日本の自治・分権 (岩波新書)

著者 : 松下圭一
  • 岩波書店 (1996年1月22日発売)
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  • Amazon.co.jp ・本 (225ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004304258

作品紹介

阪神大震災は国主導政治の弱点を露呈させた。都市型社会の今日、市民自治と分権、新たな市民文化の熟成が望まれる。シビル・ミニマムを質的に整備し、真の国際化に呼応できるのは劣化した国の省庁ではなく自治体である。長年の体験に基づく蓄積が講演の形で平易に語られる本書は、オカミ崇拝の政治風土に強力な一石を投ずる。

日本の自治・分権 (岩波新書)の感想・レビュー・書評

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  • 2つの震災を契機に、地方自治の重要性を説く。
    国際機関、国家、地方自治がそれぞれどのような問題に対応できるのか、シビル・ミニマム(憲法25条、フェビアン主義)を確保するためにはどうすればいいかを考えていく。
    新しい本ではないが、これからの政治体制を考える上での、1つのパースペクティヴを与えてくれる本。

  • ようやくひととおりは読み終えた。
    これはスゴイ!!

    1996年ともはや古い本だが、
    今なお新しい本である。
    何一つ達成していないではないか!
    (もちろん、機関委任事務の廃止など、達成しているものもある)
    如何に遅れた自治体、如何に遅れた自治体職員であるか、
    思い知らされた。
    可能であれば、時間を戻し、氏にお会いしお話しを伺いたい。

    ・市民自治
    ・先駆自治体と居眠り自治体
    ・行政の劣化
    ・政策情報の公開
    ・行政機構は市民の代行機構
    ・書記型、労務型からプランナー型、プロデューサー型
    etc

  • 市民自治の重要性と、それを生かすために分権が必要だということを、分かりやすく説いている本です。

    著者は、現代の日本は「量」のシヴィル・ミニマムを達成しつつあり、今後の課題は「質」のシヴィル・ミニマムの整備だと主張します。「量」のシヴィル・ミニマムが求められていた時代には、国の主導のもとで必要な施策を推し進めることが有効でした。しかし、それぞれの地域に暮らす人びとの生活の「質」を向上させることが課題となりつつある今日では、国主導ではなく、地方分権を推し進めて市民自治に基づく地域文化を活性化させることが重要となります。本書は、こうした時代の要請を捉え、市民自治と地方分権の重要性を広い観点から明らかにしています。

  • 本書は長く自治体の改革を訴えてきた松下氏が、90年代の政治改革論議の中で地方分権が盛り上がりを見せた時期に執筆したものである。筆者は分権改革が一つの目的となるこの時期に改めて「なぜ自治・分権なのか」を問い直している。


    松下氏は90年代の分権議論を中央の政局とは切り離して考え、その背景には二つの流れがあると指摘する。

    一つは、1960年代の革新自治体を初めとする、自治体側が推進してきた分権下の蓄積であり、もう一つは二度の石油危機以後の1980年代から始まった国際化の流れに伴う国の役割の変化である。

    また、こうした内からと外から両方からの分権化の流れがあることに加えて、1990年代には求められる分権化の質も変わってきていることを指摘します。

    それは、60年代の市民活動の勃興から80年代までは、シビルミニマムの「量」充足段階であったのに対し、例えば上下水道などインフラの整備がある程度完了に近づいた90年代には、シビルミニマムの「質」整備段階に入っているのであり、分権化はその観点から行わなければならないとします。

    その上で、具体的に実現するべき分権の性格は「垂直分権」であるとし、その要素として「機関委任事務の廃止」と「三割自治の改善(財源移譲)」を挙げています。


    さらに、今度は視点を自治体側に向け、ただ分権を実現しただけでは活性化が期待できない現状の地方の課題を指摘します。
    筆者は自治体を「先駆自治体」と「居眠り自治体」とに分け、今後必要になる施策は、先駆自治体がますます居眠り自治体との格差を広げる自治体間競争の誘発であるとし、それによって競争の過程で市民の批判が起こり、居眠り自治体も目を覚まさざるを得なくなると述べています。

    ここで筆者が重視するのは市民自治という観点であり、筆者の言葉を引けば
    「<私>がヨコに連帯・共生して<公>をつくるという共和型の文脈です。市民相互の自治・つまり自助・共助による共和型の政治をつくるという考え方がこれです。」
    となります。
    こうした市民自治を実現していくためには日本の市民はまだまだ未熟で、政治への市民参加や情報公開などによる市民自治訓練が必要だとしています。


    自分の卒研の基礎として読んだ本で、基本的な議論の流れは分かりやすくてとても良かった。ありきたりと言ってしまえばそれまでだけど、「自治」「分権」「市民」といったキーワードで研究を進めようと考える学生にとっては基礎文献として良いと思います。

    また、自身のテーマとして「自治」「分権」を挙げていながらもそのキーワードを戦後の日本政治の文脈の中で捉えるという作業をしていなかったので、それができた点も良かった。


    いくつか残る疑問点としては、「居眠り自治体」が目を覚ます方策が具体性に欠けるのではないか、という点。自治体間競争と市民の批判によって目を覚ますとされていたが、市民の批判に応える姿勢や力のある自治体はそもそも既に目を覚ましている自治体だけではないのかと思ってしまう。(この点に関しては後に出版されている『自治体は変わるか』の中で自治体職員の教育について触れている箇所があったので、それがこの疑問に対する筆者の回答であるかもしれない)

    さらに、「市民自治」に関しても疑問が残る。<私>の連帯~、という部分はそのままソーシャルキャピタルの議論と重なるものだと思うが、政治文化としてのソーシャルキャピタルが低いという日本の現状と、市民自治の実現の間にあるギャップをいかに埋めるのかという点である。
    筆者はこのギャップを市民参加の制度化による市民訓練を行うべきとしているが、ソーシャルキャピタルの蓄積が制度化によって実現するのか、という大きな疑問がどうしても残ってしまう。

    と、まぁこの疑問を残しながらも、この大きな疑問を自分の卒論で扱っていこうと、自分の問題関心の居所を見つけられたという意味では本書にはとても満足しています。

  • 言うことはその通りだと思う一方で、市民運動的な楽観さをどうしても感じてしまう。
    「先進自治体」と呼ばれていても、人事異動、退職、選挙などでいくらでも後退するのは、鷹巣などに見られる。「先進的」と評価されているのが「自治体」という組織のようでいて、実は一皮むけば一個人の才覚と踏ん張りを評価しているに過ぎなかった、という例は数多い。市民の力がそうした後退を防ぐというのもわかるが、市民の声を受け止めることのできる職員をどう継続的に生み出していくかが本当に難しいと思う。

  • 地方分権の意義と課題を解説。特に、自治体の成熟と都市型社会(P54〜)、官治・集権から自治・分権へ(P58〜)、成熟改革としての分権化(P61〜)は秀逸。

  • 地方自治、分権の論点が講演形式でまとめられた基本書。

  • 前期の副読本として。わかりやすく書かれてある。

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