太宰治 (岩波新書 新赤版 560)

著者 :
  • 岩波書店
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感想 : 15
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  • Amazon.co.jp ・本 (215ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004305606

作品紹介・あらすじ

波乱に富んだ人生を送った太宰治は没後五十年を迎える。多くの、特に若い読者を引きつけ続けた作品群は、いま私たちに何を問いかけるのか。『女生徒』『斜陽』等の多様な「語り」の魅力、『お伽草紙』『人間失格』などに響く人間賛歌を、誠実な「読み」から導き、確かな構成力と洒脱な精神を併せ持った作家・太宰の姿を、時代を追って描く。

感想・レビュー・書評

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  • 6月19日は、太宰治を偲ぶ桜桃忌。
    人の欲望、恥、優しさ、弱さ、無様さや照れなど太宰治の生き様そのままを、独特の文体と屈折したユーモアを散りばめ彼独自の小説へと昇華されています。太宰ファンなら、作者名を伏せても文章を読めば、彼だとわかる位、文章に香る太宰臭は鮮明です。
    例えば、こんな文章。「旦那さま。ちがふ。恋人。ちがひます。お友達。いやだ。お金。まさか。亡霊。おお、いやだ。」(女生徒)
    また、妻の津島美知子が「駆け込み訴え」の冒頭を「(太宰が)炬燵に当たって、盃を含みながら全文、蚕が糸を吐くように口述し、淀みもなく、言い直しもしなかった。」というエピソードもすごい。
    本書は、そんな魅力的な太宰治の小説をすべて網羅した優れた文芸評論となっています。パロディやネーミングセンスにも秀でている特徴も、彼が時代を先取りした作家だった証かもしれません。

  • 時系列に沿った作品論が読みたかったので、ややボリュームに不足はあるが纏まりのある一冊だった。

    以前、『富嶽百景』を扱ったときに幾つかの作品に触れたのだが、私には好き嫌いが強い(笑)
    個人的には『人間失格』は白けてしまうし、でも『女生徒』のような女性視点の作品は本当に引き込まれるところがある。

    太宰治の破滅的イメージを、彼自身が楽しませようと作り上げているのなら、彼が自身や他者を文章に描き込む力というのは凄いものなのだと思う。

  • 『#太宰治』

    ほぼ日書評 Day756

    評者高校時代の恩師(現国担当)の著書。ちょうど25年前の刊行で、先生(とあえて呼ばせていただくが)とは15歳違いなので、今の自分より10歳若い時に書かれたということになる。正直、先生が高校当時にこんな授業をしてくれていたら、もう少し現国にも身が入ったかもと思うくらい、興味深く読ませていただいた。さて、前置きはそれくらいにして…

    評者自身、太宰治は、文庫化された中でもメジャーなものを、中高からせいぜい大学生時代に読んだことがある(当時はハマるまで行かぬものの、それなりに影響は受けたように記憶する)程度だが、まったく予備知識のない短編・掌編についても、ある程度物語のあらすじも把握しつつ、著者の太宰評が理解できるという構成はありがたい(新書の分量に収めるには、かなりの推敲があったものと思料)。

    特に興味を惹かれた箇所をいくつか紹介。

    奥野健男氏が「潜在的二人称」と称した"太宰の〈語りかけ〉スタイル"は、多くの読者に「たった1人、自分にだけ向けて書かれた作品」と感じさせる効果があり、それ故に熱狂的にハマる読者が生まれる。
    同時に、著者はそこにもっと大きな広がりを見る。真に"その人"だけに向けて特化して書かれた、いわばラブレターのようなものではなく、多くの読者に開かれた普遍性が備わっているというのだ。
    どちらが正しいという類のものではなく、ピンポイントとゼネラリティの両面を、あたかもメビウスの輪のように自在に行き来できることこそが、むしろ太宰の魅力の源なのだろうと感じせられる。

    この〈語りかけ〉は後年に至っては、女口のものに移っていく。『斜陽』の上原の妻は『ヴィヨンの妻』の「私」と一体化し、ひたむきに生きる妻としての「私」の視点から描かれることで、人でなしの無頼漢で「詩人」たる夫は、罰せられるべき存在ではなく、「より大きなおかしみを持った、ある意味、愛すべき存在」に転ずるのだという。
    よく知られるように、これらの作品は当時付き合いのあった女性の日記等を下敷きにしているわけだが、日記の行間に込められた、太宰自身に対する女性達の愛憎半ばした悲喜交々の思いを、そのレベルまで昇華させるのは、並の精神力ではできぬこと…であるが故に、ああした、最期を迎えざるをえなかったのだろうか。

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  • 若い頃に太宰を読んだ中高年向けの「再入門」書。「作品と作家は別である」との観点から、従来のイメージとは異なる太宰像が提示されており興味深い内容。
    本書が上梓された98年時点で、「最近は太宰ファンが減りつつある」との指摘があるが、25年後の現在ではどうなっているのだろうかという気にもさせられる。

  • 現代国語の時間で
    太宰治を勉強する時に使うテキスト
    「分かりやすい」という感じ
    山星書店にて購入

  • 少し古い本だが大丈夫。
    太宰治を概観するのには良い本。
    ここから各論に入っていく感じの一冊。

  • 内容は悪くないのだが、ですます調の文体がかなり気色悪くて読み進めるのが苦痛。

  • 時代も歴史も無関係に太宰を論じれば、このようなショウモナイ本が出来上がる。太宰の消毒殺菌お得パック。

  • 配置場所:摂枚新書
    請求記号:910.268||D
    資料ID:59800371

  • 太宰治という作家と、その作品について時系列に解説している本です。
    著者も言っているとおり、「太宰再入門」という言葉がちょうど良い。
    太宰作品を読んだことのない人には理解できない本だと思うので、
    何作か読んだ人が、作家と作品についてより理解を深めるために読む、というのが適していると思います。
    もしくは、作品は読んでいるけれど、太宰という人間のことは知らない人にも。
    これを読んで私は、太宰作品の魅力は「文章のリズム」と「言葉選びのセンス」、それから「読者の隣人であること」だと思いました。
    上からではなく、いつも隣で話しかけられているような、肩を並べるようなそんな心やすさを感じます。
    本質を誰にでも受け取りやすい文章で書けるということは、それだけですばらしいと思うのです。
    この本の中で抜粋されている箇所も、心を掴むような文章が多いですが、『津軽』の「大人とは、裏切られた青年の姿である。」が、大人になった自分にすごく共感できました。

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