精神病 (岩波新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004305811

感想・レビュー・書評

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  • 一般の方々向けに主に統合失調症に焦点を当てて書かれた書。

    ・妄想はあくまで患者一人の信念で、誰かと共有されることはない。四つ葉のクローバーが幸福をもたらすという迷信は、多くの人が文化的に共有しているため、妄想とは言わない。
    ・芸術家の創造の過程を精神医学的な知識と結びつける研究を病跡学という。
    ・分裂病の最初の症状が突然の自殺未遂や失踪ということもある。一回だからと言って見過ごしてはいけない。
    ・妄想世界を根絶させることよりも、現実世界と共存させることを願う。
    ・薬物療法の始まりは、フランスで麻酔薬の一種として開発されたものが、麻酔薬としてはそれほど有効性を示さず、たまたま精神病の人に必要があって使ったところ、精神病の症状に思わぬ効果があったのがはじまり。=クロルプロマジン
    ・薬は比較的軽症者でも少量を継続するのがよい。完全にやめられるのはまれ。
    ・終始患者の弁護人である覚悟を持つ。それができるのは医者と、他に何人もいない。
    ・当事者中心の支援。その人なりの生活をそのまま認め、受け入れ、その枠組みを大切にして、継続的に、必要とされる時に必要な支援をしていく。
    ・米国の一卵性の四つ子全員が統合失調症を発症した例。

  • 今回読んだ中のなるほどなあ文↓

    『心の不調には「二つの系列」があるとお考え下さい。一つは「(軽重はあれ)病気」の系列であり、今一つは「パーソナリティの歪み」の系列です。
    (中略)
     病気とは、(中略)本来のその人のとは多少とも異質な状態が出現し、原則として治癒あるいは悪化の方向へ動く。そういう状態です。
    (中略)
     パーソナリティというのは、その人がこの社会に生きていくとき、特別に意図的でなくいつもやっている感じ方、考え方、つき合い方の「全体」をいいます。
    (中略)
     同じ心の不調でも、これは「病気」の場合のようにある時点から変化が生まれるのではありません。(中略)身体でいえば、体質のようなものをご想像いただくのがよいでしょうか。
    (中略)
     右側(※パーソナリティの歪み)は、その人の「人となり」のなかに源泉のある不調です。左側(※神経症・精神病)は、その人にとってはいわば余分なものが病気として付け加わった、そういう不調です。両者は本質を異にします。』

    『この病気(※この本でいうところの分裂病=統合失調症)の人の子供時代の消極性の中身はなんなのでしょうか。
     ここではサリバンという米国の精神科医の説を引用します。
    (中略)
     要するに、他人にたちまじって社会のなかで生きるには最低「自分に対する自信、少しむずかしくいえば、自分が自分を評価する気持ち」がいる、そしてそれは幼児期・児童期・青年前期あたりの他人との交流のなかからしか生れない、というのです。』

  • 精神病ないし統合失調症についてのコンパクトな解説書です。

    同じ岩波新書には、人間学的な精神病理学の立場に立つ木村敏の『心の病理を考える』という本がありますが、本書は哲学的な考察に入り込むのでもなく、また実証的な研究成果を紹介することに終始するのでもなく、バランスの取れた記述になっているように思います。もっとも、個人的には木村の著作がおもしろく読めたのに対して、本書の叙述にはちょっともの足りなさを感じてしまったのも事実です。

  • 林公一さんのサイトで推薦されていて読んだ。よくまとまっていてよい本。こういう本のわりに語り口が丁寧でやわらかい。
    未読の方へ。統合失調症(かつての分裂病)の本です。

  • わかりやすく丁寧に、かつ正確に記述されている。また、筆者の統合失調症患者に対する思いも伝わってくる。少々古いけど未だに素晴らしい一冊。

  • 統合失調症について、わかりやすく解説しています。
    現在では若干認識の変わっていることもあるらしいとのことです。
    非常に中立的な印象を受ける内容で、そういう人が身近にいる人もいない人にもオススメです。

  • 「精神病」というおどろおどろしい題名ですが、
    内容は、筆者の暖かなまなざしにあふれていて、
    非常にいい本です。

    分裂病を、データや筆者の患者の例にもとづいて
    説明しているのですが、
    現在は軽症化の傾向にあることが繰り返し述べられています。

    それと、僕が一番おもしろいと思ったのは、
    以下の3つの点で、分裂病は、
    とても社会的であると述べていることです。

    まず、分裂病に独特の心理も、現代社会にあっては、
    周囲を驚かせるような激烈な形をとらなくなっているという、
    軽症化の理由について言及した部分。

    次に、この病気は、
    「知性や意識の低下ではなく社会性・常識性の破綻」であるとして、
    その原因に、人間の「社会性」の発達と何らかの関係性があると
    ほのめかせている点。

    最後に、治療には、、
    社会復帰こそが治療の目的であること、
    そのためには、社会福祉の充実が不可欠であるこということ。

    現代社会の論点をとらえとようとするなら、
    分裂病の心理を考えることで、
    貴重な「贈り物」があるかもしれません。

    社会学を学ぶ上でも、重要なことを示唆してくれた1冊です。

  • 15年前に読んだ本をもう一度読み直してみたけれど、いまだに古くなっていない内容だった。唯一、病名が統合失調症という呼び方に変わったということだけで、ほかの知見は現在も生きている。良書だと思う。

  •  がん末期の患者さんが泣いてしまって、「泣きたいのはこっちです!」と言いにきた後輩にあぜんとしたことがあったけれど、統合失調症の方こそ「不安なのはこっちです!」ということなんだろうなあと思わせてくれる本でした。
     こういう愛ある説明本が好きです♥

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