過労自殺 (岩波新書 新赤版 553)

著者 :
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  • Amazon.co.jp ・本 (210ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004305538

作品紹介・あらすじ

不況下の過重労働とリストラのなか、仕事が原因で死を選ぶ勤労者が増えている。責任感が強く職務に忠実な彼らを極限まで追いつめる組織の論理と社会の構図、過労死として労災補償を求める遺族に厳しい労働行政の現実などを、事例に即して分析し、防止策と善後策を示す。

感想・レビュー・書評

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  • 長らくブラック企業と呼ばれる所で働いていた自分に少しは関係があるかなと思って読んでみた。
    98年出版らしいけど、今と状況はあまり変わらないと思う。過労死の実例を読んでいて、自分に起こったことを思い返すと恐ろしくなる。
    私の勤めていた会社では年間の残業が700時間前後あって、残業代は出なかった。給料さえも遅延している状態だった。
    辞めるという意思を削ぐ為なのか度々「残された人の負担が増える」とか「辞めるなら未払いの給料は払わない」と言われ続けて、何年も我慢していた。
    酷い時は1日17時間労働という時もあって「死んだら楽になるのかな」とチラッと考えることもあった。
    会社の拘束時間が増えると外の世界と触れる機会が減るから正常な判断ができなくなるのも分かる。
    でも、私がそうならずにすんだのはやっぱり家族や悩みを聞いてくれた友人のおかげ。
    自律神経が乱れて体調を崩してしまったけど「こんなことで死にたくない」と思い切って退職した。
    心を鬼にして義理を欠く。
    非常なことのように思われるかもしれないけど、自分の命を守るためにはこれしかない。

  • 10年以上前の本(1998年)だけど、現代においても変わらない示唆があると思う。

    仕事で疲弊し、「申し訳ない」という思いを持って自ら命を絶つ人たち。
    世代を問わず、一定数いる。

    背景には、バブル後の経済悪化で効率化が求められ、過剰な労働を強いられるようになったことがある。
    また、突然解雇を言い渡されて生きる希望を見失った人もいる。

    この本が出た当時は過労自殺の認定は厳しく、労働者側はやりにくかったようだけど、現代は少しは変わっているだろうか。でも、変わっていない部分もきっとあると思う。


    こういう、社会情勢が関わる事象をみると、「昔はこういうことがなかったのか」と気になってならない。
    昔が良くて今がだめ、と言い切ることはできないと思う。
    どこか生かせる部分を探せたらいいのに、「今がだめ」とかそういう一元的な見方では解決しないと思う。

    まだまだ、今後も続く問題だろう。わかりやすくまとめられていた。

  • 自分の望んだ仕事。やりたいはずだった仕事。それなのになぜか楽しくない。目標をを持って、目的の為に努力して、自分の夢を叶えて。。。そう思っていたのは違いない。

    夢や目標を持って企業に入る。企業もそれを聞いて社員を雇う。自分の夢や理想のためなら努力だって惜しまない。そうして夢を抱いて入社した若者。その熱意と真剣さ。否定はしたくないけど、肯定もしたくはない。その熱と真剣さゆえに体調を壊してしまう。回復するのならいい。ただ、多くはそのまま悩みを抱えて会社を去ってしまう。

    過労自殺と言う言葉。管理職だけの問題でなく、若者にまで普及する。管理職は責任に耐え切れず、ドロップアウトする。そして、若者はできないままに仕事を抱えドロップアウトする。誰にも相談できずに仕事を抱え込む。できないと思われることが怖い。できなければ居場所なんてない。そうして問題を抱え込み鬱になる。

    過労死と過労自殺は違う。過労死であれば過酷な労働によって、肉体的に限界がきて起こる。ただ、自殺は違う。悩んで考えて、それでもまた悩んで、考えて、それでも答えが出なくて鬱になって、果てに自殺をしてしまう。悩んだ時間や考える時間が多くなって、結果的に残業が増える。その果ての自殺となる。

    過労死であれば労働時間と労働条件を照らし合わせれば、それが過労死であることは容易に分かる。労災認定もおりやすい。だけど自殺は違う。本人の責任にされてしまう。そして闇に葬られる。結果的に労災認定が降りない。激務とストレスの果ての自殺。まぎれもない過労死。しかし、企業はその責任を放置する。

    クリエイティブな仕事に憧れる。それはそれで良い事に変わりはない。しかし、それ故に責任が降りかかる。納期が降りかかる。いくら裁量労働とは言えど、目標や納期を決めるのは会社であって自分ではない。それができなければ不必要であると会社に言われ、次が無くなってしまう。そうして怯える。その恐怖によって人に相談することができない。できないと思われるのが怖い。相談できない社会はこうして作られる。

    クビになるのが怖い。会社にいられなくなるのが怖い。不必要とされるのが怖い。そうしてより身動きが取れなくなる。誰にも相談できない。それで悩みを抱え込む。

    所詮、労働者なんて企業の奴隷にしか過ぎない。必要とされていると思っても、それほどは必要なんてされていない。人が辞めたら次の人が来るし、たとえその仕事がわからなかったとしても最低限の知識を詰め込み、やってもらおうとする。そして、その前向きな努力によって目標を達成してもらうことを望む。企業とはそう言うものだ。

  • 民間だけでなく、公務員にも過労自殺が多いんだよね。

    そのことを知っている人ってどれだけいるんだろう??

    過労のために精神を病んでしまったりしたら、ほんとに人生が変わってしまう。

    ほんとに悲惨だ。

    改めてそう考えました。

  • [ 内容 ]
    不況下の過重労働とリストラのなか、仕事が原因で死を選ぶ勤労者が増えている。
    責任感が強く職務に忠実な彼らを極限まで追いつめる組織の論理と社会の構図、過労死として労災補償を求める遺族に厳しい労働行政の現実などを、事例に即して分析し、防止策と善後策を示す。

    [ 目次 ]
    第1章 事例から
    第2章 特徴・原因・背景
    第3章 労災補償をめぐって
    第4章 過労自殺をなくすために

    [ POP ]


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    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • 社会学の、視点から分析をしているため、理解しやすい内容にはっているが、実務からは若干離れているように感じる。

    ただ、事例が多く掲載されているため、意識をより敏感にするためにはいい刺激になる本かもしれない。

  • 高齢者自殺が多い日本で、次に多くなっている仕事における問題による自殺。
    どのような経緯で労働者が自殺にいたってしまうのか、またその自殺における労災認定や現在の日本の労働環境などについて書かれています。

    自殺についてそれなりに知識がある場合は、特に目新しい情報などはないです。
    また本書の目的とは違うとは思いますが、精神的にストレスの多い仕事に従事している人が周りにいて、心配な人にとっては、過労自殺の事例は参考になると思います。

  • 自宅図書館で借りました。
    過労自殺の実態や労災保険制度、行政の対応がコンパクトにまとまっている本ですが、認定基準改正前の本なので若干古さを感じます。
    また、内容もテクニカルなところまで突っ込んでいなく、深くないので実務では使えないかもしれません。

  • 大学の課題図書として読んだ。
    非常に暗い気持ちになるが、知らなければならない現実が書かれている。

  • 図書館で借りた。
    過労自殺の実例、年齢などの特徴・原因、
    労災の認定まで、過労自殺を防ぐ方法、が取り上げられている。
    実例での過労自殺者の年齢が若い理由が、
    遺族の判断にあり、その判断は社会的な思い込みに
    大きな影響を受けていることにあるようで、
    数字に上がってこない中高年はどうなっているのか心配になる。
    労災補償がいくつかに分かれていることを知り、勉強になった。
    労災補償には、労災保険制度による補償と企業による補償があること。
    企業による補償は、就業規則や労使協定により支払われるものと
    損害賠償として支払われるものがあること。
    労災があった企業へ対する是正の結果は、どのように
    測られるのかが気になった。

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著者プロフィール

弁護士。過労死弁護団全国連絡会議代表幹事。厚生労働省過労死等防止対策推進協議会委員

「2022年 『過労死・ハラスメントのない社会を』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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