戦争犯罪とは何か (岩波新書)

著者 :
  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (238ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004303800

作品紹介・あらすじ

何が戦争犯罪であり、誰がそれを裁くのか。近代の国際社会で成立した兵器制限や捕虜待遇をめぐる問題から説きおこし、第二次大戦後のニュルンベルク裁判・東京裁判であらたに定式化された「平和に対する罪」「人道に対する罪」、そして現代の係争点・到達点を論じていく。国際法研究者の立場から捉えた法理の全体像。

感想・レビュー・書評

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  • 戦争観が変われば、戦争犯罪観も変わるとして、戦争観と、戦争犯罪の内容や処罰のあり方の歴史的変遷を解説している。

  • 知識足りず理解できてない。

  • 1995年刊。著者は関西大学教授。

     近代前期(ナポレオン処罰)~現代=国際連合発足→ベトナム戦争→ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争期ほか90年代までの「戦争犯罪」の各種テーマを網羅的に叙述する。
     故に、ニュルンベルグ・極東裁判だけに言及しているわけではない。

     一言で言えば岩波らしく、難易度が高いがキチンとした書という印象である。
     それは、後記①~④の広範囲な難問を、新書サイズで叙述しようとした点にある。
     すなわち、
    ① 戦争犯罪に関する要件や戦争犯罪観に関する歴史的変遷。加えて、近代初期~90年代という長期間な点。
    ② 犯罪論、刑罰・科刑論の基礎概念、例えば罪刑法定主義(特に事後法の禁止)、個人責任の原則と例外=法人・団体・組織的集団に対する科刑論。国家の法人としての犯罪主体性や、支配・被支配関係下にある複数個人の共謀共同正犯論に対する問題意識、
    ③ 戦争犯罪特有の問題、例えば平和に対する罪、人道違反の罪の内容。侵略戦争やジェノサイドの定義(例えば、言語使用禁止という精神的な民族破壊施策はそれだけでは、刑事罰を科す要件としての「ジェノサイド」とは看做されていない)。さらに極限状態の抗弁・上官命令服従義務の抗弁など。
     戦争における特殊事情の一般論への反映。
    ④ 国際公法一般論への理解。
     具体的には、条約なき場合における慣習的拘束。あるいは条約の勿論解釈の是非とその範囲など。

     かように国際法から刑事法学、さらにはその歴史的変遷に加え、政治・外交・軍事状況などといった、広範な前提知識とその理解、それらへの問題意識の醸成が求められるためである。
     それに言及しようと努める著者の見識は納得のそれである。

     なお、常設的国際刑事裁判所の希望的・期待的観測が本書の最後で語られるが、逆行現象が顕著な現状では、見通しは暗いと言わざるを得ない。

     そもそも、国際「政治」学者や歴史学者が叙述する極東・ニュルンベルグ裁判論が食い足りないと感じ続けていた理由が本書で氷解した感じ。
     それらはあくまでも裁判(刑事裁判)の問題であるにもかかわらず、刑事法や刑事手続法の○○・言及が不足(流石に事後法ぐらいは言及するが)し、その結果、叙述が表面的とならざるを得ないゆえ。

  • 不遡及の問題とか常任理事国の優遇集中とか勝てば官軍イメージしか残んないわ国際軍事裁判。国際人道法とか一方方向すぐる。集合知とか公平な正義には結びつかない典型

  • [ 内容 ]
    何が戦争犯罪であり、誰がそれを裁くのか。
    近代の国際社会で成立した兵器制限や捕虜待遇をめぐる問題から説きおこし、第二次大戦後のニュルンベルク裁判・東京裁判であらたに定式化された「平和に対する罪」「人道に対する罪」、そして現代の係争点・到達点を論じていく。
    国際法研究者の立場から捉えた法理の全体像。

    [ 目次 ]
    1 戦争法の成立と展開
    2 あらたな戦争犯罪観の模索―第一次大戦の衝撃
    3 国際軍事裁判で裁かれたもの―「ニュルンベルグ裁判」と「東京裁判」
    4 定式化への努力―国連システム下の戦争犯罪概念
    5 個人責任をめぐる議論
    6 国際刑事裁判所の試み

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著者プロフィール

関西大学名誉教授

「2008年 『平和憲法の確保と新生』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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