離散するユダヤ人―イスラエルへの旅から (岩波新書)

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レビュー : 4
  • Amazon.co.jp ・本 (221ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004304890

作品紹介・あらすじ

一四九二年にスペインを追われたユダヤ人の足跡をたどる、モロッコ、エジプト、イスラエルへの旅は、追放と交通の路であった地中海の五百年を歩くことであった。二十世紀の悲劇にも通じる、ユダヤ人のながい離散の歴史が、旅の発見と重ねられて様々に呼び起こされ、思想史、文化史の隠れた系譜とともに、ヨーロッパ近代が再検討される。

感想・レビュー・書評

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  • (2005.04.21読了)(2005.04.16購入)
    副題「イスラエルの旅から」
    「1492年のマリア」(西垣通著、講談社、2002年)で、スペインを追われるユダヤ教徒のことを読んだ。パレスチナ問題をパレスチナ人の側ばかりではなくユダヤ人の側からも読もうかと「離散するユダヤ人」という本を本屋で見つけたので、表紙裏を見たら、「1492年にスペインを追われたユダヤ人の足跡をたどる、モロッコ、エジプト、イスラエルへの旅・・・」と書いてあったので、買って読むことにした。
    スペインを追われたユダヤ人は、新大陸に渡ったという話もあるけど、この本では触れられていなかった。
    セファルディ(スペイン系ユダヤ人)、マラーノ(カトリックに改宗したユダヤ人)、カバラ主義者「イサーク・ルリア」と言うような言葉が飛び交い、意味がよくつかめず難儀した。
    辞書で、ユダヤ教とカバラについて調べてみると以下のように出ている。

    【ユダヤ教】紀元前四世紀頃から発達し、モーセの律法を基とし、唯一神ヤハウェを信奉するユダヤ人の宗教。ユダヤ人を神の選民と自覚し、イエスを救い主と認めず、神の国を地上にもたらすメシアの到来を信ずる点でキリスト教と対立。主要聖典は旧約聖書とタルムード。一九世紀末におこったシオニズムの思想的基盤。
    【カバラ[cabala]】〔元来ヘブライ語で伝承の意〕ユダヤ教神秘主義の一。古来より伝えられた神秘的聖書解釈および密儀の伝統をいう。中世以降イタリア・ドイツ・スペインなどキリスト教世界内部にも影響を与えた。

    Amazonでカバラを検索してみたら、占いの本がたくさん出てきた。カバラ主義を勉強するのもなかなか大変そうだ。また、ユダヤ教の聖典は、旧約聖書のみと思っていたが、タルムードなるものがあるとは知らなかった。
    イスラム教の聖典は、旧約聖書と新約聖書とコーランと聞いているけれど、タルムードは、イスラム教徒のコーランに当たるようなものだろうか?

    ●1492年3月31日付のユダヤ人追放令
    「我々は、男女を問わず全ユダヤ人に、我が王国を退去し、決して戻らぬよう命令する旨を決意した。洗礼を受ける用意のあるもの以外は、誰彼の区別無く、1492年7月31日までに我が領土を出て、決して戻って来てはならぬ。もし戻ってきた場合には死刑に処し、その持ち物すべて没収するものとする。」
    ●「ゾーハル」(光輝の書)
    スペイン中世に生まれたカバラ主義者たちの聖典。
    ●ツィムツム
    1572年、38歳で世を去ったカバラ主義者イサーク・ルリアのなぜユダヤ人は彷徨い続けなければならないかを理論付けた基本概念。
    ●マラケシュ
    スペインの対岸にあるモロッコ。1492年のユダヤ人追放令で、およそ2万人のセファルディがモロッコに向かった。1495年、モロッコのフェズに有ったユダヤ人地区メラーは、大迫害が発生し、住民は根絶やしにされた。その後も増えたり減ったりを繰り返し、1967年の第三次中東戦争時におけるポグロムで、20万人から3万人に激減してしまう。
    ●「ドナ・ドナ」の歌
    ドナ・ドナで知られる「仔牛の唄」は、イツハク・カツェネルソンの作詞したもので、「彼の妻と二人の息子が1942年、絶滅収容所に連れ去られた時の印象に基づいて書かれた」と言う説があり、ドナ・ドナのドナは、アドナイ(我が主)に由来すると言うことの確認を試みている。結論は出ないまま終わっている。

    著者 小岸 昭
    1937年 北海道生まれ
    1963年 京都大学文学部独文科修士課程修了

    (「BOOK」データベースより)amazon
    一四九二年にスペインを追われたユダヤ人の足跡をたどる、モロッコ、エジプト、イスラエルへの旅は、追放と交通の路であった地中海の五百年を歩くことであった。二十世紀の悲劇にも通じる、ユダヤ人のながい離散の歴史が、旅の発見と重ねられて様々に呼び起こされ、思想史、文化史の隠れた系譜とともに、ヨーロッパ近代が再検討される。

  • 1997年刊。著者は京都大学総合人間学部教授。

     まず本書を研究書やノンフィクションとして読むのは難しく、むしろ紀行文的エッセイの趣き。つまり、①エルサレム行など著者自身の旅の道程と、未整理なままで開陳された著者の思索過程との合わせ技で展開し、本書をして、著者に生まれた疑問に対する回答書として、他人に判らせようと感じる箇所は多くない。
     特に、紀行文的時系列で叙述されるあたりは、西洋・キリスト教・イスラムの基本的な時的な先後関係の情報を所与の前提にしている。
     換言するに、②読破には、西洋史・キリスト教史・イスラム史。その相互関係といった予備知識を要するのだ。特にユダヤ人の受難史は必須かも。

     さて、本書が展開するユダヤ受難史。その一例として、スペインにおいて、ユダヤからキリスト教に改宗した人々を例に出している。
     新キリスト教徒とも呼ばれる彼らだが、レコンギスタ期、キリスト教に改宗してもなお迫害され、ないしその迫害の恐れがあって、彼らは北アフリカ・モロッコやオランダへと逃避的な移住を試みている。
     この事実は余り見ないし、ユダヤ人の「内なる他者」という現実を、切実にかつ典型的に感じさせる事実だ。


     このような挿話は豊かとも言えるが、尤も、ユダヤ系が散見されるドイツ思想の内実に、かようなユダヤ放浪・迫害史が如何に影響を与えたのか?。本書で提起した著者のこの疑問符に対し、本書が何らかの回答を与えたとは言いにくいかもしれない。

  • ユダヤ人は常に夢見てきた。いつの日か自由になる時がくるものと。夢見ることがユダヤ人の生活の核心にあった。

    「今日私たちは、トーラーの聖櫃をひとつ仕舞い込んだのです」
    これはユダヤ社会においてごくまれにしか使われない崇高な礼賛の言葉。

  •  流浪の民ユダヤ人は、砂漠に追放された民でもあった――

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著者プロフィール

1937年生まれ。ドイツ文学専攻。京都大学名誉教授。著書:『スペインを追われたユダヤ人』、『世俗宗教としてのナチズム』、『マラーノの系譜』、『隠れユダヤ教徒と隠れキリシタン』ほか。訳書:『ゲーテ全集13;「文学論」』、ブロッホ『群衆の心理』(共訳)、ヨベル『スピノザ 異端の系譜』(共訳)ほか。

「2011年 『カバラとその象徴的表現 〈新装版〉』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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