職人 (岩波新書 新赤版 464)

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  • Amazon.co.jp ・本 (210ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004304647

感想・レビュー・書評

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  • 著者、永六輔さん、どのような方かというと、ウィキペディアにはには次のように書かれています。

    永 六輔(えい ろくすけ、本名:永 孝雄(えい たかお)、1933年(昭和8年)4月10日 - 2016年(平成28年)7月7日)は、日本の放送作家、作詞家。

    テレビやラジオなどを中心に活躍。軽妙な語り口と歯に衣着せぬトークで人気を集めた。1961年7月に坂本九により初演され、その後世界中でヒットしたポップソング『上を向いて歩こう』の作詞者として知られる。また短く簡単な言葉で物事の本質を突く、短文の名人としても知られ、著作も多い。『大往生』は200万部を超える大ベストセラーとなった。

    私の父と、ほぼ同時代を生きた方になります。
    私が若い頃、ラジオ番組で軽妙に語っていたのを思い出します。

    で、本作の内容は、次のとおり。(コピペです)

    「職業に貴賎はないというけれど,生き方には貴賎がありますねェ」モノをつくる職人さんたちならではの知恵に満ちた言葉の数々を軸に,対談・インタビュー,そして講演録などで構成する紙上バラエティ.『大往生』『二度目の大往生』に続く,ご存じ永六輔ワールド第3弾.著者いわく,「僕はこれを一番書きたかった」.

  • 『永六輔の誰かとどこかで』を聞いてたのが10年位前か…

    たまにふと永さんの声が聞きたくなることがあります。

    本作も『う~ん、確かに』と思う所と 『さすがに時代が…』という箇所がありますが言わんとしていることは伝わります。

    いい職人を育てるにはいい客も必要…

  • 物語調ではなく、語録を集めた本です。

    行く先々で警察に電話して、計量法反対の芝居をやって曲尺と鯨尺を売るから逮捕してくださいと言った話や
    薬師寺の金堂修復再現時、メートル法の図面じゃないと許可おりない。尺で建てられたものをメートルで図面を書かないと国から予算が出ないから、尺と二種類図面を作る。役人がいなくなったら尺の図面で工事を進める話が面白かったです。
    計量法は目的として「文化の向上に寄与する」とあるのだから併用を認めるべきというのはとても思います。

    良い観客になるためには良い役者になるのと同じくらいの勉強が必要だという言葉があるというのも
    共感するところでした。
    職人仕事も同じで、
    物を作る人に対して、こちらが勉強が必要なこともあります。
    人間国宝と書いてあるとそれだけでよく見えて値段も高くなり、若いときはいい仕事をしたけど今はどうかなということもある。
    職人だけに限らずこうしたことはあるでしょう。

    おちょこ。一万円でも買うといったら500円だったとき
    いいなと思ったらその物に負けたということだから、
    勝った相手に礼を尽くす。
    たとえ500円でも、一万円だと思ったなら一万円出すのが礼儀というのは新鮮でした。
    十万円と言われたら一万円になるまで毎日通って値切りなさい。君がつけた値段なんだから。
    5万円の醤油差し。気に入って何年も使えば一日あたり一円程度。みんながいいなと思ってくれて、食事も豪華に見える。それを考えたら安い。買い物とはそういうもの。
    というのは確かに、そうだとは思うのです。

    庭は座って見るもの。
    たとえば銀閣寺も、盆栽だから木は古びるけれど
    見た目は将軍が見ていたまま。
    足利将軍がご覧になっていた庭をあなたは見ているというのは、考えてみればとてもすごいことです。
    職人のお仕事は怖いものです。

    90歳の仕立てのおばあちゃんが老眼だけど針に糸を通すのはできる。糸を通すのは目じゃなくて指先
    というのもいかにも職人な感じです。

    徳川美術館。職人が作ったものだから見て学んで欲しいから職人の入館料はタダというのは知りませんでした。素敵ですね。

    お札の一万、千円札の縦は二寸五分、四枚で一尺
    B判の元も尺寸
    四六判は四寸×六寸というのは意外に知られていないようですが
    こういうところも歴史がほのみえるところです。

    藍の絞り染職人が自分の風呂敷が料理屋で額に入れて飾られていたのを見て、
    包むものじゃなく額に入れるのに相応しいものになった、どこかで驕っていたなら恥ずかしいと仕事を辞めてしまうというのはすごいエピソードでした。
    買った人が大事に思っているのだからそれはその人の楽しみ方で良いのではという気もするのですが。

    陶芸 同じものを作っても芸術家なら物品税がかからない。職人にはかかる。今は廃止されて消費税というのも不思議な話です。
    売るために品物をこしらえるのではなくこしらえたものがありがたいことに売れるというのは似ているようで違うところです。

    プロだと自分で名乗ればプロになる職業が増えて、プロよりアマの方が腕がいい例が多くなったのは自分も感じます。
    いい仕事をすると作家になり、伝統工芸・民芸ではなくなるというのはなんだか不思議です。

    釣りをしないので知らないのですが、
    値段と質で言えばグラスファイバーの釣り竿には負けるものなのですね。
    丈夫になって折れなくなったから釣竿屋が倒産するというのは悲しいです。
    もちろんこうしたことは他の業界でもあって、逆に倒産したくないから不誠実な商売をしているということも多いです。

    着物は本来楽に着こなせる。堅苦しくしたのは着付け教室というのは心から同意します。

    外材は電気カンナの方が綺麗に仕上がる。日本の道具は日本の素材で育ってきたというのも良い言葉です。

    伝統工芸は100年前のままのやり方という条件が付いていて、ミシンが輸入されて100年以上経つのにミシンの仕事は伝統と見なされないのも変な話です。
    素材も作りかたも100年前と同じでなければいけないのに、電気轆轤を使うような人も中にはいて、昔ながらのやり方でやっている真面目な人もいてというのは
    買い手として目利きができるようにするべきなのだろうなと感じます。
    確かに徒弟制度の世界は物だけでなく人も作ってきました。

    いろんな業界で言われていることですが、職人が使う道具を作る職人がおらず、材料もないということに
    もう少し危機感をもつべきなのではないでしょうか。

    生活はしやすくなったけど暮らしはしにくくなったというのも本当にそのとおりだと思います。

    感動するのは知らないことを知った時ではなくて、どこかで自分でも知っていたり考えたりしていたことと思わぬところで出くわしたときという言葉もはっとしました。確かにそういうところがありそうです。

  • すーっと読めてしまいます。たわいもないことが多いと思いがちですが、なかなか奥も深いです

  • 「職業というより生き方」という職人の世界。
    客観的なレポートとは異なる、永さんの独特な
    スタンスだから見えてくるモノがある。

  • 職人語録がおもしろい。ギャップ法のオンパレードw

  • 職人さんの言葉には味がある。

    講演の内容も良かった。

    苦労なんて耐えるものじゃない、苦労とは楽しむものです

    近頃の若い連中だって、きちんと説明してやればけっこう仕事はこなしてくれます。
    やあ見事なものだと思う時もあります。
    <好きなようにやってみな。というと、何もできないのが不思議です。

    氷が溶けて□になるという問題がありました。正解は「水」。そこに「春」と書いた子がいました。
    人生、答えは一つじゃないんです。

    盆栽は育てたら盆栽じゃない。育てない、何百年たとうが育てないようにして生かしておく。だから盆栽なんだ。

  • 面白いところもあれば、偏狭だなと思う所もあった。


    良い観客になるには、良い役者になるのと同じくらいの勉強が必要


    自分自身の基準を持つ。他人があまり評価しないものをいいと思っちゃう場合もある。そのとき、自分のほうを大事にする。自分の眼に自信を持つ

    いいなと思っちゃったら、もう負け

  • 出西窯のインタビュー、よかった。
    それから、あの河井寛次郎さんに京都で買いものの指南を受けた話も、勉強としておこぼれを頂戴できた。

    職人は作家と違う。
    商品は作品と違う。
    民芸は工芸と違う。

    きれいに言葉で、説明はできないけど
    「生活のなかで普通の人々が使ってなんぼ」
    というものを、より愛したいと思います。

    「丹精込めて職人がつくったものというこもになれば、まちがいなく、使えば使うほど、よくなるんです。
    機械のつくったものは、つかいはじめがいちばんよくて、あとは悪くなっていくけれど、職人がつくったものはそうじゃない。
    木造家屋もそうでしょう。
    使い込んで、そして、いい家になっていくんですね。」
    ここが、すごく納得できるところです。

    永六輔さんの話はほんとに面白い。
    ふりおとされないようにしがみついて、聴いてました(読み物だけど)。

    次は、金沢の職人大学の教科書、幸田露伴の五重塔を読んでみたい。

  • 20年来の付き合いがある親方がお年玉に弟子たちへ曲尺を渡したところ、警察に叱られたという一件をきっかけに、尺貫法復権運動を起こし拡げていく中で、曲尺・鯨尺など異なった尺度でモノつくりをしてきた職人さんたちと深い交流が生まれた事で、この一冊が作られたのではないかと思う。
    この岩波新書の第1刷が1996年10月21日とあり、ざっと20年前。著者の永六輔さんは今年2016年7月7日に満83歳で永眠されました。
    この本に収録されている職人さんたちの言葉やエッセイ、公演で語られている背景は、20年後の現在では既に跡形も無くなってしまっているのではないかと思われるが、うっすらと記憶を呼び戻す事ができた。
    また、身近に溢れている諸々とは異なった尺度で、一味も二味も違う職人である永六輔さんという人物に、失って気づいた気がした。

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著者プロフィール

1933年、東京都に生まれる。早稲田大学文学部中退。中学生の頃からNHKラジオに脚本の投稿を始め、大学在学中から放送の世界にかかわる。以降、テレビやラジオ番組の放送作家、作詞家、語り手、歌手などの幅広い方面で活躍中。TBSラジオ「誰かとどこかで」「土曜ワイドラジオTOKYO 永六輔その新世界」は共に長寿番組として知られる。作詞家として世に送りだした曲には、「上を向いて歩こう」「黒い花びら」「こんにちは赤ちゃん」などの昭和を代表する名曲が多い。著書にはミリオンセラーの『大往生』(岩波新書)をはじめ、『生き方、六輔の。』(飛鳥新社)、『職人』『芸人』『伝言』(以上、岩波新書)、『あの世の妻へのラブレター』(中公文庫)などがある。

「2012年 『上を向いて歩こう 年をとると面白い』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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