日本の誕生 (岩波新書 新赤版 510)

著者 :
  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (223ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004305101

作品紹介・あらすじ

ヤマトを本拠に発展した「倭」-「日本」の王権は東アジア世界の歴史の潮流のなかでどう展開したか。著者は、歴史の歩みをたどりつつ、国号問題から天皇制、政治システムや「家」の制度、さらに宗教意識・美意識など、現代につながる興味深いテーマを縦横に論じ、そして、平安時代に成立するヤマトの古典的国制・文化の総体に挑む。

感想・レビュー・書評

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  • 日本古代史の研究者である著者が、「日本」という国号や「天皇」という称号をめぐる問題について考察をおこない、一国史としての「日本史」の枠組みを超えるような視点を示している本です。

    日本という国家のアイデンティティの形成過程を古代史のなかにさぐっていくなかで、著者はヤマト王権を支えている氏族性と、中国を手本とする律令制という二つの制度を調停しつつ、国家運営がなされてきたことを明らかにしています。「あとがき」で著者は、本書の草稿を読んだ研究者の一人から、「やはり日本は特殊な国だということにならないか。その点では皇国史観と同じではないか」という感想を寄せられたということに触れて、「日本」という一国史的な枠組みを「相対化するためにこそ、個性をきちんととらえなければならない」と述べていますが、東アジアの活発な交流のなかで「日本」に固有の統治のありかたがかたちづくられてきたことを明らかにすることで、こうした著者の意図が果たされているとみなすことができるように思います。

  • 【簡易目次】
    目次 [i-iii]

    序章 「それでは憶良がかわいそうだ」 001
    一 東アジア世界と「倭」の出現 017
    二 倭の女王と交易 029
    三 大王(天皇)にも姓があった 049
    四 東海の帝国への道 069
    五 クーデターと「革命」 093
    六 「日本」の国号の成立 115
    七 大仏開眼と金 139
    八 ヤマトの古典的国制の成立 161
    終章 ヤマトと「日本」 197

    参考文献 [213-218]
    あとがき [219-223]

  • 古代史の本。倭(ヤマト)と呼ばれた国がいつから「日本」となったのかについて書かれていた。いつも思うんだけど、歴史の本って史実と主観の違いを見分けるのって難しい。。

  • 1997年刊行。著者は青山学院大学教授。タイトルどおりの書だが、個人的には、国号誕生に関わるという意味で、天武朝が議論の中心になると考えていたが、本書は、漢書地理志の時代から平安中期までを広範囲に議論する。しかも、その特徴は、①大陸との関係性の意味づけが新規(大陸からの文化・知識の継受ではなく、外交を基軸とする)、②他の中華周辺諸国(吐蕃など)と日本との比較制度論、③渡来人の意義を十分に評価する点、④文化・制度の独自性の成立過程を巨視的、つまり東アジア全体の住民移動と結びつける視座などか。
    鉄の時給、さらには、金や銀の自給が実現するにつれ、朝鮮半島や大陸との関係性に影響を与えたという視点がなかなか興味深い。

  • 人にもらったのか自分で買ったのか覚えていないが、
    積読状態だったものを読了。

    歴史の基本的な前知識がないと多少難しい内容になっているが、
    意外に面白い内容。
    著者独自の見解、推定がけっこう盛り込まれている。
    本当に日本誕生について知見を深めたかったら、
    同様の本を複数冊読むべき。

  • ヤマトの国(倭国)から「日本」に変遷した経緯・理由の追求。その結論は、ちょっとよく理解できななかったけれど、普段は縁のない少ない古代史(当時の東アジア史を含む)に触れることは勉強になる。この一冊を通じて、「日本」という国のアイデンティティを考える材料には事欠かない。

  • 日本という国号がいつ出来たか?天武・持統時代の『日』への拘り、もし、壬申の乱が近江王朝の勝利になれば、別の国号であった。則天武后時代の記録に『日本』が登場する。そして天皇の称号、天皇家には姓が何故ないか。ヤマトとニホン、ニッポン、そしてジャパンの関係。日本という国が皇国ではなく、相対的に偶々、現在あることを明らかにしますが、やはり天皇制の存在は大きいことを逆に感じます。

  • 日本の歴史について書かれた本。
    前半は中国王朝について相当なページ数を割いています。
    日本と中国王朝についての関係、どうして天皇という名は生まれたのかについて書かれています。
    日本を知る第一歩には手ごろな一冊だと思います。

  • 雑誌の特集から、この書籍の存在を知りました。
    歴史の本はそれなりに読む方ですが、古代史についてはあまり得意ではないので、非常に興味を持って読み進めることが出来ました。

    古代の日本史では、中国や朝鮮半島の歴史とセットでとらえる必要があり、特に地理的な環境を基に考えることが多いと思いますし、現に私もそう考えていました。
    また、天皇制がなぜ持続できたのかということに目が行きがちです。

    ここで指摘されているように、古代日本の成立を考える上では、それだけでは不十分であり、当時の外交の視点をもって、なぜ日本が特色ある歴史・個性を持ち得たのかを考えなければいけないと思います。

    今後とも歴史に対する認識を深めたいと思っています。


    歴史のなかで、その後の国制や文化の基礎となり、のちの時代から何らかの規範意識をもって回顧される国制や文化を「古典的」と定義、
    ヤマトの古典的な国制・文化の枠組み
    (イ)天皇を核とし、摂政・関白、院(上皇)、征夷大将軍などがその権力を代行する。
    (ロ)五畿七道諸国(大八州)を領域とする。
    (ハ)イエ(家)の制度。
    (ニ)ヤマト言葉(母音は5つ)。かな文字と漢字の併用。
    (ホ)宗教意識の基層としての神仏習合。『古今集』に代表される自然観・美意識。

    <この本から得られた気づきとアクション>
    ・歴史はしっかり勉強しよう。ビジネス書の読書もいいが、同時進行で考えていきたい。
    ・ものごとはすべて周囲との関係の中に存在する。そのような歴史背景をもつにいたった理由を視野を広くして捉えてみる。

    <目次>
    序章 「それでは憶良がかわいそうだ」
    1 東アジア世界と「倭」の出現
    2 倭の女王と交易
    3 大王(天皇)にも姓があった
    4 東海の帝国への道
    5 クーデターと「革命」
    6 「日本」の国号の成立
    7 大仏開眼と金
    8 ヤマトの古典的国制の成立
    終章 ヤマトと「日本」

  • あらためて日本の誕生の歴史の知識が得られてよかった。

  • 最初に言います、ごめんなさい。そこまで歴史に興味がなかったので、ざっとしか読んでないです。日本の始まり、天皇に関して、日本と切り離せない、朝鮮・中国について、などなど時系列にまた著者の推察をもとに述べられていて、内容は充実していると思います。なので、また読みます。僕が悪いんです、ごめんなさい。

  • 紀元前のクニから、倭国、卑弥呼の時代、大化の改新、平安京の時代までの歴史を中心に、中国と朝鮮半島の動きと外交的な影響、文化的側面(姓名、宗教、和歌など)から日本の成り立ち(とりわけ誕生期)について著者の見解を交えながらわかりやすく書かれた本。

    特に、中国王朝と朝鮮半島の動乱の中でのヤマトという視点で、日本の創世記のアイデンティティーを見ようとしている。そのダイナミックな視点がおもしろかった。

    「日本」の名前の由来、「天皇」号の成立のいきさつなど、よくよく考えるとわからないことも解説されている。
    「日本」は、中国から見て「日出づる処」であり、当時のヤマトが中国と交易をする際に名乗ったと言われている。日本列島には太陽神信仰が広く分布しており、天武・持統天皇の時代は「日」のイデオロギーが鼓吹された時期でもあったという。
    「天皇」号の成立時期やその背景は、はっきりわかっていないという。「天皇」の前は、ワカタケル大王や倭国王など、「王」が使われていた。

    このほかにも、「大宝律令」で有名な「大宝」の元号は、これまで新羅から輸入していた金が日本から産出されたことを受けてつけた元号だったが、後に、金を産出した対馬の郡司の捏造であったことが判明した、という逸話まで紹介されている。

    日本のルーツを探る初めの一歩としては、読んでおいて損のない本だと思う。言葉もわかりやすく、非常に読みやすい。

  • まだ手をつけてないです
    読まなきゃ先生に返せない/(^o^)\

  • これは名著。古代史必携

  • H先生推薦の一冊。実は一年前にも読んだが、内容は全く覚えてないほど印象が薄かった。先生も最初読んだ時そうで、二回目でそのすばらしさに気づいたという。

    「東アジア世界」、「冊封体制」という国際秩序を多少なりとも知った今、少しづつ、この本の意味がわかってきた。

    一言で言うと日本という国、制度、その代表、天皇制は、「日本」という閉ざされた空間の中で自発的に生まれたのではない。
    朝鮮半島、中国などの東アジアとの外交関係なしには成立し得無かったということである。

    考えてみると、これは当たり前のことで、どの国であれ、外国との関わりなしには存在しないであろう。
    しかし「島国日本」もしくは「日本史」という閉ざされた概念の中にいては、見落としてしまいがちなことである。

    筆者は淡々と書き進めるひとらしく、重要なことを、何の文章の盛り上がりもなしにさらりと書いて終わってしまう。そのあたり宮崎市定と違って、重要なことがどこかわからず、ぼーっと読んでしまいそうな作品。

  • 「倭」日本の誕生、展開をみる一冊。

  • 内容覚えてねぇーー

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著者プロフィール

デュッセルドルフ国際学校・国際バカロレア日本語教諭

「2018年 『国際バカロレアの挑戦』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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