思想としての近代経済学 (岩波新書)

著者 : 森嶋通夫
  • 岩波書店 (1994年2月21日発売)
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  • Amazon.co.jp ・本 (246ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004303213

作品紹介・あらすじ

近代経済学はどのような価値観、社会像にもとづいて形成されたのか。ワルラス、シュンペーター、ケインズ、ヒックスらの描いたビジョンを検討するとともに、壮大な理論体系の構築をめざしたマルクス、ウェーバーらの思想をも根底から問い直す。現代社会の厳しい変貌を見すえつつ従来の通説にとらわれずに展開する、創見に満ちた経済学観。

思想としての近代経済学 (岩波新書)の感想・レビュー・書評

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  • 学生の時に買って、意味が分からないまま何度も読み返している本。ようやく、かするように理解のとば口ができてきたように思う。1994年の本だが、今読み直してもなお実に新しい。

    セイ法則を基軸にしてリカードからケインズまでのマクロ経済学の流れを概説している。実に短いページ数によくもまあ簡潔に人物をまとめられるものだ。マックス・ウェーバーのところなどはびっくり脱帽である。森嶋はマルクスやケインズを高く評価する。それは吉本隆明のようにひいきのひきだおしと情熱で敵対者を罵倒してなすのではない。限定された条件下での、例えば産業革命時のイギリスとか、第一次世界大戦後のアメリカやヨーロッパといった条件下でのマルクスやケインズの理論の評価と、彼ら自身が他の条件ではそれが成立していないことを自覚していた点を評価しているのだ。マルクスとマルクス経済学者の違いが際立ってよく理解できる。

    ケインズがドイツに賠償を求めなかったときの勇気も森嶋は高く評価する(森嶋も大変に誇り高い人物だった)。周りが全て敵だらけでも、ドイツの賠償金を低く抑えようとケインズは迎合しない。それが未来におけるケインズの評価を不動のものにしたのである(一部分は)。「ケインズの正義感は、不当な集団リンチを許さなかった」のである。

    さて、不当な集団リンチを毎日のようにやっている我々の社会である。ケインズの態度(ケインズの学問だけではなく)から学ぶところは実に多いのではないだろうか。

  • セイの法則が実際の社会では成立しない。
    材の種類も技術とともに変化する。
    耐久財のジレンマ=耐久財のレンタル価格は市場金利に連動する。供給が多ければ価格が下がって調整されるには、市場金利が下がることになるが、それはありえない。

    官僚制の問題=私企業であっても労働者以外は官僚と同じ。
    官僚あがりの経営者=イノベーター、起業家ではない。

    耐久財のジレンマを解決していないことが問題。
    ヒトラーの時代は軍備がある程度、セイの法則を支えた。

    セイの法則が迷信なら神の見えざる手も迷信。

    トービンのq理論。
    広い意味の経済学は帰納法的、経験主義的。
    狭い意味の経済学は公理論的、演繹的、数学的。

    フォンミーゼスとハイエク=自由放任主義

    第一次世界大戦は奇妙な形で集結した。ドイツ領内には攻め入っていない。ドイツの政治的混乱が原因。

    寛容心は相手の発展で補われる。ドイツの賠償を免除する理由。

    賃金率が伸縮的でもセイの法則は成立しない。更に賃金は下方硬直性がある。
    資本財と労働市場以外では、価格調整機能は機能する。

  • 著者の森嶋通夫(1923-2004年)は、ノーベル経済学賞の候補にも何度か名前が挙がっていて、「ノーベル経済学賞に最も近かった日本人」と言われています。ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)名誉教授・元LSE Sir John Hicks Professor、大阪大学名誉教授で、LSEでは、1978年に Suntory Toyota International Centres for Economics and Related Disciplines (STICERD) という研究所の設立に貢献し、初代所長に就任しました。数理経済学者として、レオン・ワルラス、カール・マルクス、デヴィッド・リカードなどの理論の動学的定式化に業績を残しました。
    本書では、何故、現実の経済を分析するのに経済学だけでは足りないのかについて、リカード、ワルラス、シュンペーター、ヒックス、高田保馬、ヴィクセル、マルクス、ウェーバー、パレート、フォン・ミーゼス、ケインズといった経済学者の業績と思想を振り返り、経済学において現実を反映した理論を構築するためには、社会学の視点を導入する必要があると結論付けています。
    著者によれば、近代の資本主義は、狭義の資本主義部門と福祉・教育部門の複合体であり、二つの部門は必ず対をなして存在し、バランスを保って発展しなければならず、一方を欠く場合には、他方は長期にわたって存続することは難しくなります。もし福祉部門が過大になれば、資本主義部門はそれを支えることができず、その結果、福祉部門を縮小し過ぎると、資本主義部門に対する批判が高まり、資本主義を維持するためにも、福祉の拡大を認めざるを得なくなるということです。即ち、近代資本主義は両者のバランスの上に初めて存命できるのであって、純粋な「資本主義」経済は欠陥体制であると言っています。

  • 題名は厳密に解すと『思想である経済学』かと。
    正義・公正の実現を経済の面から志向する学問こそが経済学であり、この観点から経済学の巨人の考え方を解説する本書。
    この立場からすれば当然ながら子供騙しの厚生経済学は軽視されるし、サッチャーの政策につき根源的な批判を加えるのは当然のこと。
    何より思うのは現在の経済学者と名乗る方々と基本的な思考方法が異なっているように思われる、つまりは「経済学」と銘打ちながら全く別物としか思えないということ。
    そしてどちらが学問・教養として豊饒であるかは自明の理であります。

  • 経済学と社会学、総合の展望

    マルクス
    ウェーバー
    シュンペーター
    パレート
    高田保馬

  • 『なぜ日本は没落するか』の故 森嶋通夫氏の近代経済史。長きにわたりイギリスで経済学の教鞭をとられていた氏の経歴にあってケインズ登場が終点。

  • 難しかった…。
    クルーグマンの教科書すら読んでない俺が、岩波に挑戦するなんて甘かったのか…。←商学部

    さて、本書はリカード、ウェーバー、パレート、高田保馬、ケインズなど経済学者の主張を解説していく本。
    経済学の前提と思っていたセイ法則の相対化がテーマの1つだったように思う。

    前半が特に難しく、数式を使った理論的な分析に早く慣れていかないとなあと再認識。
    でも歴史分析や社会科学の価値自由とかに言及されててとても面白かった。

  • 「供給は需要そのものを生み出す」という「「セイの法則」を軸に、リカードからケインズに至る近代経済学の発展をたどる。

    ケインズが登場するまで、近代経済学は一般均衡を得るため「セイの法則」を無条件に措定していた。しかし、「耐久財のジレンマ」や「賃金の下方硬直性」など、現実の経済で「セイの法則」が成立しない場面が頻出。本書はそういった「反セイの法則」がなぜ起こるのか、経済学の範囲を飛び越えウェーバー、パレート、シュンペーターらの社会学的な知見を参考にしながら解明を試みる。刺激に満ちた本です。

  • NDC分類: 331.7.

  • [ 内容 ]
    近代経済学はどのような価値観、社会像にもとづいて形成されたのか。
    ワルラス、シュンペーター、ケインズ、ヒックスらの描いたビジョンを検討するとともに、壮大な理論体系の構築をめざしたマルクス、ウェーバーらの思想をも根底から問い直す。
    現代社会の厳しい変貌を見すえつつ従来の通説にとらわれずに展開する、創見に満ちた経済学観。

    [ 目次 ]
    序章 近代経済学私観
    第1部 ビジョンと理論―市場の多様化と価格機能(リカード;ワルラス;シュンペーター;ヒックス;高田保馬;ヴィクセル)
    第2部 ビジョンの充実―経済学と社会学の総合(マルクス;ウェーバー;シュンペーター;パレート)
    第3部 パラダイムの転換―自由放任から修正主義へ(フォン・ミーゼス;ケインズ)

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