日本の近代建築〈下 大正・昭和篇〉 (岩波新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (285ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004303091

作品紹介・あらすじ

明治の時代とともに展開した近代建築も、大正に入ると大きな転機を迎える。第二世代が登場し、彼らは建築とは何かを内省し、社会性、技術の表現、実用性などのテーマを発見する。新しい感性に目覚めアールヌーヴォーを手がける。昭和に入ると、モダニズムの影響のもとに第三世代が花開き、ファシズムの洗礼を経て、その流れはいまに続く。

感想・レビュー・書評

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  • 江戸末期から始まる日本の近代建築史の後半。明治末から第二次世界大戦までの期間を扱っている。

    上巻では日本に西欧の建築がどのように入ってきたかということが主眼であったのに対して、下巻は、日本で教育を受けた建築家が実作をつくり、西欧の建築の潮流とほぼ時期を同じくしながら発展している様子が描かれている点が大きく異なる。

    その背景には、日本の近代建築教育制度が離陸し、建築家がプロフェッションとしてもある程度確立し始めたからという理由もあるであろうが、それだけでなく、建築自体が歴史主義や気候風土といったもの以外に、機能、経済、幾何学的構成の美学といったものによって計画される近代建築の特徴も寄与したのではないかと感じた。

    こういった必ずしも地理的、歴史的要因に紐づけられない要素を背景にする建築が登場した時に、日本の建築家も努力すれば西欧の最先端と同じ土俵で競うことができる環境が整ったということなのではないかと思う。

    また、建物をつくるということだけでなく、日本の都市計画や建築法規、さらには住宅供給制度などの起原を作った「社会政策派」の登場に触れられている点も興味深かった。

    技術と法と政策を武器に、地震、火事、住宅、都市の四つのテーマに取り組んだ一連の専門家(「建築家」という言葉のニュアンスとは違った職能と思われる)の活躍が詳しく書かれており勉強になった。

  • 上巻の幕末・明治篇は建築界がフロンティア・パイオニア精神にあふれ読んでてわくわくしたが、下巻の大正・昭和篇では建築界も徐々に成熟し始め、多くの歴史的建物が生まれるも、時代のエピソードとしてはやや停滞感。ちょっと退屈?と思い始めたところで盛り上がったのが「10.社会政策派」の章。最初の頃に結びつきが強かった国家・政治と建築の関係は、社会が成熟してくると、都市や社会の問題とも結びつき始める。関東大震災を経ての復興都市計画のくだりなんか最高に面白い。そしてモダニズムの時代の萌芽からコルビジェまで一気に進み、終戦を迎える。あー藤森先生の戦後篇が読みたい!

  • 建築の素人にはレベルが高い内容なので、私には最初から通読は難しかった。人名、建築名索引が充実しているので、旅先で出逢った建物や、気になる建築家について拾い読みをするのが楽しい。

  • 西洋の建築様式をなぞるのが精いっぱいだった明治の日本人建築家たちの後継として現れた第二世代。伊藤忠太、横河民輔、佐野利器・・・それぞれに独自性を打ち出した建築論を展開し、関東大震災を経て地域の区画整理から耐震構造の研究へと日本の建築は大きく躍進していく。
    やがて世界的に起こるモダニズムの波に、抗うもの、乗るもの、巻き込まれるもの、様々な主義主張の建築家が生まれては消え、お雇い外国人に頼んでなんとか西欧っぽい建築を作ろうと苦心していた時代から見ると「遠くへ来たもんだ・・・」と思わず呟きたくなるような時代の変遷を感じる。
    著名な建築家たちの関係性や時代背景などがわかり、それまでばらばらに脳内にあった建築家や建築が自分の中でマッピングされていくのが面白い。
    ちょっとしたエピソード(村野藤吾の建築にナチスを意味するモチーフが掲げられていて、彼自身はマルクス主義だったという話とか)も興味深く、楽しく読んだ。
    最後に藤森氏があとがきで書いているように「主観と憶測の楽しみ」の混じった本であるので、完全なる建築史の教科書としてしまうには偏りがあるのかもしれないけれど、読み物として楽しんだ。

  • 流れがよくわかる。
    と、言いながら、年表を作りたくなる。

  • 【読書メモ】
    ゴシックは神の時代を表現

    モダンデザインは科学技術の時代を表現
    (植物→鉱物→幾何学→数式)
    アールヌーボーにはじまりミースに終わった

  • 思想を持つ、建築。

    いよいよ日本の建築も成熟期に入ってきた。
    追いつけ追いこせの模倣段階から、思想を表現するための建築へとなってきたよう。
    特に興味深いのがモダンデザイン。植物→鉱物→幾何学→数式、と段階を踏んでより抽象かつ始原的なものへ向かう動きが興った。それは産業革命のため、かつての歴史主義に空洞化が起こってしまったことから始まる。その空洞を埋めるものを各地へ求めたが、見つからない。行き詰まった建築家が自分の内側を見つめはじめ、感受性を掘り下げていくうちに、植物的な感覚の層、鉱物感覚の層、数学感覚の層と掘り進んで底を打ったらしい。

    そういえば、その後の軍国主義ではあまり影響を受けなかったことから察するに、日本の近代建築は外向けのアピールが主だったのだろうか。国民の気勢を高める内向きの動きにはあまり建築は使われなかったもよう。

  • いきなり下巻から読み始めたせいか、あまり内容に入り込めなかった。
    本当に、自分はこの本のよい読者にはなれなかったような気がする。
    (ミース・ファン・デル・ローエが、本文で「ミース」と呼ばれていることばかりが気になって仕方がないような読者である。)

    ただ、日本の大正以降の建築が、欧米のほとんどの流派が流れ込んでいること、そしてドイツを除けばそんなに多様な展開が見られた場所は他にないということが分かった。
    写真は白黒で、小さいというのが難点だが、たくさん載っているので、述べられている特色がどういうものかを理解するのに役立つ。

    ちょうど内務省官僚長岡隆一郎の『官僚二十五年』を読んでいた時だったので、「10 社会改革派」は興味深かった。
    都市計画局の長官として、スラム街の改良に取り組んだらしい。
    公園建設を多数手がけた長岡安平の息子が、そういう道に進んでいたとは。

  • 同じ藤森照信氏著作の建築探偵シリーズとは対照的に、専門的な内容の本です。
    取り上げられている建物の数は圧倒的に多く、住所付きの50音順索引は便利です。

  • [ 内容 ]
    明治の時代とともに展開した近代建築も、大正に入ると大きな転機を迎える。
    第二世代が登場し、彼らは建築とは何かを内省し、社会性、技術の表現、実用性などのテーマを発見する。
    新しい感性に目覚めアールヌーヴォーを手がける。
    昭和に入ると、モダニズムの影響のもとに第三世代が花開き、ファシズムの洗礼を経て、その流れはいまに続く。

    [ 目次 ]
    8 明治から大正へ―自覚の世代の表現
    9 新世紀の歴史主義―アメリカ派の隆盛
    10 社会政策派―都市と社会の問題
    11 モダンデザイン―表現派にはじまる
    12 初期モダニズム―バウハウス派とコルビュジエ派

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著者プロフィール

建築史家・建築家

「2015年 『藤森照信×山口 晃  探検! 東京国立博物館』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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