相対化の時代 (岩波新書)

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レビュー : 4
  • Amazon.co.jp ・本 (223ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004305255

作品紹介・あらすじ

いま、世界がどう動いているのか見えにくい。国家や政府、政党や企業の意味、さらに個人のアイデンティティが混迷している。構造全体が大変動する時代に生きる私たちは、現在に埋没するのではなく、自分と世界を歴史のなかに相対化することで、未来のビジョンをつかむことができる。この本は、市民社会の視点からの、その試みである。

感想・レビュー・書評

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  • 戦争・紛争の相対化による局地化の帰結として、平和と局地戦争との共存が、むしろ世界の常態にさえなってきた。戦争と平和の共存の日常化である。p34
    戦争・紛争を局地化するということは、裏返せば、平和を局地化することでもある。そして、自国が直接にかかわる地域の平和については外からの脅威が減少したという認識に立てば、その国が内向きになるのは当然である。現在の多くの国が見せている内政優先主義は、こうした戦争と平和の分割に密接に関係している。一元的な「新世界秩序」は、内側から相対化され多元化されてきたのである。p36

    <アイデンティティの空洞化>
    【原理主義運動の背景】p47
    国家が市場によって相対化され、国家への忠誠や同一化(identification)が空洞化するにつれ、人間のアイデンティティを確保する国家の能力は衰弱せざるをえない。したがって、人間は政治(国家)や経済(市場)から離れて、文化の領域に回帰していく。→原理主義運動へ
    そして、原理主義運動は、単なる脱政治化した文化運動ではなく、他面で社会の政治生活や経済生活に食い込んでくるという形で、国家や市場への逆襲行動をとることが少なくない。

    旧来型の「パワーポリティクス」的勢力均衡論は成り立たなくなってきた。
    ①通商や海外投資や情報浸透などにより国際的相互依存が高まるにつれて、戦争で失う価値のコストが高まり、「政治の延長」として戦争を想定するインセンティブが失われてきた
    ②かりに武力で相手を破り占領することに成功したとしても、被占領国民の協力や支持がなければ、占領コストが高いのみならず、早晩撤退を余儀なくされる。その意味で、軍事的手段のもつ有効性と正統性は、民主主義の普遍化の中で低下してきた。
    ①は市場による国家の相対化の現れであり、②は市民社会による国家の相対化の現れなのである。p77

    【冷戦後の四つの変動】p201
    ①世界軍事秩序の単極化②資本主義的市場経済の世界化③ナショナリズムの普遍化④民主主義の普遍化という、世界的な4つの変動のトレンド。これらは、現在の世界の特質であるが、しかし、それらは近代の歴史を貫いている。すなわち、はじめの二つは、国際化のトレンドの現れで、それは、国境を超え、主権国家をしだいに空洞化する変動過程である。あとの二つは、平等化のトレンドの現れで、それは民族の平等な権利と人間の平等な権利とを指向する変動過程を指している。前者は水平的な拡大であり、後者は垂直的な深化だと言ってもよいだろう。

  • [ 内容 ]
    いま、世界がどう動いているのか見えにくい。
    国家や政府、政党や企業の意味、さらに個人のアイデンティティが混迷している。
    構造全体が大変動する時代に生きる私たちは、現在に埋没するのではなく、自分と世界を歴史のなかに相対化することで、未来のビジョンをつかむことができる。
    この本は、市民社会の視点からの、その試みである。

    [ 目次 ]
    世界政治の変動
    沖縄・安保の文脈
    アジア地域の和解と協力
    「世界秩序」の逆説
    平和主義の運動と制度構想
    核廃絶への二つの道
    いまの課題は何か―東アジアを中心に

    [ POP ]


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    [ 参考となる書評 ]

  • 国家すら相対化された時代の中で、政治において、何を絶対的な価値におき、守っていくべきかを考える。
    こういうと保守的な印象があるでしょうが、岩波新書なので当然リベラル的立場から個人の自由などを擁護していきます。

  • 現代の国際関係 指定図書

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著者プロフィール

東京大学名誉教授 国際基督教大学平和研究所顧問

「2013年 『脱原発のための平和学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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