日本語練習帳 (岩波新書)

著者 : 大野晋
  • 岩波書店 (1999年1月20日発売)
3.45
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  • 149レビュー
  • Amazon.co.jp ・本 (215ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004305965

日本語練習帳 (岩波新書)の感想・レビュー・書評

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  • 皆さんは「思う」と「考える」の違いを説明できるだろうか。「通る」と「通じる」、「嬉しい」と「喜ばしい」の意味を正しく理解して使い分けているだろうか。「大丈夫」の使い方を間違えてはいないだろうか。
    私達は日本語で本や雑誌を読み、文章を書いている。コミュニケーションをとるのもほとんどの場合は日本語だ。それでも日本語を完璧に使いこなしていると自信を持って言える人は恐らくいないと思う。日常生活に支障はなくても、例えば参考図書として色々な本を読むときは、込み入った文章をもっと容易に理解できるようになりたいと感じるだろうし、レポートを書くときは、適切な表現を使ってもっと良い文章を書けるようになりたいと思うだろう。そんな学生や社会人のために書かれたのがこの『日本語練習帳』だ。練習帳なので、問題があり解答と解説が示され、自分の解答に点数も付けられる。繰り返し解いているうちに、読み書きをする上での考え方や技が身に着き、日本語の特質もわかってくるように工夫されている。
    著者は『岩波古語辞典』などの編纂も手掛けた国語学者で、日本語について多くの本を著している。その中の1冊である本書は1999年に出版され、190万部を超える大ベストセラーとなり日本語ブームのきっかけをつくったものだ
    単語の形と意味に敏感になる事、文法を理解すること、文章の骨格を見極めて要旨をつかむこと、敬語や謙譲語の成り立ちを知って適切に使う事などが日本語の基礎となる。
    日本語文法で大切なことのひとつが「ハ」と「ガ」についての理解だ。「私は大野です」と「私が大野です」、「花は咲いていた」と「花が咲いていた」など、意味の違いをうまく説明できなくてモヤモヤしていた「ハ」と「ガ」について、著者はその文法的な役割を解説し意味の違いを明確に論じている。まさに目から鱗が落ちる思いだ。
    文章の骨格をつかむ練習のために、1400字で書かれた新聞の社説を、論旨を損なうことなく400字に縮約し、更に200字に要約して見せた解答例は見事で、著者の文章に対する鋭い感覚と巧みな技には敬服せざるを得ない。本書は日本語の豊かさとそれを深く学ぶことの楽しさを教えてくれる。
    骨董の目利きになるためには、まず一流品を見続けなければならないのと同様に、日本語の優れた使い手になりたいと思うのなら、言葉に対してセンスが鋭い優れた小説家、劇作家、詩人、歌人、学者の作品や文章を数多く読んで文脈ごと言葉を覚えるのが良いというのが著者のアドヴァイスだ。多くの優れた文章に触れれば語彙も豊富になり、日本語を使いこなす力も上がるだろう。言葉に対して鋭い感覚を持ち、深く文章を理解し、良い文章を書き、正しい言葉づかいで話すという能力は、これから大学で学び社会に出ていく皆さんにとって大きな強みとなるはずだ。

  •  何の番組かは忘れたが、テレビのバラエティ番組でかつてのベストセラーとして紹介されていた。ずいぶん前に出版されていたのに知らずにいた。最近の自分の趣味に合ったので読んでみることにした。ただ読ませるだけでなく、タイトル通り練習問題を多用し解説しているので、最後までとても興味深く読み進めることができた。

     また学生のトレーニングとして読書感想文ではなく、既存の文章の縮約訓練を推奨している。著者が言うように読書感想文にあまり訓練効果が無いなら、これまで世の国語学者たちは何をしていたのかと言われても仕方がないだろう。これは早急に結論を見いだし、教育現場に反映させるべきではないのか。

     中でも面白いと思ったのは敬語の使い方だ。一般に敬語については、それだけでひとまとめの本になっているようだが、このように国語の解説の一部として取り上げでいるのはあまりなさそうだ。その中で太宰の「斜陽」に使われている敬語を批判している。確かに「斜陽」の敬語にはずいぶん違和感を持った。太田静子の日記を丸写ししたからそんな表現になったらしいが、そもそも太宰は津軽弁ばかりしゃべっていだろうから、正しい敬語や標準語など解らなかったのではないだろうか。

     志賀直哉が戦後の国語改革にあたり、日本語を廃してフランス語なり先進外国語を採用すべきと主張していたとは驚いた。そんなことにならずに良かった。いかに愚かなことか隣国を見ればわかる。漢字を廃してハングルのみにした半島の人々は、自分たちの古典さえ読めなくなってしまったという。わが国の国語も危うくローマ字や英語などにされるところを回避して本当に良かったと思う。

  • 岩波新書のベストセラーにしてロングセラー。できれば学生時代に読みたかった。文法がどうこうという話だけでなく、その社会的・歴史的背景にまで考察が及んでいて、とても興味深く読めた。少し時間をおいて再読しようと思う。

  • 国語学者・大野晋(1919-2008)による「日本語の練習帳」。日本語というもっとも慣れ親しんだ言語を通じて、「ことば」というものと向き合う機会を与えてくれる一冊。日本語を学ぶ外国人はもちろん、外国語を学ぶ日本人にも得るところがある。

    目次:まえがき/Ⅰ 単語に敏感になろう/Ⅱ 文法なんか嫌い――役に立つか/Ⅲ 二つの心得/Ⅳ 文章の骨格/Ⅴ 敬語の基本/配点表/あとがき

    215㌻。1999年、岩波書店、定価700円(2008年第48刷、税別)

  • 本当にこういう本のレビューは書きにくい。でも、わかりやすい文章は理系・文系とわず必要なので、そういったところに意識を向けるにはとてもいい本だと思う。状況によってすべて解く必要はないかもしれないが、練習問題が多いところもとても役立った。

  • 問題を解きながら読みすすめていく形式なのですが、やってみるとあやふやなところが多く、かなりの時間を費やしました。語彙を増やすことにばかり目を向けていましたが、似たような単語のどこが違い、どこか同じかに敏感になることが大事だということがよくわかりました。ことばが明瞭になるということは、思考が明瞭になるということですね。敬語についても大変わかり易い。

  • 日本語の細かい表現、誤解を生む表現の例が載ってます。
    また、演習問題もあります。

  • 自分の考えを文章で伝えるためには以下の3つの手続きが必要である。1.的確な単語を選び出す。2.意味が明確に伝わるようにそれらの単語を配置して文(センテンス)を作る。3.主張とそのサポートを組みとして段落を作り、段落を連ねることで論理展開を行い文章とする。これらは案外と難しい技術で、実際に、ネット上にはひどい文章が溢れている(勿論、このレビューも)。日本語を使いこなすには、上の3つの技術を訓練する必要がある。

    この本では、上に挙げた3つの技術について以下の注意点を示している。

    1.的確な単語を選び出す
      ◯類義語同士の微妙な違いに敏感になる
     単語の用例を収集→使い方の類型により区分→それぞれの意味の抽出→最も根源的な意味とそこからの脈絡と展開をたどる。
      ◯ハとガの用法を知る
        ハの働き:
         ①問題(topic)を設定して下にその答えがくると予約する(ハの後にトピックに関連した新情報がきますよ!という合図。問答の形式)
         ②対比(猫ハ嫌いです。このハは猫以外の何かは嫌いでないことを暗示する。つまり、他の何かと対比して述べた文である)
         ③限度
          a.お寿司を2つ、6時に持ってきてください。
          b.お寿司を2つ、6時には持ってきてください。(6時までにという限度を表す)
         ④再問題化(正直、自分には対比との区別がつかなかった)
        ガの働き:
         ①名詞と名詞をくっつけて、ひとかたまりの名詞相当の句をつくる(ハにはない用法)
           例:私が乗る飛行機
         ②現象文をつくる
           ガの前にある情報も新しく気づいた対象・発見であり、新知識の対象(ここもハとの違い)。
      ◯正しい敬語を使う
      ◯縮約や要約を練習する
      ◯「〜ノダ・〜ノデアル」を使いすぎない。
        これらは「こんな事情はご存じないでしょうが、これは大事なことですよ」という意味で、使い過ぎると書き手の上から目線を強めるし、本当に強調したい大事な部分がぼやけてしまう。
      ◯「...ガ、〜」を使わない。
       この「ガ」の意味には逆接の他に判断の留保(本当の判断は...ではなく〜にあるよ)もある。それゆえ、使い過ぎると主張がだらだらと続き文意が曖昧になる。インターネットでよくみかける「...が。」で終わらせる文章もこれと同じ。正直、何を言いたいの?って思ってしまいイライラさせられる。
       
    2.意味が明確に伝わるように単語を配置してセンテンスを作る
     ※「意味が明確に伝わるように」と書いたのは、順番によっては他の意味が生じたり、分かりにくくなったりするからである。
      ◯センテンスを短くする
      ◯「〜は」と述語の間隔を広げすぎない
       例えば、「◯◯は△△です」というセンテンスがあれば、
          ◯◯=△△という構図がわかりやすい文章にする。
          日本語では単語の配置が比較的自由なのでこういう工夫が必要なのだろう。
      ◯縮約や要約を練習する

    3.主張とそのサポートを組みとして段落を作り、段落を連ねることで論理展開を行い文章とする
    ※この本では、論証については扱っていない
      ◯「文章の骨格」を見抜く
      ◯縮約や要約を練習する
        
    この本の力点あるいは特色は、1の「的確な単語を選び出す」ことにあると思う。著者が岩波古語辞典を製作していて、単語同士の微妙な差異を研究してきたことがその理由のひとつだろう。そのような差異を心得て、自分の思いを単語に込めるのは実に気持ちのいいことだろうと思う。

    ちなみに、2に力点をおいたのが「日本語の作文技術 (朝日文庫)」であると理解している。これも非常にためになる著作だと思う。

    3については色々あるが、これぞ定番という本を私は知らない。おすすめとしては、「新版 論理トレーニング」、「細野真宏の数学嫌いでも「数学的思考力」が飛躍的に身に付く本!」、「論文の教室―レポートから卒論まで 」か。

  • これから作家を目指す若い方にお勧め。
    読解力強化月間中の自分には、少々ピントはずれでしたが、決して悪い内容ではないと思います。


    ↓以下、作者の意図とは無関係に勉強になった内容

    ・思う(1つのイメージをもつ事)、考える(複数を選択する事)
    ・最良(質が良いこと)、最善(行いが良い事)
    ・関係代名詞を直訳したような「ハ」は多用すると読みづらい。
    ・保留の為の「ガ、」が続く文は切り離して読むとよい。
    ・文章力の訓練に社説の「縮約」が効果的。(要約ではない)

    ・敬語はもともと「上下」でなく「内外」で区別されていた。
    ・謙譲語の使い方の間違いは意外と多い。
      例)○○さんは、おられますか(誤り)
        先生が申されました(誤り)

    ・志賀直哉は、フランス語を日本の母国語にしたかった。
    ・吉田健一の文章は政治家の演説。
    ・太宰治の『斜陽』の敬語には間違いがあって、志賀直哉に批判された。

  • これまで日本語というのは上手く書こうとか意識しないで書いていた。
    ずっと学校での国語の成績は良かったので、自分の文章は上手いものだと思っていた。
    日頃、余り文章を書く機会がないまま歳を重ねて、
    最近ブログやブックレビューを書こうとしたところ、
    あまりの書けなさに愕然とした。
    それで今更ながらこういった本を読んでいる。

    I. 単語に敏感になろう

    「思う」と「考える」、「嬉しい」と「喜ばしい」など、
    一見同義語に見える単語の細やかなニュアンスの違いに注目する。

    II. 文法なんか嫌いー役に立つか

    「は」と「が」の使い分けと様々な使い方を学ぶ。

    III. 二つの心得

    ・「のである」「のだ」を消せ。
    〜書き手の思い入れが強すぎる文章になる。
    効果的に、強調すべきところだけに使うのがよい。
    ・「が、」を使うな。
    〜逆説の「が、」はいいが、留保・抑制の「が、」を多用すると
    センテンスが長くなりがちで、不明瞭な文章になる。

    IV. 文章の骨格

    新聞の社説を400字に縮約し、さらにそれを200字に要約する。
    漱石の「こころ」前半15節の要点を、節ごとに30字以内で書く。
    さらにそれを7項目20字以内にまとめ、さらに4項目にまとめる。

    などのトレーニングを通じて、文章を書く前にメモを書き出し、
    組み立てていく方法を学ぶ。

    一つのセンテンスに色々詰め込まず、簡明な一センテンスごとに分けて
    それを積み重ねていく。

    V. 敬語の基本

    相手との関係性を意識した敬語、
    話の相手と話の中身とが違う場合の敬語など、練習問題が多数。


    また、語彙を増やすための読書や 
    手元に国語辞典や類語辞典を置いて気になったらすぐ調ることなど
    日本語を上達させる為のコツも紹介されている。

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