「風と共に去りぬ」のアメリカ 南部と人種問題 (岩波新書 新赤版442)

  • 岩波書店 (1996年4月22日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (240ページ) / ISBN・EAN: 9784004304425

みんなの感想まとめ

本書は、アメリカ南部の白人貴族社会における黒人奴隷の歴史と、今日の人種差別問題の複雑さを掘り下げた研究書であり、特に小説『風と共に去りぬ』とその映画が与えた影響について考察しています。著者は、作品が描...

感想・レビュー・書評

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  • マ-ガレット・ミッチェル(1900-1949)唯一の長編時代小説『風と共に去りぬ(1936年出版)』と、1936年公開の映画をめぐりアメリカ南部の白人貴族社会で虐げられた黒人奴隷の歴史と、今日も続く人種差別問題の複雑さについて現地レポ-トされた研究書。『風と共に去りぬ』は、黒人の劣等意識を煽る人種差別を意図した作品だという、現地の声は根強く、南北戦争の終結と共に人種差別差別は再燃激化、現代社会に深刻な警告を及ぼしている。

  • 影響を受けた映画は何かと問われると、ベタだが『風と共に去りぬ』は挙げたい。

    豪華絢爛なセットとドラマチックなストーリー、男より逞しい気性の荒い美女。
    日本人が護国のために耐えがたきを耐えていた70年前に
    大衆の憧れとしてこの女性像を作り上げてしまうアメリカ文化の先進性に驚いた。

    さて、そんな映画の原体験はあるものの、小説は未読。
    長いので今後も読むこともないと思う(実は映画も長いので1回しか観ていない)。

    本作を貫くテーマである南北戦争についてはよく知らないままであり
    この映画がアメリカ人に与えた社会的な影響についても、やはり分からずじまいだった。


    小説『風と共に去りぬ』に自然と描かれる南部の黒人差別の正当化に焦点を当て、取材をしたのが本作だ。
    結局黒人差別を肯定も否定もせず、何が言いたいのかよく分からない本だったが発見はあった。

    例えば、小説『風と共に去りぬ』では、アシュレイほか南部の伝統的貴族はKKKであり
    奴隷制撤廃を求める北部人と、開放されて凶暴化した黒人を憎悪していたとか。
    作者ミッチェルは伝統的南部人であり、そのことに高い誇りを持っている。
    南部人の良識として、白人黒人に上下の差を認め、その上で愛情を持って黒人奴隷に接するべきだと考えている。
    そして、奴隷制の枠外の者に対しては敵意を示し、KKKを英雄視している。

    そうした描写は映画版では割愛されているので、僕は意識した事がなかったが
    現代日本の感覚で言えば、確実に際どい作品である。


    また観てみよう。いつか。

  • アメリカの黒人差別の歴史は17世紀に始まる奴隷貿易に端を発する(16世紀にはスペイン人が既にアフリカから黒人を強制的に連れてきてプランテーションで使役していた)。アフリカ大陸から大量に労働力として連行された黒人は、白人の主人の下で人ではなく商品として扱われる。多くの黒人を購入し、大規模な綿花栽培を行うものが成功者として君臨した時代。本書のテーマである「風と共に去りぬ」の主人公スカーレット・オハラの父であるジェラルド・オハラもその様なプランテーションを持つ人物である。その後のアメリカの歴史は奴隷制度の是非を問う側面もあった南北戦争、そして1950年代から60年代にかけて、アフリカ系アメリカ人に対する公民権の適用と人種差別の解消を求めた大規模な大衆社会運動となった公民権運動、そして今も社会に根強く残る差別意識の問題など、常に黒人に対する差別問題が話題に挙がる。ニュースでは黒人が警察に射殺される事件なども頻繁に報道されているし、その都度、アメリカ社会には消しても消し切れない黒人に対する差別意識が存在するのではないかと感じてしまう。だが実際のところ、黒人だけがその様に取り上げられるだけで、銃社会のアメリカでは日常的に白人も黒人も関係なく、警察官に撃たれて死亡する事件などが発生しているのかもしれない。事実、その様にニュースが取り上げる事、その事自体が実はアメリカ社会の差別の存在を認める結果につながっている様にも思える。そもそも差別がなければ、わざわざニュースで取り上げる事もなく、「日常」の事件として扱われるのではないだろうか。同じ事は日本でも起こっているかもしれない。埼玉県の川口市周辺に住むクルド人が似た様な位置付けではないだろうか(こんな事を書くと地域住民から批判されそうだが)。決して彼らを差別しているつもりは無くとも、彼らが事件を起こせば大きく取り上げられて、恰もそれが全体である様にステレオタイプ化してしまう社会。
    残念ながら私自身は「風と共に去りぬ」は読んだ事が無い。だが本書はそれが大凡どの様な内容であるかを理解させてくれた。内心、先に小説を読んでおきたかったという後悔もあるものの、本書が先でも十分楽しめそうである。筆者は小説の世界観の背景となっているアメリカ南部の都市を訪れ、同書が黒人にどの様な印象を与えたか調査するところから始まる。前述した様に、黒人を使役していたオハラ家であり、そこには主人公を取り巻く沢山の黒人達が登場する。それは畑仕事に従事する労働力として、家事を任される召使として。そして主人公であるスカーレットは小説の中で黒人奴隷を2人購入するなど、それが当時の南部アメリカ人の日常として描かれている。小説としては世界的にヒットし、映画化もされたアメリカ文学の代表作とも言えるが、今となっては黒人に対する差別と偏見に満ちたものとして、とてもテレビで放映される事はないだろう。その様な作品に対して、差別される側の黒人達の感情を探る。そして作品自体を通してマーガレット・ミッチェルが伝えたかった事が何であったかを探っていくのである。
    アメリカは南北戦争で奴隷制度廃止を訴える北軍が勝利する。小説では、その北軍は南部に住む白人であるアメリカ人を駆逐し、南部アメリカ人の土地を奪う侵略者として描かれているようだが、歴史上は「奴隷制度廃止」を訴えた彼ら北軍の白人達がその後、黒人達の真の解放者となり得たのか。本書はその後のアメリカの歴史を追いかけながら、「風と共に去りぬ」のアメリカの差別の根源が何処にあるかを探り続けるのである。
    人種差別はアメリカに限らず根深い世界の問題である。他民族に対する意識が、人間の本性としても、動物的な感覚としても受け入れ難い何かが、そこにはあるのではないだろうか。肌の色、顔つきの特徴など見た目の違い以上に、考え方や文化、宗教、歴史観など、自分(達)とは異なるものへの恐怖や防御本能が無意識的に生まれ働き、そして排除する。理解している様で理解し切れない生まれや育ちの違いを感じ取り、本能的に攻撃対象として認識してしまうのかもしれない。勝手に黒人はこういうものだ、中国人はこういった性格だとステレオタイプ的に決めつけ、民族そのものを一括りにしてしまう事は、他者を理解し認識する上である程度はやむを得ないが、実際は全ての人が同じであることなどない。日本人より日本的な考えや感覚を持つ中国人の友人が私にもいるが、優しいその人物とは対照的に、いつもお金の話ばかりして好きではない中国人の知り合いもいる。「風と共に去りぬ」の中の黒人像が決してアメリカ社会の黒人像全てではないだろうが、その影響力の強さは今尚アメリカ社会の黒人像に影響しているのではないだろうか。
    本書を読んだ後、小説を読む日が来る事が楽しみになった。

  • 昔、買ってすぐに一回読んだ後、ずっと本棚で塩漬けになっていました。
    最近、謎解き風と共に去りぬという本を買ったので、その前にこの本をもう一度読んでみようとひっぱり出しました。
    この本が出されてから四半世紀以上の時が流れましたが、アメリカの状況はあまりよくなっていないように感じました。
    みんなが嫌な思いをすることのない世界になるといいと思います。

    • Emさん
      昔、買って一回読んで、ずっと本棚で塩漬けになってました。
      最近、謎解き風と共に去りぬという本を買ったので、その前にこの本をもう一度読んでみよ...
      昔、買って一回読んで、ずっと本棚で塩漬けになってました。
      最近、謎解き風と共に去りぬという本を買ったので、その前にこの本をもう一度読んでみようとひっぱり出しました。
      四半世紀以上の時が流れましたが、アメリカの状況はあまりよくなってないように感じました。
      みんなが嫌な思いをすることのない世界になるといいと思います。
      2023/03/02
  • (2014.10.13読了)(2005.05.03購入)
    副題「南部と人種問題」
    「風と共に去りぬ」を読んだのは、40年程前です。従姉から借りて夏休みに読んだのだと思います。当時は、文庫本は買えても、単行本は買えなかったので。
    南北戦争がどうとか、黒人問題がどうとかいうことは考えずに、面白い物語として読んだのだと思います。二組の男女の対比をどきどき、はらはらしながら引き込まれて。
    現代のアメリカ黒人でも、文学好きは、自分が主人公に感情移入しながら読んで楽しめるようです。ただ、白人のためにひたすら忠実に仕える黒人の描き方については、多くの異論があるようです。
    黒人奴隷を長い間、使ってきた人たちにとっては、黒人は、自分の子供の様に大事に面倒見てあげなければいけないもの、という考えで、自立した対等な大人とは考えていないようです。
    白人至上主義をとなえ、黒人を対等な人間とみなさないKKKについても、見方が分かれるようです。
    南部の人たちは、黒人と接することにさほど、違和感はないけれども、北部の人は、南部の人ほど日常の中で接してこなかったので、嫌悪感を覚える人がいる、と言うのも現実のようです。北部の人は、奴隷解放を唱えたけれども、解放した後は、アフリカに帰せ、という考えだったようです。自分たちと対等に一緒に暮らそうとは考えていなかったようです。
    南部の人たちも、黒人を奴隷状態から解放はしたけれど、選挙権は与えず、トイレ、食堂、学校、等は、黒人用と白人用を分離して生活をつづけたようです。バスや映画館の座席は、黒人用と白人用に分離していました。
    公民権運動は、この辺の差別を取りのぞいて行く運動です。
    この本は、「風と共に去りぬ」を現代の黒人の人は、どう評価しているのかを、いろんな人たちに聞いてまとめようとしたようなのですが、…。
    全体的には、アトランタ観光案内という感じでしょうか。
    映画は見ていないのですが、映画の舞台になったスカーレット・オハラの邸宅は、ハリウッドの撮影所に作られたもので、アトランタに行っても見つけることはできない、そうです。テーマ・パークみたいに作ればいいのかもしれません。

    【目次】
    序章 アメリカの見えない顔
    第1章 アトランタ
    第2章 「風と共に去りぬ」の神話
    第3章 黒人たちの南部
    第4章 ミッチェルのテーマ
    第5章 ワシントンの百万人大行進
    第6章 帰郷
    あとがき
    主要参考文献

    ●アトランタ(6頁)
    アトランタは、市内人口四十万のうち、なんと70%ちかくを黒人が占める、文字通り黒人の街である。アトランタ市の市長は1971年にメイナード・ジャクソンが選ばれていらい黒人市長が続き、市議会も圧倒的に黒人が議席を埋め、警察署長も、市の要職もほとんど黒人が顔をそろえている。
    ●クー・クラックス・クラン(30頁)
    クー・クラックス・クランは南北戦争が終わって一年もたたないころ、テネシー州プラスキーという田舎町で初めて結成された。
    解放奴隷と呼ばれた黒人や、北部から流れてきたならず者で南部は混乱状態になったため、この団体は彼らの家庭や妻子を守るための自警団に成り代わった。同時に、戦争で失った南部の自主権を回復しようという目的を持つ秘密結社になったのである。
    ●チェロキー・インディアン(35頁)
    チェロキーは、1838年から翌年の強制移動で、ミシシッピ川の西へ追いやられた。「涙の旅路」として知られるこの過酷な旅で、一万七千名のうち四千名以上が死亡した歴史も、ここでは簡単にだけ触れてある。
    ●プレミア・ショー(55頁)
    このはえあるプレミア・ショーには乳母のマミーを演じたハティ・マクダニエルや子守りのプリシーを演じたバタフライ・マックイーンなど黒人俳優の姿がなかった。1939年の米国で黒人と白人が同じ劇場で席を並べることはなかったのである。
    ●映画「風と共に去りぬ」(57頁)
    映画は、マーガレット・ミッチェルの原作から問題になると思われる社会性や政治性を取り除き、戦争を生き抜くスカーレット・オハラとレット・バトラーの大河ロマンス映画に仕立て上げられている。とくに人種問題や奴隷制についての箇所は大きく省き、黒人奴隷の中の何人かの登場人物も省略した。
    ●メイン州の女(70頁)
    あたしは先月南部へくるまでは黒人というものを一度も見たことがなかったわ。それに、もうこれ以上、見たいとも思わないわ。黒人を見ると、あたしは、からだじゅうがむずむずしてくるんです。黒人なんか、一人だって信用できないわ……
    ●州の権限(99頁)
    南北戦争後、憲法修正十四条によって、黒人は市民権を与えられることになった。これで、黒人と白人は平等になったはずなのである。しかし、南部諸州ではこれに猛反発し、実質的に、この第十四条を反故にするため、州の権限を第十四条に優先させるという判決を勝ち取った。
    ●悪行の象徴(125頁)
    逃亡奴隷を追跡するためのブルドッグや奴隷に使う焼印、黒人の情婦などは、南部人がいかに黒人奴隷に酷い扱いをしていたかという悪行の象徴として北部で語られたものだった。
    ●「クランズマン」(132頁)
    1905年に発表されたディクソンの小説『クランズマン』は、南北戦争の敗北にはじまり、再建時代の南部が、無知で狂暴なもと奴隷によって蹂躙されていくのを英雄的なクランズマンがいかに救済したか、という物語である。
    ●南部と北部(200頁)
    本当の親密感や親近感は、黒人に接したことがなければ、そうは簡単に生まれるものではないかもしれない。一般的に、南部には北部に比べ、そうした親密感がもっとあるというのは、当たっているような気がする。

    ☆関連図書(既読)
    「アメリカ黒人の歴史 新版」本田創造著、岩波新書、1991.03.20
    「キング牧師とマルコムX」上坂昇著、講談社現代新書、1994.12.20
    「風と共に去りぬ1」ミッチェル著・大久保康雄訳、河出書房新社、1960.03.
    「風と共に去りぬ2」ミッチェル著・大久保康雄訳、河出書房新社、1960.03.
    「風と共に去りぬ3」ミッチェル著・大久保康雄訳、河出書房新社、1960.03.
    ☆青木冨貴子さんの本(既読)
    「目撃アメリカ崩壊」青木冨貴子著、文春新書、2001.11.10
    「FBIはなぜテロリストに敗北したのか」青木冨貴子著、新潮社、2002.08.30
    「昭和天皇とワシントンを結んだ男」青木冨貴子著、新潮社、2011.05.20
    (2014年10月15日・記)
    (「BOOK」データベースより)amazon
    アトランタは「風と共に去りぬ」の舞台として知られる。しかし、世界中に熱烈なファンをもつこの物語も、黒人のあいだでは大きな批判や波紋を巻き起こしてきた。豊富なインタビューで南部の土壌を描き出すことにより、この小説と映画の裏にあるアメリカの人種問題の複雑さを明らかにしていく斬新なアメリカ案内。

  • 「風と共に去りぬ」の背景、歴史、マーガレット・ミッチェルの育った環境などを知ることができます。
    また、いたるところに著者が現地で取材したインタビューも載っていて、黒人が風と共に去りぬをどう思っているのかなどもわかっておもしろい。

  • 単に「風と共に去りぬ」作中の差別的記述に着目しているだけでなく、多くのインタビューを中心に構成したことで様々な立場からの人種観を記述することに成功している。過剰に黒人側に入れ込むこともなく、あくまで中立的な観点からアメリカ人の価値観を描写しようとしている点が良い。


    400円。

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