20世紀美術 (岩波新書)

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  • 岩波書店
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レビュー : 6
  • Amazon.co.jp ・本 (205ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004303374

作品紹介・あらすじ

20世紀の幕あけとともに美術は新たな時代を迎えた。前世紀末の印象派の出現にはじまり、ヨーロッパの前衛表現からアメリカの抽象表現へ-。オリジナルな表現を目指して美術家たちの格闘が展開する。それらの作品は人間にとってどのような価値をもつのか。20世紀絵画表現の意味を画家としての眼で問い直し、現代美術の可能性を探る。

感想・レビュー・書評

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  • マルセル・デュシャンやバーネット・ニューマン、ジャスパー・ジョーンズ、ジャクソン・ポロック、さらには日本の河原温や三木富雄を取り上げて、20世紀美術の意義を論じています。また、自身も画家である著者にとって、20世紀美術を経た現在の芸術が置かれている困難な状況についても考察が展開されています。

    著者は、デュシャンが追究した「還元」へ向かう情熱の発端を、印象派に求めています。眼が見えるようになるとは、眼から対象へ向かう志向的なまなざしが確立することを意味しています。これに対して印象派がおこなったのは、眼から対象へ向かうrecognitionを対象から眼へと向かってやってくる原色の光の点のcognitionへと還元することでした。さらにセザンヌは、空間についても同様の還元を試みます。彼の描くデッサンは、キャンバスの上に「もの」を完成させることなく、みずからの感覚を「もの」へと至る「通路」として開いておいたのだと、著者は述べています。さらにピカソは、パースペクティヴと「もの」のフレームに関して、セザンヌの仕事をさらに推し進めていきます。

    こうした「還元」へ向けての情熱は、20世紀のアメリカの芸術家たちによって、、批評家グリーンバーグと共犯関係を取り結びつつ、いっそうあからさまに追究されていきました。しかし著者は、こうした「還元」そのものを突き詰めていくことで、現在の芸術家が困難な場所に追い込まれていったことを指摘します。著者は、河原温のパフォーマンスによって作品を成立している場所そのものの「不在」にスポット・ライトが当てられたことに触れ、「彼の「不在」によって、パーティーという人と人のコミュニケイションの場の、エンターテインメントに堕してしまった日常性が浮かびあがる」ことの意義を認めつつも、「しかし私はパーティにとどまろう。どんなに困難でもコミュニケイションの場に」という決意を語ります。そして、晩年のジャクソン・ポロックの「カット・アウト」の仕事に、「還元」への情熱とは異なるヴェクトルを、すなわち、キャンバスの中に密封され閉ざされていくヴェクトルではなく、さまざまな色や形が自由に出入りしうるコミュニケーションに向けて開かれていくヴェクトルを認め、高い評価を与えています。

    やや言葉遣いにクセがあるので、著者の主張を性格に読み解くことができたのか、かなり不安を感じているのですが、刺激的な内容であったことは間違いなく、おもしろく読みました。

  • 20130623ブックオフにて再購入

  • 地元の図書館で読む。正直、あまり期待していませんでした。理由は簡単です。現代美術の作家と僕の間に、共通の言葉があると思えないからです。第1に、現代美術を楽しむためには、お約束を理解する必要があります。僕は、その約束を知りません。第2に、芸術家が持つ感受性を楽しむ感受性を持っていないことです。いい意味で、この新書は、この期待を裏切るものでした。再読の価値があります。

  • [ 内容 ]
    20世紀の幕あけとともに美術は新たな時代を迎えた。
    前世紀末の印象派の出現にはじまり、ヨーロッパの前衛表現からアメリカの抽象表現へ-。
    オリジナルな表現を目指して美術家たちの格闘が展開する。
    それらの作品は人間にとってどのような価値をもつのか。
    20世紀絵画表現の意味を画家としての眼で問い直し、現代美術の可能性を探る。

    [ 目次 ]
    1 マチスを回顧する
    2 20世紀前半-ヨーロッパ前衛芸術(マルセル・デュシャンの還元的情熱;抽象表現への諸段階;シュール・レアリズム)
    3 20世紀後半-アメリカの抽象表現(進化というイデオロギー;サブライムとバーネット・ニューマン;不在の芸術;ジャスパー・ジョーンズのオーバー・レイ;ポロック評価の逆転)
    4 よみがえるホリゾント

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    [ 参考となる書評 ]

  • (メモ)文脈
    ヨーロッパ←→アメリカ=オリジナリティ
    デュシャン、前衛、ミニマル、ジャスパー・ジョーンズ

  • 画家、美大教授である著者が19c末の印象主義、20世紀ヨーロッパにおける前衛表現から、アメリカの抽象表現まで。10年前のものなので、現代美術の芸術的評価基準への戸惑いをリアルに感じられる。

    「強さ」「sublime(崇高)」というインパクトの時代からさらに現在は多極化してますが・・・。

    芸術におけるコミュニケーションとは何ぞやってことと、と進歩主義の否定が、残る。

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