- Amazon.co.jp ・本 (254ページ)
- / ISBN・EAN: 9784004304746
作品紹介・あらすじ
減らぬ米軍基地、実らぬ経済振興-。一九七二年の復帰以後、本土の関心が薄れるのと裏腹に、沖縄の願いを裏切って厳しさを増した現実。この二十余年、さまざまな困難に立ち向かって粘り強く繰り広げられてきた人々の闘いと、日米両国政府とのせめぎあいを描く。沖縄と日本の将来の重大な転換点を迎えているいま、必携の通史。
感想・レビュー・書評
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沖縄大学名誉教授(沖縄近現代史、社会学)の新崎盛暉(1936-)による戦後沖縄政治史。
【構成】
はじめに 日米安保体制と沖縄
第1章 世替わりの渦のなかで
第2章 孤立する闘いと進行する「一体化」
第3章 保守県政下の動向
第4章 焼き捨てられた「日の丸」
第5章 湾岸戦争から首里城復元へ
第6章 宝珠山発言とその波紋
第7章 安保再定義との闘い
沖縄の戦後史、とりわけ基地問題を反戦地主の立場から描いた著作。
サンフランシスコ講和条約第3条で名実ともに日本の施政権から切り離された沖縄。当然、日米安保条約(旧条約)に定める米軍の防衛範囲にも入らず、琉球米国民政府の下で高等弁務官が行政指導を行ってきた。その間、日本本土の基地が縮小され、その受け皿として沖縄の基地面積が増加した。
そして、「核抜き・本土なみ」を求める祖国復帰運動の先は、核密約込みで基地が維持された本土復帰だった。熱望した日本との一体化は失望と怒りに変わり、米軍基地に利用されている軍用地の借用を求める日本政府とそれに反対する地主との溝は深まる。
このような反発をくみ、沖縄県知事についても軍用地の強制使用に関わる手続きのうち、代理署名・公告縦覧(防衛施設庁が作成した土地調書に押印し、関係市町村長に周知すること)について焦点があたる。
1990年に12年ぶりの革新派として大田昌秀が知事に当選するとこの問題が表面化する。大田知事は当初代理署名・公告縦覧を拒否しながら、政府から基地返還、基地整理についての条件を引きだそうと試みた。そのため、政府-沖縄県での対立がうまれたが、最終決定権は政府にあり、大田知事もバーゲニングの限界のタイミングで折れることとなった。
軍用地借用についての手続き、法的根拠など明快に説明されており、分かりやすい。
一方で、タイトルから想像されるような包括的な沖縄史ではなく、反戦・基地闘争に特化した記述である。かつ、反戦地主側の感情を全面的に肯定した内容でありとても学者が書いたものとは思えない偏りぶりである。とはいえ、沖縄の反戦活動を積極的に擁護する知識人の思考の典型をみるという点で意味があるだろう。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
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