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Amazon.co.jp ・本 (238ページ) / ISBN・EAN: 9784004305651

感想・レビュー・書評

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  • この本が書かれたのは1998年と、少々時代的に古いため、現在の屠場の実態とは若干離れているようです。ただ、この本が描きたかったのは屠場の有り様というよりも、屠場を取り巻く様々な差別・偏見についてなのではないかと思われ、その点については当時も現在も特に変わりがないように思います。

    4か所の屠場を取り上げ、それぞれの屠場の成り立ちとそこで働く人々との座談会がまとめられており、屠場作業員の生の声を聞く(読む)事ができて、とても興味深かいものがありました。

  • 「まるで屠場のようだ」
    このように、見たこともない場面を比喩にすることの浅はかさ。
    なぜ差別表現に当たるのかを考えさせてくれる良書。

  • 佐川光晴さんの『牛を屠る』を読んでから興味をもって読んだ。
    仕事における大切なことが、多く満ちている本に感じた。

    なぜ差別されてきたのか?という点について、
    古来からの食肉禁制や殺生禁断の歴史や、
    牛馬を食すと農耕に支障をきたすと考えられるようになっていったという指摘は興味深かった。
    東南アジアの稲作儀礼のなかにも、稲の生育中における人や動物の死は、稲作に悪影響をおよぼすとの信仰があったそう。(P.9)

    内臓業者が解体を(持ち出しで)手伝わなければならなかった状況についても、わかりやすく説明されている。
    いわく、鮮度が大事な内臓については、時間的に短く仕事をして切り上げることが必要。(P.21)

    ただこうしたことが、労務上・差別上、問題を多く生んできたということもおそらく事実。

    例えば肉食が解禁されたといっても、それだけでは従事者への蔑視は解消されなかったということ。(P.96)

    そんな中でも、仕事に誇りとチームワーク(他者への敬意)をもって、技術の向上を心掛けてきたというのは、やはり『牛を屠る』に満ちていた誇りにも通じるものがあると思った。「つねにうまくなろう、うまくなろう」と思っていたとのことや、チームの仲間を支える(他の人が作業しやすくなるように仕事をしようというマインドは、素直にかっこいいし、うんうん仕事って元来そういうことだよねという風に改めて思った。(P.53)

    そして、単にベルトコンベアーで自動化されるというのでなく、互いに声をかけあったり笑顔をみせあったりしているほうが、生産性が高いというのも、そうだよなと思うのだ。(P.114)
    ロボット化・自動化にむかない生産作業だ、という仕事師たちのプライドこそが、おいしい肉を生産しているという指摘も、まっとうだし素敵。(P.180)
    そう、熟練された職人技こそが大量生産をささえているのだ。(P.228)

    さらに差別をおさえ、誇りを高めるためには、仕事をテレビなどでもちゃんと紹介してくれたら、という指摘も本質的だ。どんな仕事にも通じるであろうが。(P.198)

  • 「職人技」「熟練」ということばがあるが、まさにそれ。
    それが体現されている職場であることがわかった。
    これを読むと、肉食はもとより、皮革製品しかり、ほんと、「命をいただいている」ということを実感する。

  • 屠場について体系的に説明してくれる本ではなかった。あくまでドキュメントで、当時の従業員へのインタビューの記録に終始している内容。僕が求めている内容ではなかったけど、リアルな話が書いてあるので資料的な価値はあると思う。

  • 職人たちの技術、食肉の歴史、畏怖が差別へと変化していく歴史、労働争議と解放同盟の関係など、屠場の現状と歴史をいろんな角度から記述。

    全体的に読みやすかった。自分では、差別している感覚がない言動でも、実際に働いている人たちからすると差別と感じることがたくさんあるんだろうなと思った。職人たちとの対話の部分も面白かった。

    歴史のことを調べるだけでなく、実際にフィールドワークしているのがとても良いと思った。

    最近、被差別部落の問題について興味を持っていたので購入。ネットでは見ることや聞くことができない差別や屠場の現状について知ることができる一冊。とはいえ、この本も今となっては20年以上前の本なので現在はもっと違うのかも。逆差別とか簡単に言う人にはぜひ読んで欲しい。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/705329

  • 「屠場」って変換候補に出てこないのね…。
    食肉加工を行う屠場の歴史とそこで働く人たちの声。穢多非人よりさらに昔の身分の話から紐解いていかないといけないくらいに根深い問題がある、あったということがわかった。
    この本が書かれてから20年経って、どうなったんだろう。10年前くらいに図書館で子ども向けの豚の屠畜の写真絵本を見た記憶はある。

  • 105円購入2012-07-06

  • 2018年6月10日に紹介されました!

  • 20170206読了。横浜食肉市場の前を通ることが多く、中がどうなっているか気になって購入。本が書かれた1998年から今は違っているのか。労組の看板は今も道路に面して設置されているが

  • 団結して、闘った時があった。
    でも今はもうない。

  • いま現在ってどうなってんねやろなー

  • 気づかなかったが、これだけ牛や豚の肉が流通しているのに、それを作り出す過程や場所はおそろしく神経質なまでに隔離されている。

  • 普段口にする牛肉や豚肉は見事な職人芸から生まれていた。知られざる世界のルポルタージュ。

    [配架場所]2F展示 [請求記号]080/I-3 [資料番号]2005110380

  • タブーだとか差別だとかわけわからん。みんな毎日のように肉食べてるじゃん。皮の靴履いてバッグかかえてるじゃん。偏見は捨てて事実をみつめようよ。屠場で働く人達の鍛えられた肉体と熟練、崇高な精神と誇りを私はリスペクトする。何も知ろうともしないくせにグチャグチャ言うヤツは肉喰うな。

  • 本の至る所から牛豚の肉汁が滴り落ちてくるようなかんじ。情景描写がとてもリアル。
    但し、こういう世界に慣れてない私のような読者には、分かりづらい内容も多々あり。

  • 屠場、というと、部落差別の問題、同和問題と当然、深い関係がある。そうしたことも含めた労働争議のドキュメント、というつもりで、居住まいを正してページを開いたら、暗く重い印象がとても少ない、仕事に対する誇りを持った職人たちのインタビューが大半を占める内容で、とても新鮮だった。
    実際にどんな仕事ぶりだったのか、現在ではどうなのか、どんな技術やチームワークが必要なのか・・・目の当りにしたことはないが、図や写真も交えつつ丁寧に解説してある。そこで働く人たちの技術の腕は、何年も修行してようやく培われる、努力の賜。機械ではできない、人間ならではの力加減が必要な現場で働く人々は、チームワークを大切にする誇り高い職人さんたちだったのだ、ということがよく分かるドキュメントである。
    現代の関東では、少なくとも私の周辺では、屠場への差別を見聞きすることはほとんどないが、それは差別がないからなのか、隠されているからなのか・・・?
    労働者の意見のひとつに、「『こんな仕事ですよ』と紹介するドキュメント番組でもあれば理解が得られるのに」というものがあったが本当にその通り。理不尽だった歴史も含めて、特別視しないことから始められる時代でありたい。

    • mandolinbumさん
      この本は読んでませんが、映画ではドイツの「いのちの食べ方」>http://www.espace-sarou.co.jp/inochi/ 日本...
      この本は読んでませんが、映画ではドイツの「いのちの食べ方」>http://www.espace-sarou.co.jp/inochi/ 日本の「にくのひと」>http://www.amnesty.or.jp/aff/about/archive_2009/niku.html を見ました。前者は屠場の話だけじゃないけど、DVDで見られるよ。さっちゃんは重たいテーマの本をきちんと読んでいますね。
      2013/01/30
    • 辻井貴子さん
      mandolinbumさん いつも諸所にコメントありがとうございます!「いのちの食べ方」、探してみます。世界各国、似たような問題ばかり。人間...
      mandolinbumさん いつも諸所にコメントありがとうございます!「いのちの食べ方」、探してみます。世界各国、似たような問題ばかり。人間のやることは古今東西同じだな、とつくづく思います。
      2013/02/01
  • 泳ぐマグロと切り身のマグロは結び付けて想像できる。けれど、牛や豚はどうでしょう。屠場というのは、まさに、生きた牛・豚と切り身の牛・豚の間にあるもの。
    その実態は世間から見えにくいものだったために、屠場はあたかも大量殺戮工場というような、恐ろしいものとして語られがちだったようです。まあ、牛や豚には頭も手足もあるし、人間にある程度近いものだということもあるのでしょうが・・・。

    そんな中でこの本は、屠場の労働者、そして屠場と言う解体工場の特殊さを教えてくれます。つまり、工場は流れ作業なのだけど、そこには人の手でしか出来ない仕事があり、そうしたプライドから労働者たちが結束をしていて、一人一人が生き生きと仕事をしているということです。

    穢れと言う文化、部落問題という社会問題、また劣悪な労働環境を覆す労働組合の運動など、屠場を通じていくつかの問題が提示されています。面白い本だと思います。

  • 品川駅の長いトンネルを抜けるとそこは屠場だった。場長は訴える、無くすべき差別と偏見があるのだと…。「屠場では鳴き声以外捨てるところがない」という…そんな現場を支える誇り高き仕事師たちに向けられる差別とは?当事者だからこそ語り得る言葉とその行動に力がこもる。

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著者プロフィール

鎌田慧 (カマタサトシ) (著)
1938年青森県生まれ。新聞、雑誌記者を経て、ルポルタージュ作家に。冤罪、原発、開発、労働、沖縄、教育など、社会問題全般を取材し執筆。それらの運動に深く関わっている。
主な著書に『新装増補版 自動車絶望工場』(講談社文庫)、『狭山事件の真実』(岩波現代文庫)、『反骨 鈴木東民の生涯』(新田次郎賞、講談社文庫)、『屠場』(岩波新書)、『六ヶ所村の記録』(毎日出版文化賞、岩波現代文庫)、『残夢 大逆事件を生き抜いた坂本清馬の生涯』(講談社文庫)など多数。

「2025年 『炭鉱の闇』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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