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Amazon.co.jp ・本 (240ページ) / ISBN・EAN: 9784004304678
感想・レビュー・書評
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この岩波新書を読もうと考えたのは、挟間美帆さんのFMラジオ番組で穐吉敏子さんがニューヨークの自宅からの録音でゲスト出演した回を聞いたのがきっかけ。私が驚いたのは、オンエアの昨年(2024年)12月時点で穐吉さんがなんと95歳になるということ。そして穐吉さんが自身の代表曲名である「ロングイエローロード」と呼ぶにふさわしい、長い音楽生活の道のりを、矍鑠(かくしゃく)と語っていたこと。このジャズレジェンドの生き方を、今こそ学ぶべきだと思った。
そして私の本棚には、NHK人間講座の2004年6,7月期のテキスト「ロングイエローロード・私のジャズ物語」もある。その両方をあわせて読み直した。
新書もテキストも1人の日本人女性のジャズプレーヤーの自伝として内容は似ている。だが強いて言えば新書のほうは穐吉さんの人生の自身による語りと言え、一方でテキストは穐吉さんを軸としてそれに関わったジャズメンとの交流を通じて、穐吉さんの人生と並行するジャズの歴史が語られていると言える。
私が一番印象に残ったのは、穐吉さんとバド・パウエルとの出会いだ。個人的な話だが、ジャズに対して全くの無知だった私の大学生時代、ジャズ好きの友人から一番好きなジャズミュージシャンとして紹介されたのがバドだ。しかも後にある作家が自分の出演するテレビ番組で使った「クレオパトラの夢」のような、どちらかと言えば洗練された曲ではなく、アルバム“the genius of bud powell”の“tea for two”を一押しされた。ジャズ素人だった私も、イントロのクラシカルでメロディアスなフレーズと、それと正反対なバドの真骨頂と言えるピアノの速弾きに続く展開にノックアウトされていた。
穐吉さんのエピソードとしては、彼女のレコードを聞いたバドが穐吉さんに告げた感想というか一言が穐吉さんに感銘を与え、以後の穐吉さんが後進に何か言わなければならない時は「何か良いところを見つけて誉めるように心掛けている」という。これって普通のサラリーマンの私たちにも応用できることですよね、穐吉さん。ちなみに後年、穐吉さんは「リメンバリング・バド」という曲を書いている。また私が改めて穐吉さんの「ロングイエローロード」を聞くと、特に導入部のフレーズがバドのtea for twoを意識していたのかなとも聞こえてくる。
ほかにも穐吉さんのジャズ人として、単身渡米した日本人として、また娘を育てる母として、そしてビックバンドのリーダーとして、(使い古された言い回しだけれど)波瀾万丈の人生が次々と登場する。紹介したい珠玉のエピソードも多いが、泣く泣く割愛する。
そして私が肝要だと思うのが、穐吉さんが言うところの「ジャズ語」という概念について。ジャズの歴史は穐吉さんが渡米した当時まだ浅く、当時のジャズはアメリカ黒人男性の、彼らによる彼らのための音楽のような感があった。そこに日本人として、また女性として穐吉さんが入っていく余地はあったのかどうかを考えるとき、穐吉さんがジャズ語の獲得を目指したという説明は、抽象的ながらもある意味で腑に落ちやすい。つまりジャズは演奏者としてもリスナーとしても、人種や出身国を問わず「ジャズ語」の理解によって深められるということだ。いわゆる蚊帳の外にあった穐吉さんがジャズ語の習得に努めて成果を挙げたという事実は、先に触れたように私たち一般のサラリーマン社会でも応用できるはず。つまり異なる文化だとはじめから逃げず、共通の言語を見つけだすことが道を開くかぎとなりうるのだ。
さらに穐吉さんはジャズに、自分のアイデンティティを形成する“日本的なもの”を入れようとした。そのきっかけはあるミュージシャンとの出会いによるが、詳細は本書を読んでほしい。穐吉さんの名を高めた曲「孤軍」は謡や鼓が入れられていて、正直なところ、ジャズと呼んでいいのかどうかは私にはわからない。しかし音楽に詳しい人ならば、ジャズの文脈が精巧に取り入れられた曲と理解できるだろう。思えばバドなどのビバップと呼ばれる人たちだって、その前のスイングジャズと言われた時代の曲からは全く違う構成ながら、それでも「ジャズ」としてのファンダメンタルな部分は保たれ、ジャズの歴史を引き継いできたのだ。そしてそんな穐吉さんの“挑戦”が、ジャズに新たな息吹きを入れ、ジャズをアメリカの局所的な音楽から、世界的なものへと発展させたのだ。
もう1つ付け足せば、穐吉さんが数々の苦難や失敗にもめげずに走り続けてきたことは、後進のミュージシャンの心の種となり、芽を育み続けている。挟間美帆さんはまさにそう。最後に挟間さんのラジオ番組ですごく心に残った穐吉さんとの会話を書き留めておきたい。
(穐吉さん)「私がこの仕事、仕事というのも変な言い方ですけれど、この仕事を選んだというのは、非常にラッキーだと思うんですね。『おしまい』というものがない。これでいいというのがないですからね。」(挟間さん)「今じゃあこれでいいというのがないとなると、この次は、ジャズボヤージュとしては、どこに行きたいですか?」(穐吉さん)「いやあ、もう少しピアノがうまくなったらいいなと思って、思いながらなまけてばっかり。まずいです。」90歳を越えても日々ピアノの上達を目指しているらしいです。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
現在95歳の現役ピアニスト、作曲・編曲家であり、ビッグバンドのリーダーでもある穐吉敏子さんの、1996年66歳の時に書かれた自伝。NHK「Long Yellow Roadジャズ伝説」を視聴して、遅ればせながら穐吉さん音楽を聴きだした。
無一文で満州から引き揚げてきた17歳の少女が、家計を助けるために別府でピアノ弾きとなり、Jazzにのめり込む。 黒人・男性中心のジャズの世界で、人種差別に黒しながらも、74年「孤軍」で日本人としての自己の音楽を確立し、ヒット・グラミー賞候補となるまでの、苦しい時代のエピソードが中心。岩波新書なので、ジャズファン以外の読者も対象となっているため、ジャズ自体の話は少なめ。
この人がいなかったら、カーラブレイも活躍できなかったかも。 -
ジャズミュージシャン・秋吉敏子の自伝。
戦前戦後のドタバタしていた時代、渡米後の学生時代の熱っぽさが面白い。戦後の言い知れぬ活気というか、あの時代は面白い。また、サラッとした語り口も良い。「よく覚えていない。」
後半はジョージ・ウィーンとの関係から恨み節や、グラミー賞などの受賞候補になったなどの誇示が目につく。
アーティストだからか、所々で話が本筋をそれて時代が行ったり来たりする。また、チャールズ・ミンガスとのエピソードも数行しかないのが残念(自身のコンサート後に褒めてもらった)。 -
日本が世界に誇るジャズの巨人、秋
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1月22日 ジャズの日
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大学新入生に薦める101冊の本 新版 (岩波書店/2009) で気になった本。
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[ 内容 ]
満州からの引揚げ後、ジャズ・ピアニストの道を歩み出した少女は、才能と幸運に恵まれて、一九五六年、憧れの米国留学を果たし、本場ニューヨークで注目を浴びる。
だが、立ちはだかる人種や性の壁、そして出産・離婚…。
作曲・編曲家、ビッグバンド・リーダーとしても国際的に活躍する在米の著者が、波瀾に満ちた過去を初めてつづる自伝。
[ 目次 ]
1 満州に生まれて
2 戦争、そして引揚げ
3 ジャズ・ピアノの世界へ―福岡で
4 東京暮らしの楽しさ、淋しさ
5 シックス・レモンズ、コージー・カルテットの時代
6 実現した渡米の夢
7 バークリー音楽院に学びながら
8 結婚、帰国、出産
9 権力と芸術―ウィーン氏のこと
10 離婚―音楽を捨てるか、娘を手放すか
11 タバキンとの出会い、そしてロスへ
12 ビッグバンド誕生―再びニューヨークへ
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ] -
図書館利用。
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必要なのは、
愛
音楽も
人も。
「子どもも芸術も、共に100%の関心、献身的な愛情を必要とする。何ごとかを成し遂げる人間は一人でいなければいけない」
「孤独を楽しめるということは、あくまでも独りではない、という前提のもとだからこそ。人間に一番大切なのは人間同士の愛情である」
ひとりであって
ひとりではない
どちらのことも愛し
どちらからも愛されたこの人だから
成し遂げられたことがたくさんあったのだろう。
凡人なわたしはせめて
精一杯愛すことから始めなければ。 -
日本人として、ジャズのまさにジャングルを切り開いた女性。
貴重な人生録だ。
ジャズピアニストとして歩むまで、そして歩んできたその道程は
険しくドラマティックだ。
彼女のピアノは本当に優しく、柔らかく、そしてなんとも
リリカルなタッチで大好きだ。
アルバム達と一緒に、併せじっくり味わいたい一作。
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この方のライブは聴きました。
熊本のホテルライブ。
楽しかった。
そしてすごかった!
素敵な女性ですね。この方のライブは聴きました。
熊本のホテルライブ。
楽しかった。
そしてすごかった!
素敵な女性ですね。2009/05/21 -
2009/05/21
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