岸信介―権勢の政治家 (岩波新書 新赤版 (368))

著者 : 原彬久
  • 岩波書店 (1995年1月20日発売)
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  • Amazon.co.jp ・本 (249ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004303688

岸信介―権勢の政治家 (岩波新書 新赤版 (368))の感想・レビュー・書評

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  • 安保改定の政治史研究で知られる原彬久(東京国際大学教授)の著作。

    【構成】
    第1章 維新の残り火-生いたち
    第2章 青春の刻印-国家社会主義への道
    第3章 時代の帆風を受けて-少壮官僚
    第4章 国家経営の実験-満州国時代
    第5章 戦時体制を率いて-国家主義の蹉跌
    第6章 幽囚の日々-獄中日記が語るもの
    第7章 保守結集に向けて-五五年体制の構築
    第8章 権力の頂点に立つ-安保改定への執念

    「昭和の妖怪」「A級戦犯」「安保改定を成し遂げた右翼的政治家」「満洲国を創った男」
    我々は岸信介を語るキーワードには事欠かない。長州出身にして一高・東大卒の超エリート官僚の岸の姿は、岸の初組閣から半世紀が経過した後に首班指名を受けた孫とは根本的に異なる。

    本書は戦前・戦中・戦後を通じた昭和という時代に、権力の中枢を司り、頂点を極めた稀有な政治家の物語なのである。


    前半は岸家・佐藤家をめぐる家庭環境から、岸の人格・キャリア形成に焦点をあて、岸をとりまく環境に「岸がいかに対応していったのか」ということが中心となる。

    しかし、戦後巣鴨から出所した後は、記述ががらりとかわり、政治史研究の学術的な叙述スタイルとなっていく。そこでは「岸をとりまく環境」がどう変化したのかということに焦点があてられ、岸自身の動きはいくぶんつかみにくい。

    前半の史料の引用はほぼオーラルヒストリーに近く、しばしば印象論的な叙述と感じる点があり、やや正確さを欠くように思える。また逆に後半は、公文書等の一次史料を数多く引いているため、叙述が硬直化して、前半のような滑らかさが失われ、面白味に欠けるように感じられた。詳細な政治過程分析は既に別の著作で行っていることを考えれば、もう少し工夫があってもよかったのではないかと思う。

    とまれ、戦前・戦後の岸信介のパーソナリティを知るのに手っ取り早い入門書である。

  • 1995年刊行。著者は東京国際大学教授。◆昭和の妖怪と評される岸信介の人物評伝。主に昭和ゼロ年代の農商務省任官から岸首相退陣までを解説。昭和史前半を一通りおさらいするには悪くはない。殊に、日米安全保障条約改訂作業における政権内の暗闘、あるいは岸の巣鴨獄中模様は、あまり他書では見ないかもしれず、個人的には新奇。満州におけるアヘン密売ルート利権を東条らとともに岸が有し、巨額の金銭を動かし得た可能性もさもありなん、との感。
    岸本人は、巣鴨獄中生活をほとんど公にはしていないらしい。その意味で、岸の書簡などに依拠して巣鴨生活を叙述した本書は貴重かもしれない。

  • 我らがミニスターって、これ読むと、あの一族の異端ってか、底辺だってのが、よく分かった。

    でもって、怨念のようなもんだけ、(自分で勝手に)引き継いじゃったんだな。

  • 国としての独立は国軍を持つ事と妄信した政治家の話、今もその亡霊が政治する。平和憲法で育ってきた我々には理解出来ない執念。

  • 「昭和の妖怪」と呼ばれた岸信介の生誕から
    安保改定による退任までの流れを中心に描く。

    岸の思想の源流に青年期の北一輝との邂逅や、
    大川周明の大アジア主義があると述べられている。
    また岸自身はマルクス等の影響は無いとしながらも、
    満州における彼の活動に計画経済的な面があるのは興味深い。

    目的においては理想主義者であり、
    その方法において現実主義者という本書の岸への評価は的確だと感じた。

  • すごくおもしろかった。
    岸信介の生涯を大体知ることができ、また、戦前から戦後の日本の状況も合わせて知ることができる。つまり岸信介は戦前から戦後の日本を代表している人物だと言える。
    よく考えたら一官僚が一国の総理まで登りつめるなんて、今の時代じゃ考えられないと思う。それだけ野心に満ち溢れ能力的にも優れていたということだが。なんていうか政治家としてかなり完成度が高い人物。
    安倍さんも含め現代の政治家よりはるかにかっこよく感じた。三島由紀夫のお父さんと同期っていうのがいいよね(笑)

  • 東京裁判におけるA級戦犯被疑者にして第56代・57代内閣総理大臣を務めた、岸信介氏の伝記です。有名な『昭和の妖怪 岸信介』(中公文庫)とは異なり、生い立ちから亡くなるまでの生涯を、網羅的に追いかけている本です。

    まず思い至ることは、孫である安倍晋三首相の「アベノミクス」との関連でしょうか。岸氏は1926年の欧州訪問時、ドイツの産業合理化運動に「日本の行く道はこれだ」と言わしめるほどの印象を受けたそうです。それが浜口内閣における産業合理化運動、満州における産業開発五か年計画への岸氏の傾倒へとつながっていきます。

    現在の産業競争力会議も、見ようによっては戦前の一連の産業合理化運動につながるところがあるように思います。自由競争を否定しているわけではありませんが、例えば労働争議に国が顔を出したり、口だけでいつまでたっても規制改革が進まないこと、一方でコスト削減への意識が強いことなど、岸氏の産業合理化と重なるところも多いように思います。

    印象的だったのは、高校時代、大学時代、そして巣鴨拘留時代に培われた文化的・思想的バックボーンでした。一高時代の乱読もさることながら、「読書に熱中寸暇も惜しむ」巣鴨時代にみせた知識欲たるや、なかなか常識では考えられないものです。岸氏の打ち出した政策のなかに、かすかなマルクス主義のにおいを感じる理由も分かりました。

    戦後しばらくの日本政治の動きはめまぐるしく、つかみどころに苦しむのですが、本書では「保守本流」・「保守傍流」を軸にいわゆる保守合同のあたりが解説されていて、戦後史の本としても優れています。また、岸氏が政治生命、のみならず自身の生命そのものを賭して臨んだ安保改定、そのポイントもよくまとまっています。

    一連の安保闘争については、「事件」としてのインパクトにばかり焦点が当てられ、そもそも何が論点になっていたのかということは軽視されがちです。そのへんを理解したいという方にもおすすめできます。

  • 戦前,革新官僚として満州国の産業開発を主導,東条内閣の商工大臣を務めた岸信介は,A級戦犯容疑者とされながら政界復帰を果たし,首相の座に就いて安保改定を強行,退陣後も改憲をめざして隠然たる力をふるった.その九○年の生涯と時代との交錯を生前の長時間インタビュー,未公開の巣鴨獄中日記や米側資料を駆使して見事に描く.

  • 日本政治がある程度一貫した方向性のもと展開されたことが、岸の歩んだ道をたどることによって理解することができる。
    戦前は一国一党を目指し、戦後は実質の一党長期政権を目指した。それによってもたらされるのは統制的、計画的な経済であり、国力の増強であった。
    現在の私から見て非常に理解しにくいことは、戦前と戦中を通して社会主義勢力と軍国主義勢力の紐帯がなぜ起こりうるかということであるが、岸は極めて自然な流れで、当たり前のようにその狭間を往復する。
    国家社会主義についてあまり深く考えこみ過ぎずに、そんなものなのかと納得するべきなのだろう。

  • 再読です。やはり、この本は面白い。紙の資料だけで書いたものと思っていた。膨大なインタビューを基礎としている。久しぶりに、インタビュー読んでみようかな。

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