漱石を書く (岩波新書)

著者 :
  • 岩波書店
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本棚登録 : 72
レビュー : 7
  • Amazon.co.jp ・本 (215ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004303152

作品紹介・あらすじ

夏目漱石の作品を、気鋭の現代作家はどう読み、創作にどう応用するのか。「彼岸過迄」「こころ」「明暗」などの作品を丹念に解読しながら、作家と語り手に注目し、登場人物たちの関係性を解明する。また作家と作品の距離を考えるために、書き手として「写生文」の方法を分析してゆく。漱石を読み、漱石を書く-。現代文学への大胆な挑戦。

感想・レビュー・書評

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  • ブログ更新:『漱石を書く』島田雅彦著の「猫」について
    http://earthcooler.ti-da.net/e9285165.html
    島田はその経緯に触れたうえで、漱石が自らの狂気を相対化するために用いた文体、すなわち「写生文」に注目する。写生文とは、漱石の盟友正岡子規と高浜虚子が中心となって提唱した短歌・俳句革新運動を指す。漱石はその客観的な写実の方法を独自にアレンジして、「大人が小児を視るごとき」立場と定義づけた。それによって狂気に陥っている自らをも客観視する余裕が語り手に生まれるということだろう。同作においても、作者自身のパロディとされる主人公珍野苦沙弥はもちろんのこと、周囲の登場人物も「吾輩」という猫の一人称によって写生されまくる。

  • 漱石と、気鋭作家島田雅彦の意外な組み合わせ。面白い。
    漱石が唱えた「写生文」を、作家目線で創作に応用する目的で読む島田の漱石論。これまで読んだそれにない自由な読み方は、私自身が、言語化出来なかったこと、まるっと代弁状態。特に「明暗」の評論。あと、考えたことも無かったが、漱石と本居宣長の日本語への態度の比較は興味深かった。
    併せて、漱石の心理分析力には改めて敬服し、私も写生文という装置を備え付け、自己認識の悪循環をすり抜けるテクとして欲しく思った。

    哲学、時代、自我、生死、道徳、愛、生い立ち、営み、お金、様々な諸問題を小説に投入し、全ては語り尽くせぬ、完全な共感など無いという前提のもとだからこそ、予期せぬ答え、新たな気づき、ヒントになり得る答えが導き出されること。
    自律性が高い漱石の言葉の奥行きと情緒、果てない可能性。

  • 資料ID:C0016792
    配架場所:2F新書書架

  • 作品ごとに解説がついているが、読んだ事の無い小説を「ぜひ読んでみたい」と思わせるような事が書いてあるわけでもなく、また漱石論は他に数多あるだろうから、漱石というよりは、著者に興味がある人向けの本に思えた。

  • ふと思い立ち再読。
    島田雅彦の本はそれほど読んだことがない(多分2冊程度?)ので、本作が作家にとってどういった位置付けにあるのか判断できませんが、漱石の一つの読み方としてありだなと素直に思う。
    この本は作家の知性の成せる業だろうが、行きつくところ100年も前になろうかとする作品が今もって何ら違和感なく読むことを可能とする巨人・漱石の産物の一つというありきたりの陳腐な結論でしょうかな。
    ちょっと島田作品も再読含めて追いかけてみよう。

  • 漱石の小説をすべて読んでいる人は1章と3章だけ読んで十分だと思う。
    この本で多くのページを割かれている2章は、作品を時系列順に取りあげていて新書の読者向けの色合いがつよい。島田雅彦のサービス精神は2章に発揮されているということもできる。漱石について書かれたものにドストエフスキーや小津安二郎の名前が出てくるのはやっぱり嬉しい。
    あとは何周か回っているにせよ基本的なスタンスとして、漱石を個人主義的にとらえること、中途半端さにおいてとらえることは僕自身の嗜好にマッチした。

  • 夏目漱石の「こころ」をモチーフにした「彼岸先生」を作品に持つ島田氏の漱石論。通俗小説家としての漱石に注目し、彼の作品に潜むエロティシズムを分析しています。本書の執筆時期あたりから、島田氏の作品が教養主義的な方向に傾倒していくという気がする。

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著者プロフィール

島田 雅彦(しまだ まさひこ)
1965年東京都に生まれ、東京外国語大学外国語学部ロシア語学科卒業。1983年在学中『海燕』掲載の『優しいサヨクのための嬉遊曲』でデビューし芥川賞候補。1984年『夢遊王国のための音楽』で野間文芸新人賞受賞。『僕は模造人間』(1986年4月)『ドンナ・アンナ』(1986年9月)『未確認尾行物体』と、郊外の新興住宅を舞台にした若年層の生活を、奇抜な語彙を用いつつ軽妙な筆致で描く作風で、新世代の作家として注目を浴びる。1987年までに6度芥川賞候補となり最多候補記録。1992年『彼岸先生』泉鏡花賞受賞。『忘れられた帝国』(1995年)、『自由死刑』(1999年)2003年には「自らの代表作とすべく書いた」という『無限カノン3部作』(『彗星の住人』『美しい魂』『エトロフの恋』)を完成。2006年『退廃姉妹』で伊藤整文学賞受賞、2008年『カオスの娘』で芸術選奨文部科学大臣賞受賞。2016年、『虚人の星』で毎日出版文化賞受賞。1998年近畿大学文芸学部助教授に就任。2003年法政大学国際文化学部教授。2000年から2007年まで三島由紀夫賞選考委員、2010年下半期より芥川賞選考委員となる。

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