》など。2022年、短歌の裾野を広げた功績から朝日賞を受賞。読売歌壇選者のほか、宮崎で毎年開催される高校生の「牧水・短歌甲子園」審査員もつとめる。

「2023年 『旅の人、島の人』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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