教養としての言語学 (岩波新書 新赤版 460)

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  • Amazon.co.jp ・本 (239ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004304609

感想・レビュー・書評

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  • 金曜日に職場を出る時、たまに「良い週末をー!」なんて言ったりするんですが、これってある意味外来語なんですね。
    日々あまり意識せずに使っている言葉も、この本を読むと面白く感じられてきます。
    言語社会学の先生が書かれた、その分野の「すべらない話」を纏めた本。大学の面白い講義ってこんな感じだったなぁ、と懐かしく思い出されます。

    5章あってそれぞれテーマは異なるのですが、どれも楽しく読めました。人間はなぜ言葉を使いこなせるようになったのか、あいさつで使う言葉の違いは社会的地位のあらわれ、言葉から見えてくる相手との関係性や距離の取り方、などなど。

    気楽に読めて、知的好奇心も満たされる良い1冊でした。

  • 著者の鈴木さんといえば、慶応藤沢キャンパスを開くとき、英語のイマ―ジョンプログラムを統括したことで記憶している。
    だから、長年外国語教育の専門家と勝手に思い込んでいたけれど、「言語社会学」が専門であると本書で知った。

    本書は今から約30年前に出版された。
    とすると、定年退職された後、ご自身の研究のエッセンスを一般向けに書き直した本ということだろうか。

    最初に、記号とは何かという概説から入る。
    ソシュールの「言語の恣意性」の話が出てくる。
    ソシュールが言ったのは、記号と指示対象の間に必然的な関係がないという恣意性。
    そこに、鈴木さんはもう一つのレベルがある、という。
    複数の記号間の関係に、指示内容間の関係が全く反映しないという恣意性のことだ。
    大と小という文字がある。
    指示内容として「大」の意味がある方を大きく書くとか、画数が多くするということはない。
    こういう発想は、漢字を使う言語の研究者ならでは、なのかな、と面白く思う。
    そして、この話が、動物の言語と人間の言語の区別を説明するときのキー概念となる。
    ミツバチの八の字ダンスは、体系性のある記号と言える。
    けれども、飛躍方向の示し方が、現実の角度を反映していて、構造的な写像関係がある。
    そこが人間の言語とは違うということだった。

    そもそも鈴木さんは、動物、とりわけ鳥が好きで、本当は生物学者になりたかったという話が面白い。
    戦時中に学生時代を過ごしたため、戦争の役に立たない生物学をやるとは言えず、やむを得ず医学部に入り、戦後に言語学に転じたという。
    言語学者としては、動物の言語の方から入ったというのだ。
    昔の鳥屋さんが、名鳥を育てるために、幼い鳥を、良い声で鳴く鳥の下で育て、学ばせていたという話も面白い。

    第二章はヤコブソンを援用してのあいさつの機能の分析。
    第三章指示語、第四章の人称の問題は、メモしておきたいことがたくさんあるが…。
    用例集めが大衆文学作品というところに、昔の研究者の大変さがしのばれる。
    (それにしても、石坂洋二郎の小説の引用部分が謎すぎる。夫がスカートをかぶせられて何か怒っているのだが…。)
    第五章は外来語の話で、本書の中ではちょっと異質な感じも受けた。

    なんか、20世紀後半ごろまでの言語学の流れを追体験するかのような気分になる。

  • 大仰な言い回しの割に大したことが書かれてなくて失望した。そんなの当たり前じゃん、みたいな。言語学ってそもそもそういうものなのかな?
    「教養」は功利とは別次元だと言われればその通りなのだが、この本で語られる研究成果が何の役に立つのかもよくわからない。

  • 指示語、人称代名詞の分析が面白い。単に置き換えとしての代名詞だけでなく、話者の個性や個々の言語の特徴が反映されている点は、気づかなかった。「ちょっと、そこの彼」といったように誰かを呼びかける際に、三人称「彼/彼女」を使うシーンをたまに見かけるけど、よくよく考えたら違和感満載。

  • 高校生

  • 言葉は面白い。
    自動車などは外国の言葉があったからこそ生まれたもの。
    コメ、ライスなど人の言葉はモノとの関係性に依存する。
    一人称、二人称などの使い分けは人間の感情と関係する。
    言語の特徴は発言した立ち所に消えてしまうこと。
    今世は呼吸のためのエネルギーしか使わないすごくエコなシステム
    音声は空間を超える。

  • 個性的な言語社会学者として知られる著者が、これまでおこなってきた言語学概論の講義の中から、いくつかのテーマを選んでまとめた本です。

    あいさつ、指示語、人称といった個別的な問題が扱われていますが、議論が進むにしたがって、その言語が語られる社会関係の中で、話者がどのような心的態度を取っているのかということが、深く関わっていることが明らかにされていきます。

    最終章は、近代以降の日本が西洋文明との接触したことで被った言葉の変化を「言語干渉」という概念で捉え、その具体相について取り上げられています。

    言語学概論としては、かなり著者の個性が強く押し出されている印象ですが、いずれのテーマも興味深く読むことができました。

  • 第1章 記号としてのことば
    第2章 ことばの働きとあいさつ
    第3章 指示語のしくみ
    第4章 人称をめぐる問題
    第5章 「言語干渉」から見た外来語

  • 語用論の文献がほしかったけど、なかったので言語学関係の基礎を扱った新書を読んでみることにした。

  • 卒論関係その4。

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著者プロフィール

1943年岩手県生まれ。三菱系エレベーター会社を経て1967年に独立創業し、鈴木エレベーター工業(現在のSECエレベーター)を1970年に設立。独立系エレベーター保守会社という新しい業態を日本に誕生させる。エレベーターの構造を知り尽くす「技術屋」で、ビジネスの面でもエレベーター業界の風雲児として活躍する。

「2017年 『技術屋が語るユーザーとオーナーのためのエレベーター読本』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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