イスラム教入門 (岩波新書)

著者 : 中村広治郎
  • 岩波書店 (1998年1月20日発売)
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  • Amazon.co.jp ・本 (242ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004305385

イスラム教入門 (岩波新書)の感想・レビュー・書評

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  • イスラム教入門の書名が示すように、本書を読めばイスラム教の概要が利用できるようになっている。概要だけあって、それぞれに深く切り込めないという難点があるが、イスラムの歴史は概して、その登場人物の名前だけでウンザリする傾向がある。その点からすれば、この程度の取り上げ方なら読みやすい。興味深いのは、イスラム哲学の思想であり、何ら西洋哲学と変わらないという印象も受けた。ニーチェが「神の死」を主張するまで、あるいは主張したからこそ「神」と、つまり宗教と哲学の関係性はより深いものとなった。意識的な神の自覚と無意識な認定との差異はあれども、神と哲学の接近、それに対する回答への試みはイスラム教にも存在する。現代イスラム論に、ある種宗教としてのイスラム教から距離を持った、「哲学」という領域が確立されれば面白いと思うのだが。それともそういったものは、存在しているのだろうか。イスラムに対する興味がわく著作といえ、まさに『入門』といえる。但し、あまりイスラム論に興味のない人は、『イスラームとは何か』(講談社現代新書)の方が読みやすい。

  • 「本格的入門書」の看板通りの充実した内容であった。
    備忘を兼ねて、気になった部分を簡単にまとめる。

    ①ムハンマド
    ムハンマドは610年に啓示を受け、メッカのクライシュ族が内部対立をする中で没落側から布教を始め、メッカの大商人と対立。布教は困難を極めたが、622年メディナに移住(ヒジュラ)し浸透。630年についにクライシュ族を征服し、メッカを鎮圧。

    ②用語
    ウンマ=共同体、もとは神の使徒(預言者)を中心とした単位集団
    啓典=律法の書(モーセ)、詩編(ダヴィデ)、福音書(イエス)➡ユダヤ教、キリスト教は啓典の民
    最後の預言者=ムハンマド➡ユダヤ教、キリスト教は啓典を正しく伝えていない➡ムハンマドは神が伝えるべきことを全て正しく伝える➡ムハンマド以降に使徒はいらない。ムハンマドのウンマが最上のウンマ➡世界中にイスラム的価値観を広め、最上のウンマに近づける使命がある。

    ③ムハンマド死後(632年)
    正統カリフの時代(632~661年)
    ウマイヤ朝時代(661~750年)
    アッバース朝時代(750~1258年)
    ※シーア十二イマーム派の大ガイバ(イマームのお隠れ)は932年
    ➡ここまでがイスラムの古典時代

    モンゴル帝国時代(1258~)
    ビザンチン帝国時代(~1453年)
    ➡イスラム共同体は衰退し、スーフィズム(神秘主義)で残存。中世イスラム教時代。

    オスマン朝(1299~1922年)➡小アジア
    ムガール朝(1526~1858年)➡インド
    サファヴィー朝(1501~1736年)➡イラン(シーア派)
    ➡スーフィズムの道場などを中心に、個々人の信仰を軸とした私的で緊密な共同体がインド・東南アジアにまで拡大。イスラム教は16世紀に新たなピークを迎えた。

    一方で15世紀~17世紀はヨーロッパが主権国家同士の争いのもと急成長。大航海時代(➡商業革命、資本主義経済の発達)、宗教改革(➡ルネッサンス)
    17世紀~18世紀にかけては、さらに重商主義のもと植民地拡大、18世紀後半には産業革命、市民革命を経て、帝国主義の時代に入り、近代科学技術を背景に後進国を圧倒。

    そうした中で、イスラム社会はスーフィズムを中心に呪術化し、知識を軽視し、社会の停滞を招いていた。
    西洋の衝撃にさらされたイスラム社会は、コーラン・スンナの原点に立ち返る伝統主義で再び覚醒する。ハンバリー学派(12世紀)、改革者イブン・タイミーヤ(14世紀)の基盤のもと、18世紀のワッハーブ派へとつながる。ワッハーブ派は直接的にはエジプト・トルコ軍に鎮圧(1818年)されるものの、18、19世紀における各地のムスリム復古主義的改革運動に火をつけた。
    そうしたなかでムスリムの生き残りのため、内部改革と外的からの防衛を強く説いたのが、アフガーニー(1839~1897)であり、彼の始めた運動はサラフィーヤ運動としてエジプトのアブドゥに受け継がれる。この運動ではシャリーア(イスラム法)の解釈を変更し、のちにイスラム法改革での各地の近代的市民法の法典化につながった。
    インド(イギリス支配下)、トルコ(戦間期のアタチュルク)、エジプト(1952ナセル革命)が近代化で先行。第二次大戦後の1950~60年代にムスリム諸国の大半が政治的独立を達成。

    一方で、近代化(西洋化)をイスラム教の危機ととらえる集団が生まれる。先鞭は1920年代にエジプトで生まれたムスリム同胞団。
    その後、ナセルが1967の第三次中東戦争で完敗したエジプトや、印パ戦争で破れアイユーブ・カーン政権が弱体化したイランで、原理主義が台頭。イランは1979年にホメイニ師がイスラム革命に成功し政権樹立。
    イスラム原理主義派と、軍事独裁政権化での近代化が対立する構図が続き、政権の弱体化とともに21世紀に入り「アラブの春」に至っている。

    ④イスラム法(シャリーア)
    4つの法源
    1.コーラン
    2.スンナ(ムハンマドが示した範例・モデル)
    ➡預言者が語るハディースにより伝承
    3.イジュマー(後世の共同体の法判断)
    4.キヤース(類推)

  • 基本を理解するには良書で、一口にイスラムとされるなか、その多様性がよくわかる。
    ただイスラム特有の用語が難しく、すぐなにがなにだかわからなくなる。

  • 「…アシュアリー派は、偶有は他の偶有の基体とはなりえない(なりうるのは実体のみ)との原則から、明解に偶有の持続性を否定する。したがって、偶有を欠きえない原子(物体)も持続しない。物体が持続しているようにみえるのは、実は神による瞬間ごとの再創造の結果ということになる。一瞬前と後の物体の連続性はないのである。あるようにみえるのは、スクリーンに映し出されたフィルムの一齣一齣の連続的運動の結果がそうみえるのと同じである。」

  • ジンはイスラム以前にアラビアで信じられていた恐ろしい悪霊、デーモンであるが、コーランでは中立化され、人間と同様にさまざまな党派があり、それらに預言者が遣わされ、ある者は進行ししたりしてりう。それらは燃える火から作られたと言われる。

  • 非常にわかりやすかった。
    多神教が根底にある私でも、一神教を信仰している人がどんな風なのか、少しは理解できた気がする。
    理性の前に神の啓示がある、というのも驚きだった。
    キリスト教って言うと苦しいイメージがあったんだけど、それって「原罪」に依るところが大きいのかなあ。
    イスラームだとアダムと神は和解済み、よって後の子孫はその責を負わなくてよくなってるんですね。
    現世をよりよく、充実して過ごす。
    年代が経つにつれ、元々の教えが伝播するのは難しいかもしれません。
    本当は平和な宗教なのにね。

  • 仕事で中東湾岸諸国担当になって、はじめは経済レポートばかり読んでいたんですが…上司に担当国の権力者の宗派をきかれて言葉につまり、根本的な基礎知識の土台がつくれてないなぁと思い。手にとりました。
    若干古いし、読み飛ばした箇所もかなりありますが、宗派についての説明箇所はわかりやすくて良かった。特段本として面白くはないのが残念。

    オフの時間でこういう文化宗教面の知識を深めていきたいところ。本業が疎かにならんようにだけ気をつけよう…

  • 最初半分くらい読んで後は飛ばし飛ばしで。ムハンマドの生涯やイスラムの基本信条など簡単にだが理解できた。

  • ~派が多すぎ!とても覚えきれないです。

  • 内容はとても詳しくて良かったんですが、なにしろ世界史苦手なんで・・。本気でイスラム教について知るには良い入門書です。

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