看護: ベッドサイドの光景 (岩波新書 新赤版 430)

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  • Amazon.co.jp ・本 (241ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004304302

感想・レビュー・書評

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  • ジャーナリストによる、患者一名と十数人の看護師に対するインタビューを基に構成されている。病むとはどういうことか、病める人を看るとはどういうことなのかについて、考えさせられた。

  • 看護師という職業、役割、その特殊性!


     暮らしのエッセイ本『独りの珈琲』で出会ったのをきっかけに、関心を寄せていた増田れい子さんの著作。
     うってかわって『看護 ベッドサイドの光景』は、緊張感あふれる取材記録です☆ 診療や手術とは違い、その後も生き続ける患者の近くにいる、ナースという職業や役割に光を当てた一冊。著者が新聞社を去り、フリーの活動に移ったタイミングで行った取材と執筆の結実です!
     取材に応じた方々は、特に気骨のあるベテランナースぞろい。著者は、入院、療養、救急医療、緩和ケアなど、重症のケースに寄り添う看護師(1996年当時は看護婦)にぶら下がりリアルを見たうえで、その経験、生き方、考え方まで、くわしく話を引き出しています☆
     一人の患者の生にどれだけの計画や注意項目があるのか、患者本人にも家族にもほとんど知られることがない、水面下の苦労に頭が下がります★

     ところで、医療従事者というと、お医者さんに対する尊敬や賛辞、「治してくれてありがとう」という感謝を示す人はときどき見かけますが、看護師さんに敬意を表す人ってどのくらいいるのでしょうか……?

     この本の執筆当時は、「看護婦=女性の仕事」というイメージから軽視される傾向が見られ(怒!)、その問題を増田さんはするどく指摘しています☆ この点だけは、現代では性別による職業分けや偏見は改まりつつあり、いい波が起きていると言ってもよさそうです。
     しかし一方で、「お手伝いさん?」「医師に指示されたことをしているんでしょ?」と思われがちなのは、基本的に変わっていないような気が★ 医師とは役目が違う、看護師は看護師としてプロなのだということは、見直されてもいいのでは。
     この仕事の特殊性、私は本書によってほんの少し垣間見たに過ぎませんが、「こういうまなざしを持つ著者がいてくれてよかった!!」と、エクスクラメーションを重ねづけしたくなるほど強めに感じています☆

  • 看護師の体験談が失敗談中心に成功へのプロセスが面白おかしく書かれていました。患者さんや病院に対して看護師がどう思っているのかという本音がわかりやすく書かれています。綺麗事だけではなく看護師業務の大変さも学ぶことができる。

  • フリーのジャーナリスト増田 れい子による看護師(出版時は”看護婦”)密着ルポ。

    1996年に出された本だから、いまとはだいぶん違った医療社会情勢の中での看護師像が紹介されている。
    今読むと、大きく変わってきたことと同時に、昔から変わらない看護師の姿を感じることができる。

    また、看護師は常に自身の哲学を深め続けているんだなぁと感じた。(個人的には、それもナイチンゲール登場以降だと思うけど)

    このルポの全体のトーンとしては、”大変な環境の中、それでも力強く生きる女性” 的な色調なんだけども、実際はもっと裾野は広いと思う。

    今回、取材を受けたのは13人の看護師さんたち。
    一人一人から特別な物語を引き出している。

    著者はもっと多くの人たちから取材をしているようで、ほんとはもっと紹介をしたかったらしい。

    ----------------
    【内容(「BOOK」データベースより)
    「告知」、ターミナルケア、心の病への癒し、さらに人間ドックや救急医療の現場からみえる社会の断面。人間だれしも病むことに遭遇する。そのとき入院加療はどのようになされるのか。二四時間、患者のもっとも身近にあり激務の日々をおくっているナースたちへの数多くのインタビューから、生死のドラマ、現代の医療のありかたが浮かび上がる。
    ———————
    著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
    増田/れい子
    1929年東京に生まれる。1953年東京大学文学部卒業。同年毎日新聞東京本社に入り、社会部記者、サンデー毎日記者、学芸部編集委員、論説委員などを経て、1991年退社。1984年度日本記者クラブ賞受賞。現在、フリージャーナリスト
    ----------------
    【目次】
    1 病むということ
    ・手術八時間
    ・バラと天使
     ほか
    2 看るということ
    ・一六七万七〇四一床
    ・看護婦(士)への道
     ほか
    3 医療という現場
    ・救命救急センター
    ・看護婦にも看護婦が要る
     ほか
    4 生きるということ、死ぬということ
    ・ターミナルケア(緩和ケア)病棟の日々
    ・静寂への旅立ち
     ほか
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  • 作者は看護師ではなく、ジャーナリスト。その分野を生業にした人じゃないときは用心するようにしてるけど、この本は良かった。丁寧に取材してあって、作者の思い込みが邪魔することもない。

    この本が出版されてから15年以上が経っている。看護婦/看護士から看護師と呼び方が変わり、男性が増え、紙カルテから電子カルテに変わったなどなど変化はあるだろうけど、看護の要点や問題点は昔も今もさしてかわらないのでは。

    医療制度、就業問題、患者や家族、医者などとの関係、結婚や出産、家事や育児の役割分担。やっぱり大変な職業だな。

    職場ではしばしばベテラン看護師のたくましさにびびるけど、看護師さんがたくましくなるのもうなづける気がする。

    『ひとのいのちへのやさしさ、いのちへの愛がとだえたら、人間社会は内部から崩壊するであろう』
    『人間社会の安定の基礎が、ひとのいのちをいとおしむ文化、そこに根ざしたひとびとの生き方にあると私は考えるが、その典型のひとつが看護である。それに正当にむくいることが、結局、人間社会の安定の基礎を、強固にすることにつながるし、人間復権のくさびとなろう』
    『看護とは、人間を人間らしく生かし、また人間らしい死を可能とする人間の仕事である』

  • 内容が古いけど
    今と繋がってる所も多かったと思う。
    看護師を目指す自分にとっては
    いい心構えが出来たし
    なりたいという気持ちが強くなった。

  • 20年近く前の本だけど、素人からみても看護の本質は十分今に通用するルポでした。
    看護師とはなにをする仕事なのか…医師の手伝い、患者の召使いでもなく、患者に生きる力を与えるために個々にストラテジーを立て、絶えず新しいことに挑戦をしていくプロフェッショナルだと、認識しました。

  • 今後の知識の蓄えとして。かなり古いけど読み応えはあった。

  • 15年以上前の本だが、看護受験某予備校の指定図書になっているだけあって、看護の本質に触れたような気がする。

  • 「看護とは、人間を人間らしく生かし、
     また人間らしい死を可能とする人間の仕事である。」


    1996年に書かれた本なので、現状とは変わっている部分が多く、
    「古っ!!」と感じる部分が多いが、
    どれだけ医療が進もうとも、看護師の関り方や想いなど、
    コアな部分は今と変わらないんだなと感じられる。

    昔と今を比べながら読みふけると…
    約15年の差をタイムスリップして楽しく読んでいけるが、
    逆にこの先15年でガラッと医療は変わっていくんだろうな~と
    今後の医療はどうなってしまうのだろうとも考えさせられる。

    何人もの看護師に数日間密着し、取材していることもあり、
    ありありと実際の患者さん物語がドキュメントタッチで書かれている。
    また、患者さんだけでなく、看護師自体の背景も書かれているため、
    より深く内容を深めていくことができた。

    古いのはともかくとして、その人その人の病院での物語が
    今と変わらないため、今読んでも十分楽しめる一冊。

  • 2007/12 読。

  • 書かれたのが10年ほど前で、いまや「看護婦」とは言わないんだけど、そういうことを差し引いても、読み応えがあった。看護師を目指す人は一度読んでみるといいかもしれない。ただ、現実の重さに、たじろいでしまう人もいるかもしれないけど・・・。

  • ナースの話で一番印象的だったもの。

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著者プロフィール

1929年東京生まれ。ジャーナリスト・エッセイスト。毎日新聞東京本社論説委員、学芸部員編集委員、サンデー毎日記者、論説委員を歴任。女性初の日本記者クラブ賞を受賞。住井すゑの次女。2012年逝去。

「2020年 『たんぽぽのメニュー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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