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Amazon.co.jp ・本 (224ページ) / ISBN・EAN: 9784004305026
みんなの感想まとめ
日本の歴史を中世から現代まで幅広く扱った本書は、特に江戸時代から昭和にかけての時代を圧倒的なスピードで駆け抜けます。著者は専門分野である中世に強い焦点を当てつつも、近代史の重要性をも認識しており、その...
感想・レビュー・書評
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日本の歴史(通史)というには,あまりにも中途半端な終わり方…それをわかっていて,網野さんはなぜ本書をまとめようと思ったのか。それはもちろん,編集者からの強い要望もあったのだが,網野さんの「いま言っておかなければ…」という強い思いもあったのだと,わたしは,最終章を読んで理解した。
本書は,上・中・下の3巻もあるのだが,残念ながら17世紀前半までで終わっている。そう明治以降は書かれていないのだ。
いや,少し書かれてはいる。それは「第十二章 展望」と題して…である。わたしは,この十二章を読んだときに「網野さんが一番いいたかったことは,この第十二章に書かれている」と思った。日本歴史研究の大前提をひっくり返すようなことをやっていた網野さんだからこそ,この近現代史(網野さんは,こういう時代区分でさえもまったくその用語を使っていない。その理由も「第12章」~「むすびにかえて」に書かれている)を簡単に記述することはできなかったのだ。
明治政府がねつ造した「日本の歴史」(国史)は,国民教育を通して日本人の血となり肉となり判断の基礎・基本となってきた。そして,それが、最終的にはあの15年戦争を引き起こしアジアの人々と自国民に厖大な被害を出してしまったのだ。そしてさらには,反省の下で歩んできたはずの戦後の学問も,相変わらず明治政府が作った「日本の歴史」の軛から自由ではなかったのではないか。その前提の下で研究されてきた「日本の歴史」は,もう,それだけで,新たな誤謬へと人々を連れていくのではないか。
網野善彦氏は,そのようなことを言いたかったのだろう。だからこそ,まずは,明治政府が前提としてきたその「日本の歴史」の捉え方こそ,再検討する必要があるのだという。
江戸時代以降の歴史・社会の実態については,未解決,未知の問題があまりにも多く,それを度外視して従来の「通説」にたよって叙述を無理に行うことは,現在の私には到底できないことだったのである。(下巻,176p)
また,網野氏が,本諸作の題名を「日本の歴史」ではなく「日本社会の歴史」としたわけにも大きな理由がある。そもそも「日本」の捉え方そのものが,わたしが義務教育で習ってきた「日本」とは違うのだ。アイヌも琉球も,各地方の豪族や権力者,そして庶民や技術者たちも,みんな〈地理的には日本列島と呼ばれている土地〉に住んでいて,それぞれ歴史を刻んできているのだから。
いうまでもなく,すでに述べてきたように,日本列島はアジア大陸の北と南を結ぶ架橋であり,こうした列島の社会を「孤立した島国」などと見るのは,その実態を誤認させる,事実に反し,大きな偏りをもった見方である。(下巻,153p)
網野さんは,『当初,私は「日本列島社会の歴史」という書名を考えていた』と書いている。『種々の議論の末,「日本国」の歴史でも「日本人」の歴史でもないという私の意図は「日本社会」ということばによって読者に十分に伝わるという編集部の御意見に私も従うこと」にして,この書名に決めたそうだ(下巻,177p)。
下巻を読み終わってみて,現在,歴史学者の中でこの続きを書いてくれる人はいるのかなと思った。いるのなら教えて欲しい。
たしかに現代の現実それ自体がこれまでの歴史の書き替えを要求していることは間違いないが,それは直面している転換そのものの性格にふさわしく根底的・徹底的なものではなくてはならない。(下巻,164p)詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
後醍醐から始まる下巻が現代まで!?東西王権の考え方は室町時代においても、関東公方の独立王国ぶりから説明する。著者は最終章で17世紀から現代までを総括するかのような文章だが、それが「むすび」で明確化される。確かに著者は中世史の専門なのだろう。著者は海民国家・民族であった日本が孤立した島国とする考え方が、江戸末期から始まった。明治国家が作り出した虚像が、今なお日本でかなりの力を持つということ、そして河海の交通は明治から急速に衰え、島嶼・半島は社会・経済の発展から取り残されたのは明治以来の出来事だと主張している。実に大胆な主張で面白い!そして昭和の敗戦に至る大きな原因として、著者の明治国家への大きなマイナス評価を説明している。日本民族の優越性を日本人に植え付けた罪は確かに大きいと思う。
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下巻は後醍醐天皇から現代まで。
新書一冊では扱えるわけが無いくらい広い範囲だと思われるが、実際その通りで江戸時代から太平洋戦争まで圧倒的なスピードで進んでいく。
学校では近代史が等閑になっていると常々批判されているが、残念ながらこの本も同じである。
これは筆者が日本の中世を専門にしているためであり、一人で書く以上仕方のないことである。
いやむしろ、近代史の項目では琉球処分、偏向的な民族主義的な教育、アジア侵略などにしか触れられていないことを考えると、近代史が少ないのは幸運と言えるだろう。
筆者は明治政府が江戸時代を否定したことを批判しているが、戦前の歩みを否定するのなら、それは同じではないか?
網野さんは日本列島に生きる多様な人々を捉えることで、豊かな日本史を提示しようとしているが、これは現代にも通用するものだ。
網野さんに学ぶことは多いが、戦後70年以上過ぎた今となっては、近代史にも多様な視点が求められるのではないか。 -
最終巻は何と室町時代から昭和まで。ものすごい掛け足で、この分量配分の異様ないびつさだけが他の日本史本と根本的に異なる所。「あとがき」で本書成立の経過を知ってその理由がよくわかった。最初から通史を書くつもりはなかったのね。
口述本だからか無駄に接続詞で繋がれて一文が長く、読みにくいことこの上ないが、まあ勉強にはなったかな。「日本社会の」歴史なのだからもう少し支配者目線でない歴史観を期待したのだが、ちょっと期待外れ。 -
鎌倉から現代まで。
上巻の前書きで述べられているように、江戸以降は著者の専門の関係からか駆け足で片づけられている。
一方、室町時代の列島の風俗についての記述は著者の本領というものを感じさせた。
天皇、貴族、武士、農民。これで日本列島の歴史の大部分を片づけてしまうことを、著者は強く拒んでいる。神社、寺、そこにまつわる職能民、海賊や漁撈民、悪党、様々な人たちが歴史のいたるところで活動し、それが現代の日本人にも確かにつながっているということをこの新書を通して、一般の読者に伝えたかったのだなあというのが、読んでいてすごく分かった。 -
なんとなくの日本史に対する思い込みを覆してくれる、刺激的な瞬間が何回かありました。面白いです。おすすめ。
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江戸時代というより義満死後以降なのかな、本書でも急に内向きの描写に様変わり。日本人が好きな戦国時代の描写って詰まるところ内輪揉めやからなぁ。
戦国時代を鉄砲とかキリシタンみたいな観点でなく、徹頭徹尾商業の観点から眺め直すと面白いような気がする。って全く根拠も何もないから全くもって無責任な素人考えですが。
ところで明治時代の罪というか隠微な影響というのは注意深く自覚すべきなんだろう。これが本書の要点であり、そのことについては基本的には反論するところなしです。 -
建武の新政から江戸初期まで。その後は最終章で簡略に語られるのみ。高校日本史程度の知識が無いと読み通すのに手こずるかも。最終章最終節を先に読んでおく方が網野史観を理解し易い。
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社会構成の展開を概観しながらも日本通史の叙述を積極的に試みている。
地域区分を視野に、さまざまな日本の構造を広く視野におさめようと、琉球や蝦夷地といったある意味異質な文化、民族を包括した日本史像を示している。
14、15世紀に画期があるとする主張を理解するには、さらなる読み込みが必要というのが、読後の感想である。
なぜなら太閤検地や統一政権成立に一定の意味があるという歴史観にとらわれすぎているのかもと考えながら、今一度の読み込みをしないと、網野構想の内容を理解できまい。
あるいは上、中を読み込むことによって、理解がすすむのかとおもいつつ、漸く下巻を読了した。
網野史学を解するには、通しで読むことがたいせつなのであろう。 -
たまたま入れた奈良の豊住書店で見つけた新古本。著者自身が「むすびにかえて」で書かれているが、社会の歴史というよりは政治の歴史が主な内容になってしまっている時代もある。さらに、江戸時代の後半からは展望という形で軽く触れられているだけだ。としても、自分の中では多くの学びがあった。だいたい、そんなことは当たり前のことなのだろうが、日本という国ができたと言っても、きっとそう思った人がいたというだけで、多くの日本列島に住む人々は、そんなこと関知せずに生きていたのだろう。時間的にも空間的にもずいぶんとあいまいなわけだ。いまのように、ここからここまでが日本国であるとか、誰が日本人であるとかはっきりしていたわけではないのだろう。それから時代区分にしてもそうだ。語呂合わせとかで年台を覚えていたとしても、そこからはっきり鎌倉時代や室町時代が始まるわけでも終わるわけでもないのだろう。だいたい、京都で元号を変えたとしても、他の場所ではそれに従わないで、自分勝手に決めていたというようなことも、何度もあるようだ。そんなこと、日本史の勉強をちゃんとしている人は分かっているのかもしれないが、僕にとってはとても新鮮な話だった。さて政治の歴史を読んでいても事実の羅列で頭をかすめていくだけなのだけれど、大河ドラマで見ている時代だけは立体的に浮き上がってきた。道長の時代、鎌倉殿の時代、真田丸の時代(真田という名前は本書には登場しなかったと思うが)。西郷どんの時代はさらっとしか触れられていないので立ち上がっては来なかったが。明治についてはかなり批判的に書かれている。いろいろな仕組みを西欧から取り入れて、追いつけ追い越せとやってきたように言われることが多いが、たとえば経済についての用語など、市場とか手形とか株式とか全く翻訳語がなく、日本で独自にそういう考え方をしていたのだ。こういう点は梅棹忠夫もよく言っていた。大陸の西の端と東の端で同じように歴史は進んでいったと。それから、海上を通してのいろいろなやりとりが早い時代から頻繁に行われていたという。また、百姓というのは農業をする人のみを指すというわけではなかったという。このあたりは網野善彦の他の著書でも読んでいた内容だが、復習になった。そして今回一番の疑問点として出てきたのが、定子や彰子の読みについてである。「さだこ」「あきこ」とふりがながある。それはどこまで一般的なのであろうか。先日、源氏物語を専門にされている先生が、大河ドラマ「光る君へ」で「さだこ」「あきこ」と呼んでいるが、そんなことはあり得ないです、とはっきりおっしゃっていた。次に会ったときに質問する材料としておこう。いやあ、まだまだ知らないことがいっぱいあっておもしろい。当たり前だけれど。
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下巻では、建武の新政から江戸時代の初期までがあつかわれています。
中巻で示された、京都を中心とする「西の王権」と鎌倉を中心とする「東の王権」という枠組みは、室町時代に入って地域の分立の傾向が強まるとともに、それらの相互の結びつきも強くなり、多元性をうちに含みつつもしだいに「日本」という国民国家の基礎となっていく経緯がたどられています。同時に、経済社会の活発化がこうした歴史の方向性と軌を一にしていることについてもある程度立ち入った記述がなされており、著者が批判するような単一の色で塗りつぶされた「日本史」とは異なりながらも、多様性を統合するような「日本史」の見かたが示されています。
こうした「日本史」の大きなヴィジョンをえがきだすことができることが一人の著者による通史の魅力だということを再認識しました。 -
現在の日本史の骨格としての位置付けか。
それだけ、石井進、網野善彦両先生は偉大であったと感じる。
まだまだ、日本史の研究過程は深まっていくのだろう。
私もその端くれ?として、日本史を深めていきたい。 -
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下巻は建武の新政の失敗から江戸初期まで。個人的に、織豊期以降はあまり興味がないのだけど、こういう社会史として見るとなかなか面白い。武将が切った張ったしてるだけが歴史じゃないし、それよりもっとたくさんの無名の人々の営みがあって社会というのは動いていくんだなと。
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下巻は、後醍醐専制から江戸時代末期まで。但し江戸時代は駆け足で概観するのみ。また、最終章「展望」では、明治以降現代に至る近現代史について、著者の思想的な視点から語られているが、かなり左寄りになっている点が残念。確かに、稲作中心の農本主義のイメージが我が国の実態に合っていないという著者の指摘は鋭いと思うが、この点からの歴史の再構成と、明治以降先の大戦に至る日本社会・政治の評価の問題は分けて欲しいんだけどなあ…。
上中下3巻を通じて、改めて、戦国時代までの日本列島が政変や紛争に明け暮れ、いかに安定していなかったかが良く分かった。江戸時代や戦後70年がいかに貴重な時代であるかも。 -
歴史観は理解できます
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建武新制に貨幣経済の萌芽を見出すところが、斬新であり網野善彦の史観の中心でもある。日本を農業国でないとした網野善彦は、土地に経済基盤を置く史観から、新しい史観を提唱したと言えるだろう。
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日本の歴史(中世ver)
通史を押さえるには丁度良いね。 -
[ 内容 ]
社会と「国家」とのせめぎあいの前近代史を、社会の側からとらえなおす通史の完結編。
下巻は南北朝の動乱から地域小国家が分立する時代を経て、日本国再統一までを叙述し、近代日本の前提とその問題点を提示。
十七世紀前半、武士権力によって確保された平和と安定は列島社会に何をもたらしていくのか?
[ 目次 ]
第9章 動乱の時代と列島社会の転換
第10章 地域小国家の分立と抗争
第11章 再統一された日本国と琉球王国、アイヌ社会
第12章 展望―十七世紀後半から現代へ
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[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ] -
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