- Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
- / ISBN・EAN: 9784004305651
感想・レビュー・書評
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この本が書かれたのは1998年と、少々時代的に古いため、現在の屠場の実態とは若干離れているようです。ただ、この本が描きたかったのは屠場の有り様というよりも、屠場を取り巻く様々な差別・偏見についてなのではないかと思われ、その点については当時も現在も特に変わりがないように思います。
4か所の屠場を取り上げ、それぞれの屠場の成り立ちとそこで働く人々との座談会がまとめられており、屠場作業員の生の声を聞く(読む)事ができて、とても興味深かいものがありました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
佐川光晴さんの『牛を屠る』を読んでから興味をもって読んだ。
仕事における大切なことが、多く満ちている本に感じた。
なぜ差別されてきたのか?という点について、
古来からの食肉禁制や殺生禁断の歴史や、
牛馬を食すと農耕に支障をきたすと考えられるようになっていったという指摘は興味深かった。
東南アジアの稲作儀礼のなかにも、稲の生育中における人や動物の死は、稲作に悪影響をおよぼすとの信仰があったそう。(P.9)
内臓業者が解体を(持ち出しで)手伝わなければならなかった状況についても、わかりやすく説明されている。
いわく、鮮度が大事な内臓については、時間的に短く仕事をして切り上げることが必要。(P.21)
ただこうしたことが、労務上・差別上、問題を多く生んできたということもおそらく事実。
例えば肉食が解禁されたといっても、それだけでは従事者への蔑視は解消されなかったということ。(P.96)
そんな中でも、仕事に誇りとチームワーク(他者への敬意)をもって、技術の向上を心掛けてきたというのは、やはり『牛を屠る』に満ちていた誇りにも通じるものがあると思った。「つねにうまくなろう、うまくなろう」と思っていたとのことや、チームの仲間を支える(他の人が作業しやすくなるように仕事をしようというマインドは、素直にかっこいいし、うんうん仕事って元来そういうことだよねという風に改めて思った。(P.53)
そして、単にベルトコンベアーで自動化されるというのでなく、互いに声をかけあったり笑顔をみせあったりしているほうが、生産性が高いというのも、そうだよなと思うのだ。(P.114)
ロボット化・自動化にむかない生産作業だ、という仕事師たちのプライドこそが、おいしい肉を生産しているという指摘も、まっとうだし素敵。(P.180)
そう、熟練された職人技こそが大量生産をささえているのだ。(P.228)
さらに差別をおさえ、誇りを高めるためには、仕事をテレビなどでもちゃんと紹介してくれたら、という指摘も本質的だ。どんな仕事にも通じるであろうが。(P.198) -
「職人技」「熟練」ということばがあるが、まさにそれ。
それが体現されている職場であることがわかった。
これを読むと、肉食はもとより、皮革製品しかり、ほんと、「命をいただいている」ということを実感する。 -
「まるで屠場のようだ」
このように、見たこともない場面を比喩にすることの浅はかさ。
なぜ差別表現に当たるのかを考えさせてくれる良書。
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【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/705329 -
105円購入2012-07-06
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2018年6月10日に紹介されました!
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20170206読了。横浜食肉市場の前を通ることが多く、中がどうなっているか気になって購入。本が書かれた1998年から今は違っているのか。労組の看板は今も道路に面して設置されているが
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団結して、闘った時があった。
でも今はもうない。