幕末維新の民衆世界 (岩波新書 新赤版 333)

著者 :
  • 岩波書店
3.25
  • (1)
  • (3)
  • (11)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 57
感想 : 9
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (246ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004303336

作品紹介・あらすじ

黒船来航、幕末の動乱そして「御一新」。庶民はこの変革期をどう捉え、どう生きていったのか。近江商人・小杉元蔵、江戸町名主・斎藤月岑、生麦村名主・関口東右衛門、京都近在の頭百姓・若山要助、宮大工・藤井此蔵、地下医・古谷道庵、等々、庶民が書き残した膨大な日記群を縦横に駆使しつつ描き出される異色の幕末維新史。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 幕末維新はまさに世が乱れたのであったなと感得。太平の徳川時代が終わりを告げて、辻斬り、強盗、暗殺、疫病、総踊り、打ちこわし、一揆に戦争と来る。こうやって日記を残すのは総じてインテリ層であり、たまにデマに惑わされつつも世の中の動きをよく見ている

    しかし薄い新書であるが、解説めいたことは抜きでひたすら日記からの引用を時系列に連ねていく。密度は濃いが少々読み進めるのが大変。最近の新書だとなかなか無いであろうスタイルだ

    買った遊女の名前まで律儀に日記につけたあとに、この世の無常に思いを馳せる元蔵さん。。。

  • ペリー来航から明治政府の開化政策への反発までの約20年間を18の庶民日記でつなぎ合わせて叙述しており、幕末維新の動乱期を庶民がどう生きたのかがわかる構成になっている。当然、個々のエピソードは著者が恣意的に選択しているので、これがマジョリティーな庶民感覚とは限らない事には留意。
    驚くのは国内情勢だけでなく海外情勢までも幅広く入手しており、それを商売に活かそうとしている点である(勿論、噂やデマに振り回される事もある)。やはり開国は非常に大きな出来事であった事がわかる。特に、横浜鎖港・兵庫開港は商売に直結するので関心が高い事がわかる。あとは火事や疫病が多いし、強盗・殺人も多く、かなり物騒な世の中である事を痛感する。よって、経済(カネ儲け・物価)と安全・健康が最大の関心事であり、日々生きる事に懸命なせいか、所謂「幕末の志士」とは違って政治を見る目は総じて冷ややかである。庶民にとっては朝廷だろうが幕府だろうがどうでもいいのかもしれない。これは現代のように政治参加ができるわけでもないという諦めもあるだろう。その代わり、生活への不満は一揆や打ちこわしによって意思表示する事になるわけだが。
    幕末維新期に限らず、どの時代にも庶民の暮らしはあり、各々の喜怒哀楽があるのだろう。それは現代に生きる我々もそうであるし、100~200年後の人々が令和時代の庶民の暮らしを振り返る時も同じなのかもしれない。



  • 幕末動乱期と言えば、新撰組やら白虎隊やら、坂本龍馬、西郷隆盛などなど維新志士がとりだたされるが、そんな時、市井の人々、庶民つまりパンピー達は何を思って何をしていたのか。
    当時の庶民達が書き記した庶民日記を元に、紐解く一冊。
    黒船が来航した時、庶民達は...政府役人達が大わらわをよそに、街は何やら騒がしいがあれやこれやと御触書が出て商いが出来ず、まいったねこりゃなんて冷めた目でいたようで。
    当時は特に米価の高騰下落が常に関心事であったようね。やたらと、打毀しと称して壊しまくってたし、何かとありゃ、一日中踊り狂ってたり。
    本書のオチが、まあ粋なこと。本書の主人公的な扱いの近江の旅商人小杉元蔵にとって「文明開化」とは、商いを捨て、帰農して開拓生産に志すことであった、と。
    しかし、古語や聞きなれない物言い、単語が多くググりながら読んでたら、読み終わるのに二週間もかかってしまった。

  • 黒船来航,幕末の動乱そして「御一新」.庶民はこの変革期をどう捉え,どう生きていったのか.近江商人・小杉元蔵,江戸町名主・斎藤月岑,生麦村名主・関口東右衛門,京都近在の頭百姓・若山要助,宮大工・藤井此蔵,地下医・古谷道庵,等々,庶民が書き残した膨大な日記群を縦横に駆使しつつ描き出される異色の幕末維新史.

  •  商家や百姓家など民衆の日記(特に近江の旅商人小杉元蔵の日記)でつづる幕末維新史。とにかく史料に語らせることを本旨とし、解釈や状況説明を極力省いているのが特色(故に史実と異なる風聞や噂の類もそのまま)。開国から幕府瓦壊・「御一新」までの庶民の生活状況や世界認識の変容、政治情報の伝達状況など武士側の史料からは見えにくいものがわかる。

  • [ 内容 ]
    黒船来航、幕末の動乱そして「御一新」。
    庶民はこの変革期をどう捉え、どう生きていったのか。
    近江商人・小杉元蔵、江戸町名主・斎藤月岑、生麦村名主・関口東右衛門、京都近在の頭百姓・若山要助、宮大工・藤井此蔵、地下医・古谷道庵、等々、庶民が書き残した膨大な日記群を縦横に駆使しつつ描き出される異色の幕末維新史。

    [ 目次 ]
    序章 庶民日記に歴史を読む
    第1章 異人、江戸に来る
    第2章 張札とさらし首
    第3章 京が焼ける
    第4章 戦と世直し
    第5章 ええじゃないか
    第6章 戊辰の戦と商い
    終章 庶民にとっての御一新

    [ POP ]


    [ おすすめ度 ]

    ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
    ☆☆☆☆☆☆☆ 文章
    ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
    ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
    共感度(空振り三振・一部・参った!)
    読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • 分類=幕末維新期・民衆・佐藤誠朗。94年4月。

全9件中 1 - 9件を表示

佐藤誠朗の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×