日本の近代建築〈上 幕末・明治篇〉 (岩波新書)

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レビュー : 21
  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004303084

作品紹介・あらすじ

開国とともに西洋館がやってきた。地球を東回りにアジアを経て長崎・神戸・横浜へ。西回りにアメリカを経て北海道へ。こうして日本の近代建築は始まり、明治政府の近代化政策とともに数多くの作品が造られてゆく。上巻では、幕末・居留地の西洋館から和洋折衷の洋館、御雇建築家による本格建築を経て、日本人建築家が誕生するまでを描く。

感想・レビュー・書評

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  • ずいぶん前に下巻を先に読んだ。
    上巻も気になってはいたけど、この度、やっと入手できた。

    明治初期の、西洋建築が導入された時期から、辰野金吾ら、日本の建築家の第一世代が生み出される明治三十年代までが扱われている。
    コロニアル様式の伝播(右回りルートと、左回りと)の問題や、疑洋風のデザインのことは面白かった。

    それから、この時期に日本に渡ってきた西洋人の建築家がどんな人たちだったかも面白い。
    富岡製糸場を手掛けたバスチャン、銀座煉瓦街を作ったウォールトスらは、「冒険技術者」とされていた。
    世界を渡り歩き、専門家のいない土地で、建物の設計だけでなく土木工事も、治水事業、都市計画、建材の開発などなど、何でも手掛けた人たち。
    やがて日本のような新開地でもお払い箱になってしまい、新たな街に活路を求めて移っていく人たち。
    建築の向こうに人が見えると、やはり面白くなってくる。

    名前をよく聞くコンドルについても、いろいろなことを知ることができた。
    コンドルの功績は鹿鳴館のような建物を作っただけではなく、日本に建築科を育てるための教育を体系立てたという。
    日本の芸術に傾倒し、永住までしたこの人が、作品の遍歴を見ていくと、特に晩期に様式の混迷が見られるという。
    異文化に生きた人の足跡が伝わってくる話だと思った。

    札幌時計台のあの木の板を横に張り渡して作った壁を、下見板というそうだ。
    そんなことも、この本で知った。
    あれはアメリカから、簡単な方法で建てられる寒冷地にも耐えられる工法だそうだ。
    だから学校建築や、北海道の洋館などに使われたという。
    あの素朴な感じにわけもなく惹かれる。
    なんか懐かしい感じがする。

  • 明治から第二次世界大戦終戦までの間の日本の近代建築を12群38派に分類し、その来歴、特徴、影響などを解説している。

    日本の近代建築を網羅的に、且つこれだけ細かく分類し、わかりやすく整理した本はないのではないかと思う。

    ヨーロッパで生まれた様々な様式が地球を東回りと西回りで地球を回り、明治の初期に、ちょうど裏側の日本で合流し、多様な建築が混在する特異な建築文化を作ったという点が、非常に興味深かった。

    明治の初期というのは、官による文明開化の動きによってつくられた公共建築だけでなく、大工や職人が海外の様式を見よう見まねで勉強して作り上げた学校や役場などもあるという点も、当時の息吹を感じられる話で面白い。

    上巻は主に江戸末期から明治中期までの話。下巻が明治末期から大正・昭和の内容をまとめている。

  • 建物という構造物とそれについての事実を平明に語りながら、人間と時代が立ち上がってくる、下手な歴史小説よりもよほど素晴らしくわくわくさせてくれる本。幕末、日本みたいな辺鄙な地で「建築家」として活躍していた外人は、うっすら思ってはいたけどやはりアカデミックな建築家というより、冒険家であり山師であって、彼らの作った洋風建築は結構でたらめだったんだなーとか(だから明治初期の文明開化の興奮が落ち着くと、日本の偉い人たちは彼らが造った建築が何か変だぞと気づいてしまうあたりがおかしい)。コンドルが晩年に手がけた岩崎久弥邸を詳細に見ることでコンドル先生の人となりが伝わってくるとか。ベックマンとエンデによる官庁集中計画の壮大さとか。辰野金吾(国会議事堂の戦いがすさまじい)、片山東熊(迎賓館のエピソードがおかしくも哀しい)、妻木頼黄(ドイツ派。辰野との闘争エピソードが面白い)、彼らの章についてエピローグで明治国家とのかかわりが語られる。司馬遼太郎の本のようにグッと来る。

  • 特に建築を専門的に学んだわけでもない一般読者が日本の近代建築史を俯瞰し知るうえで非常にわかりやすい一冊だ。
    日本の洋館に見られる「ヴェランダ」と「下見板張り」は世界のどこからどういったルートで日本に伝達したのか、という興味深い話から、文明開化の混沌の中で生まれた建築と建築家もどきの話、コンドル以前のお雇い外国人とコンドルの違い、辰野金吾をはじめとする日本の建築家たちが「イギリス派」「ドイツ派」「フランス派」に大別できるという話・・・。

    建築が好きで、いろいろ見たり聞きかじったりしてなんとなく知っている人名はあれど、こうやって体系だって読むと「そうだったのか!」という目からうろこがぼろぼろあって興味深かった。
    読み応えあり。

  • とても勉強になる。

  • 【読書メモ】

    絵や小説が孤高の中でも生まれるのとは事情がちがう。建築とは、政治、経済、社会、文化といった何でも呑み込むバケツのような表現領域なのである。建築は時代をそのまま体現する。

    教育を通してコンドルが日本の学生に伝えようとした一番深いところは、建築の本質についてで、彼はそれを”美”と考えていた。そしてその美は、ゴシックとかクラシックとかいう歴史的な建築様式の中にあると考えていた。それを製図版の上で生み出すことのできる者をアーキテクトというのである。

  • 日本の洋風建築のルーツが分かりやすく語られている。一つ一つのデザインに、はるばる極東の地までようこそ、と言いたくなる。そしてエネルギッシュな日本人&お雇い外国人たちの奮闘ぶりも面白い。

  • 幕末から明治時代における近代建築の流れを追った一冊。欧化主義の頃のお話です。
    冒頭では西洋の構法が幾つかの経路を渡り土着の文化と融合しながら日本に根付いていく様が描かれています。
    そこから渡航してきた技術者たちによる工場建築や、棟梁たちによる擬洋風建築が隆盛をみせますが、いずれも建築家であるお雇い外国人による本格的な西洋建築あるいは和様折衷建築の出現の下に立ち消えていきました。
    最後は工部大学校で外国人建築家に師事した者達のそれぞれの派閥と生み出した建築に触れることで上巻は締め括られています。

    新書とはいえある程度造作についての語彙がないと読み進めづらいかもしれないと思いました。
    紹介される建築は多くが図説とともに載せられているので分かりやすいと思います。章ごとに建築名や様式、構法をまとめた年表もあるので便利です。

  • 日本近代建築の幕開け

    明治期、西洋化へ邁進する日本の指名の一つに近代建築の整備があった。
    特に宮家関係は逸早く対応したらしい。少し意外。
    お雇い建築家(土木技師)らによるヴェランダコロニアルと下見板コロニアル。
    そして、不思議な独自和洋折半を経て、ボアンヴィル、コンドルへと変遷していく。
    このコンドル氏は正統派の技術をもたらしただけではなく、後継者らの育成にも力を入れ、やがてイギリス式が日本の建築界を席巻していく。
    それらと同時期、ドイツ派やフランス派も風靡したが、やはり後継者の存在は大きい。
    自分だけがすばらしい技術を持っていても、いつかは居なくなる。
    自らの立身に使命を遂すか、流派を残していくことに身命を賭けるか。
    そのような観点から見るのも面白い。

    そういえば、日本の建築は目的により様式が決まるのに対し、西洋建築は様式により表現したいことを決めるのだね。
    言われてみると、確かに。

  • 写真は少ないですが、建物の様式や技法、建築家の系図などが書かれていて、見て回るだけの洋館巡りから、もう一歩踏み込みたい人向けの本です。

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